まつたけ秘帖

徒然なるままmy daily & cinema,TV drama,カープ日記

それが罪というのなら

2025-02-25 | 中国・台湾・香港映画
 台湾映画祭⑥
 「親愛なる君へ」
 ピアノ教師のジエンイーは、死んだ同性パートナーの老母シウユーと幼い息子ヨウユーと同居し、献身的に彼らの世話をしていた。病を患っていたシウユーが急死、財産を当てにしていたシウユーの次男は、ジエンイーが遺産相続人のヨウユーと養子縁組をしていたことを知ると、ジエンイーが母を殺したと警察に訴える。捜査によりジエンイーに不利な証拠が明るみとなり、ジエンイーは逮捕されてしまうが…

 ゲイの青年が死んだ恋人の家族に尽くす…という設定は、ベン・ウィショー主演の佳作「追憶と、踊りながら」と似てますが。こんなに胸が締め付けられる映画を観たのは久しぶりかも。感動したとか涙腺が緩んだとかではなく、いろいろ考えさせられて苦しくなる、重い気分になる、そんな映画でした。秀作なんだけど、こういうシビアな内容って苦手です。BLを期待して観たのですが、そんな甘い映画ではありませんでした。この世って、ほんと生きづらい…ジエンイーを見ていてため息が出ました。

 自分のことだけ考えて生きていればいい私のような孤独な人間よりも、自分よりも大切な愛する者がいる人のほうが、試練や苦難が多くて人生は優しくないようです。愛のための悲しみや苦しみ、闘いがあるからこそ人生は豊かになるともいえるけど、私はジエンイーのような人生は送りたくないです。あれが深く強く愛し愛される代償なら、私は愛を望みません。独りで寂しく穏やかに生きるほうがいいです

 ジエンイーの亡き恋人とその家族への愛が、とにかく悲痛。ここまで誰かに無償の愛を捧げることができるなんて、尊いけど怖いわ。亡き恋人の残した家族とはいえ、何の義理も義務もない赤の他人に、なぜここまで献身的に、自分を犠牲にしてまで尽くすのか。ただ人が善いだけではできない、優しさや愛情だけではない、何か重い十字架を背負ってるかのような、罪を償っている囚人のようなジエンイーが不可解でしたが、終盤になって判明する悲しすぎる事実で、すべてはジエンイーの贖罪と自罰だと理解できました。人を愛しすぎると不幸になる…

 台湾はアジアで初めて同性婚が合法となった、LGBT先進国。でも、現実にはまだまだ大きな壁や深い溝があるようです。ゲイカップルが子どもと幸せに暮らせる社会じゃないからこそ、あんな悲劇が起きてしまったわけだし。ゲイの生きづらさもだけど、老人介護や安楽死、子どもの人権など、深刻な社会問題も現実的で暗澹となってしまいました。喪失感と後悔を分かち合い、感謝と愛情を抱きながらも、ふとした瞬間に噴出する憎悪…老母のジエンイーへの複雑な想いも、悲しく痛ましかったです。でもいちばん可哀想だったのは、やっぱ幼いヨウユーです。身勝手な大人たち、非情な社会に振り回される、少年の冷ややかな寡黙さがいたいけで。決してハッピーエンドではないけど、ヨウユーの静かな強さと優しさのおかげで、未来に希望が感じられる余韻の結末でした。それにしても。あの老母の次男ムカつくわ~。老母も甥もほったらかしだったくせに、遺産が手に入らないと知ると速攻でジエンイーを陥れる卑劣さ。でも、あんな人のほうが世の中フツーにいるんですよね。ジエンイーのほうが特異です。


