まつたけ秘帖

徒然なるままmy daily & cinema,TV drama,カープ日記

惨劇の降霊会!

2023-10-15 | イギリス、アイルランド映画
 「名探偵ポアロ ベネチアの亡霊」
 終戦直後のヴェネツィア。探偵を辞め隠棲生活を送っていたエルキュール・ポアロは、旧友の作家アリアドニに誘われオペラ歌手ロウィーナの屋敷で催される降霊会に参加する。超常現象を信じないポアロは、ロウィーナの亡娘の霊を呼び出すという霊媒師レイノルズを詐欺師と見なすが…
 ケネス・ブラナ監督・主演の名探偵ポアロシリーズの第3弾。前作の「ナイル殺人事件」から間を置かずしての公開。精力的なブラナ監督です。原作はアガサ・クリスティの「ハロウィーン・パーティー」。クリスティ女史の推理小説は中学生の時にハマって読破したはずなのですが、ハロウィーン・パーティーは読んだはずだけど全然記憶にないこの映画を観てビツクリしました。こんなオカルトホラーな内容だったっけ?!と。ミステリじゃないじゃん!?いわくありげな古い洋館で、この世に恨みや未練を残す亡霊が人間に襲いかかるといった、よくあるパターンのオカルト映画になってたのが、ちょっと期待外れというか残念でもありました。まさにイギリス!なミステリ映画やドラマが好きで、どんなホラーやオカルト映画を観ても失笑するだけの恐怖不感症な私なので…

 ケネス・ブラナ監督の斬新でスタイリッシュな演出やセンスは、「ベルファスト」とかでは素晴らしい!と感嘆したけど、ポアロシリーズでは何だろう?違う違う、そうじゃないby 鈴木雅之、それじゃない感が否めなくて。ブラナ氏はもともとシェイクスピア俳優として名をはせた人だから、ミステリ映画もシェイクスピア風の悲劇的な人間ドラマにしたいのでしょうね。それはそれでユニークだとは思うのですが、アガサ・クリスティのミステリとはちょっと合ってないのではとも。殺人の話なのに優雅で洒脱な楽しさがあるところが、私にとってはアガサ作品の魅力なんです。あと、意外な真犯人と殺人トリックも。この映画、それらがかなり疎かで雑な扱いになってたような。とにかく面妖な雰囲気と恐怖の演出、舞台劇のような容疑者たちの相克に重点が置かれていて、ミステリの部分は二の次三の次っぽかったです。

 ポアロのキャラと容貌が、原作や有名映画・ドラマとかなりかけ離れているところも、このシリーズの特色です。ここの部分が受け入れられない人って多いのではないでしょうか。私もシリーズ第1弾の「オリエント急行殺人事件」を観た時は、かなり戸惑いました。ポアロの人柄や過去を深掘りしすぎてるところも、それ必要?と首を傾げたし。でも今はもう、一般的なイメージのポワロとは別物、ブラナ氏が創造した新型ポアロ、として魅力も感じています。生真面目で内省的なブラナ氏のポアロはイギリス人っぽくて、本来の高慢で気どったオネエおじさんみたいなベルギー人ポアロより好きかも。

 その他のキャストは、豪華ではないけど通好みの顔ぶれ。霊媒師レイノルズ役は、今年「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」でアカデミー主演女優賞を受賞したばかりのミシェル・ヨー。すごい高速でグルグル回る椅子に座ったヨー姐さんのイタコ演技、あれは笑いを狙ってたのでしょうか。無惨な串刺し姿も何か滑稽で、ほとんどイロモノ扱いでした。医者の父子役は、「ベルファスト」から連投出演のジェイミー・ドーナンとジュード・ヒル。同じ父子役でも、ジェイミーは神経衰弱なパパ、ジュードはパパを支え庇う健気で賢い息子、というベルファストとはまったく違う二人の役と演技でした。ポアロの用心棒役はリッカルド・スカマルチョ。最近は英語圏の作品でよくお見掛けしますね。
 ゴンドラや古い建物、街の様子など、水の都ヴェネツィアの風景も趣深かったです。美しいけど、湿気とか水害とか衛生とか考えると、わしヴェネツィアにはよう住まんわ。古めかしくも壮麗な事故物件である、殺人の舞台となる屋敷にも。ハロウィンの亡霊よりも、ハロウィンの梨泰院のほうがはるかに怖いです。それはそうと。どうでもいいけど日本表記、ポアロなのポワロなの?

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