 ジエンイー役は、「台北に舞う雪」で記者役だったモー・ズーイー。地味イケメン。優しそうで悲しそうな顔と雰囲気が、薄幸な男の役に合ってました。静かな抑圧演技が印象的。すごい聖人だけど、独り暗い黒い懊悩に煩悶するジエンイーは、難しい役だと思います。日本のアラフォー俳優にも挑戦してほしい役。恋人とのシーンでの、不安と隣り合わせな幸せの表情も印象的でした。クスリの売人とラブホテルの浴室で、激しい全裸セックスシーンがあり。モーさん、お尻も出して頑張ってました。号泣しながらの性交が痛ましかったです。あの若い売人、ジエンイーのことを心配して助けようとしてくれる数少ない味方だったのに、結果的にはジエンイーを窮地に立たせる存在になってしまったのが皮肉で悲運。


 かなりキツい内容だけど、少な目の台詞、静かで淡々とした展開と空気感で、生々しくない味わいになっています。ジエンイーと亡き恋人との間に何があったか、シウユーの急死の謎など、現在と過去を交錯させながらドラマが紡がれ、真相が紐解かれる構成の脚本がミステリータッチで秀逸でした。ロケ地である港町・基隆の憂いある叙情、冬の山麓の厳しくも美しい風景も心に残ります。

 ↑ 莫子儀、いい役者!1981年生まれの現在44歳。若く見えますね~。斎藤工とか星野源とかと同い年。チャン・チェン共演の新作「餘燼」が面白そう!現代で起きた殺人事件が、戦後台湾の黒歴史である白色テロと結びつくミステリードラマで、莫子儀は事件のカギを握る謎の男役みたいです。配信でもいいので早く観たい



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終着駅の恋

2025-02-20 | 中国・台湾・香港映画
 台湾映画祭⑤
 「台北に舞う雪」
 声が出なくなった新人歌手のメイは、いたたまれなくなり台北から出奔、平渓線の終点である菁桐にたどり着く。そこで彼女は、町民のために働く心優しい青年モウと出会うが…
 予定している台湾旅行、マストの九份に加えて、ランタン上げで有名な十分にも行ってみようと計画してます。その際に利用する鉄道、ローカル線の平渓線の終着駅である菁桐を舞台にした映画を観ました。台湾の田舎町って、日本の昭和っぽくてノスタルジックですね。家屋や商店街、あぜ道、古びた電車が通る線路、小さな駅etc.日本にもまだあるのかな?と懐かしくも不思議な、優しく時間が止まったかのような原風景を見ているようで、ちょっとセンチメンタルな気分になりました。願い事を書いて吊るす竹筒、ロープづたいに渡す弁当や郵便物、清流に架かる赤い橋など情緒があって、菁桐にも来てね!的なプロモーション映画みたいでもありました。

 風景や雰囲気はよかったのだけど、肝心の内容がちょっと…優しい人情とか、淡い恋とか、題材も描き方もありきたりで薄い。悪人もいない悪事も起きない、善人だけの話とかつまんない。いい人のいい話なんて、私の汚れた心には響かないんですよね~。みんな善人なのに、あまり共感できなかったし。メイとか、すごい迷惑な女。「傲慢と善良」の女もですが、失踪とか人騒がせすぎるでしょ。モウも、優しさの裏に隠した深く悲しい翳りや孤独がほしかった。ただのアホみたいなお人よしにしか見えなかったし。脚本がちょっと乙女すぎるというか、幼稚?もっと大人の心に沁みたり刺さたったりする設定や人物描写が欲しかったかも。

 スターのヒロインが一般人男性と出会って恋に落ちるという設定は、「ノッティングヒルの恋人」と同じですが。メイは新人でそんなに有名でもない小物だったので、住む世界が違うから生じるズレや葛藤など、話がユニークにドラマティックに膨らまなかったのも残念なポイント。同じ若い女性歌手でも、テイラー・スウィフトみたいな超大物が田舎に現れたら、大変なことになって面白くなりそうですが。
 モウ役のチェン・ボーリンが、イケメン!チェン坊、当時26歳。日本でも活動していた頃?ただもうカッコカワいいです!

 可愛いけど男らしい、チェン坊のスウィートな精悍さが我很喜歡!1日に2、3回は髭を剃ってそうな口周りなど、男性ホルモンとフェロモンが濃厚なところも素敵。チェン坊の厚くて柔らかそうな唇が、何かいつもエロい。スラ~っとした長身で、スタイルも抜群!ルックスがもう非一般人。あんなイケメン、田舎にいたら平和に暮らせないと思う!どこにいても、どんな役でもスペシャル感は隠せないチェン坊です。アイドルレベルの役と演技が残念。

 メイ役の女優さん、チャン・ツイイーにそっくり。劇中でもそう指摘されてました。音楽プロデューサー役は、チェン坊と「再見、在也不見」でも共演してたトニー・ヤン。懐かしのBL映画「僕の恋、彼の秘密」の可愛い男の子も、すっかり大人の男に。業界人っぽい髪型が何か笑えた。メイを追う記者役のモー・ズーイーもイケメン。嵐のN宮を優しくスマートにした感じの風貌?タイトルは台北とありますが、物語のほとんどは菁桐で展開します。温暖な台北では雪はほとんど降らないとか。台北の雪、それは叶わぬ夢のようなもの、愛のようなものなのでしょうか。でも何年か前に、台北に大雪が降ってニュースになったことを覚えています。夢や愛の奇跡もありえる、と思えたりしました。

 ↑ 去年台湾で大ヒットしたチェン坊主演のホラーコメディ「鬼才の道」が、来月の大阪アジアン映画祭で上映!観たい!

 ↑ 可愛かったチェン坊も、もう41歳。今でもカッコカワイい
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ここではないどこか遠くで

2025-02-16 | 中国・台湾・香港映画
 台湾映画祭④
 「帯我去遠方」
 台湾の南部の港町。両親が離婚し、父親とともに祖母の家で暮らす少女阿佳は、従兄の阿賢を慕い、それはいつしか淡い恋心となっていたが、ある日阿賢の秘密を知ってしまい…
 地味で小粒ながら、愛らしくホロ苦い青春の1ページ映画でした。女の子の成長ストーリーなんて、私がもっとも興味がないジャンルですがこの映画に食いついたのは、BL要素があったから(^^♪従兄の阿賢がゲイで、行きずりのイケメンや年上の男との恋にときめいたり傷ついたりなエピソードが、なかなか切なかったです。

 それにしても。あまり文化的とは言えない田舎町でゲイでいるのは、何という孤独と苦痛だろうと、阿賢を見ていて思いました。カミングアウトなんて論外、理解者に出会える希望もない。阿賢みたいに見た目も頭もよいゲイならなおさら、絶望と閉塞感で窒息しそうな日々。でも、あんな田舎で恋に落ちる男たちと出会えるなんて、奇跡みたいな幸運でもあったような。でも。どれも幸福に進展せず、初恋もガチ恋も悲恋に終わってしまうという、腐が大好きなBLのさだめに阿賢も従ってしまってます。

 感受性が強く繊細すぎる阿賢、彼にはもうちょっと強くなってほしかったわ。絶望も失望も糧にして、あいつらだけが男じゃない!素敵な大人、いい男になってやる!と奮い立ってほしかった。まだ若いんだし、夢にも希望にもあふれている未来が待ってる。田舎を出て台北とか憧れてたニューヨークとかに行けば、きっと本当の愛を見つけることもできたはず。しっかりしろ!と阿賢の肩を叩きたくなったけど、あらら、彼が選んだのは悲しすぎる逃避。何で!?と呆れてしまったけど、あの思いつめ方、激情は、純真な若者にしかない美しい危うさ、脆さ。私のような冷血で俗にまみれた老人などが、どうして理解できようか。

 弱くはかない男に比べて。女はやっぱ強くて冷徹。幼いながらも、阿佳はまさに女でした。ゲイを愛してしまった女の悲しみもまた、痛ましく切ない。恋心を隠して、感情を抑えて阿賢を冷静に見守っている阿佳、少女なのに大人だな~と感嘆。阿賢と違い、コワレたりしません。もやもやや苛立ちを、誰にも気づかれずひとりで抱えている阿佳もまた、すごく孤独。孤独な者同士が労わり合い寄り添い合うような、阿賢と阿佳の親密さが微笑ましくも哀しかったです。阿佳が、見た目もキャラも女子女子しておらず、ぶっきら棒でクールな少女だったのが好感。彼女が色盲障害、という設定が辛いハンディキャップではなく、ちょっとファンタジックなシーンで表現されていたのが可愛かったです。

 阿賢役は、これが映画デビューとなったリン・ボーホン。当時21歳。わ、若い、ていうか少年!雰囲気も顔つき、体つきもまだ蒼々しいです。現在の彼は肉体美も魅力の大人の俳優になってますが、この頃はまだ痛々しいまでにほっそりしててショタっぽい。顔は岸優太というよりマエケン(前田健太)っぽいかな。阿賢は美少年な俳優が演じたほうが腐受けするだろうけど、私は女よりもキレイな男の子って苦手なので、マエケン似のボーホンでOK!

 阿賢の初体験相手となる旅人がイケメン!風来坊なバックパッカーも、イケメンだと絵になりますね~。日本人という設定で日本語も口にしてましたが、演じたのは台湾の俳優さんだとか。夜の校舎で寝泊まりする旅人に抱かれにいく阿賢、ドキドキ♡キュンキュンな展開でしたが、肝心のラブシーンは全然なし見事に省かれてました。それにしてもあの旅人、さっさとそっけなく旅立っていって、ヤリ逃げですか?!甘いロマンスより刹那の性欲処理、それがゲイの現実?
 台湾の南部の田舎町が、まるで60、70年代の風景。携帯が出てこなかったら、現代の話と気づかなかったかも。素朴な生活の情景は、昭和の日本のようでノスタルジック。夏が暑そう!青く張り詰めた快晴の空が美しかったです。
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ロックダウン・ホスピタル!

2025-02-14 | 中国・台湾・香港映画
 台湾映画祭③
 「疫起 エピデミック」
 2003年の台北。外科医の夏正は勤務を終え娘の誕生会へと急ぐ途中、急患の報を受け病院に戻る。その頃、未知の伝染病が院内で広がり始めていた…
 コロナパニックも今は昔。すっかり収束した感じの現在ですが、当時も私はあまり深刻に受け止めることができていませんでした。私の周囲に死者や重症者がおらず、私も含め罹ってもすぐに回復できたからでしょう。コロナへの恐怖よりも、医療に従事する人たちへの感謝と尊敬に心打たれる毎日でした。この台湾映画では、コロナ前に流行したSARS(重症急性呼吸器症候群)による2003年の実際の院内感染と病院封鎖が、ドキュメンタリータッチで描かれています。コロナの時のクルーズ船もそうでしたが、得体の知れない疫病が跋扈する場所に閉じ込められ、いつ自分も感染して発症、ついには死に至るかもしれないという極限状態、想像しただけでゾっとします。

 SARSって、名前はよく聞いたけど、日本では流行しなかったんでしたっけ?台湾では大変なことになってたんですね。台湾ではSARSの教訓を活かして、コロナはかなり蔓延を阻止できたとか。それにしても。医療関係者や入院患者もさることながら、たまたまあの病院にいた人たちまで巻き込まれて、問答無用に閉じ込められるとか、運が悪すぎる。理不尽!でも誰のせいでもない、誰にも文句を言えない苦境に落とされてしまった人々に同情。外で彼らの安否を気遣う家族のストレスも相当なもの。子どもも老人も妊婦も、容赦なく閉じ込める冷酷非情さがホラーでした。外の世界の人のために、あなたたちは死になさい、と言わんばかりな生き地獄。

 SARSを封じ込めるための対策、措置も非情でしたが、恐怖と絶望が渦巻く中で露わになってしまう人間の本性もまた、ああ無情!でした。みんな結局、自分がいちばん大切。自分が助かるためなら、他人の苦しみに見て見ぬふりができる、他人を犠牲にすることもできる。でも、それが人間の本当の姿なんですよね。あんな状況ではもう、何が正しくて何が間違ってるのかわからなくなる、どうでもよくなる。感染を恐れて医療行為を拒否したり、感染の疑いがある同僚を排斥する医師や看護師たちのことを、非情だなとは思っても卑劣とか醜いと蔑むことはできません。だからこそ、自分を犠牲にして医療に尽力する人たちが崇高に思えました。もはや人間を越えた神に近い存在。保身と献身で分断されたあの病院、無事にロックダウンが解除された後、SARSの後遺症以上に深刻な人間関係のしこりが残りそう。不運にも病院に閉じ込められてしまった一般の人たちは、みんな比較的冷静だったのが救いでもあり、痛ましくもありました。

 主人公の夏正役は、ドラマ「罪夢者」では男の色気ダダ漏れだったワン・ポーチエ。今回は粗野なチンピラ役から一転、エリートドクター役。顔は上川隆也+くりーむしちゅーの上田?決してイケメンでも美男子でもないのだけど、いい男に見えます。熟年に見えるけど、まだ30半ばなんですね。藤ヶ谷くんとかより年下最初は何とかして病院から逃げ出そうとしてたけど、惨状を目の当たりにして医師の本分を呼び起こされる葛藤や変化を、リアルな人間味で演じています。全裸シーンもあった「罪夢者」ほどセクシーではないけど、サービス脱ぎのようなシャワーシーンはありました。


 若い看護師役は、BL映画の佳作「君の心に刻んだ名前」でのフレッシュなイケメンぶりが忘れがたいツェン・ジンホア。ドラマ「次の犠牲者」では、主人公の青年時代を演じてましたね。今回もイケメン!端正で涼しげで薄幸そうな美男子。白衣が似合う。悲しみが似合う風貌と雰囲気が好き。あの看護師さん、イケメンなだけでなく、優しく真面目で勇敢な人柄で、聖人のような若者だった。でも、すごい不幸で不運。なんでこんな善い子がこんな目に…と、暗澹となってしまったけど、彼みたいな子がいるおかげで世界にも救いがあるんだよなと、暗闇で美しい蝋燭の灯を見ているような思いになりました。ジンホアくんも「君の心に~」ほどには脱いでないけど、サービス脱ぎ的なシャワーシーンあり。

 研修医役は「愛という名の悪夢」で強迫神経症ヒロインを怪演したクロエ・シャン。今回は凛々しく使命感が強いタフなヒロインでした。可愛い顔、今回はチャン・ツイイーにちょっと似て見えた。みんなを励ますタクシーの運転手さんみたいに、逆境の中でも思いやりや助け合いを忘れない人に、私もなりたいです。エピデミックとパンデミックの違い、今さらながら知ることができました。

 
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女難!台北恋愛怪奇譚

2025-02-12 | 中国・台湾・香港映画
 台湾映画祭②
 「愛という名の悪夢」
 古本交換で出会った白佳琪と恋に落ち、彼女の家で同棲を始める青年。だが白佳琪の強すぎるこだわりと束縛は、やがて耐えがたい重荷に。そんな中、青年は再会した高校の同級生である林艾璇に安らぎを求め、彼女と密会を重ねるようになる。白佳琪と林艾璇との間で苦悩する青年は、夢の中に現れたウサギの怪人から、ひとつだけ願いをかなえると言われ…
 ラブサスペンス映画かと思いきや、ん?ラブコメ?こだわりの強い彼女に振り回される彼氏の姿とか、彼氏とその友だちのやりとりとか、ライトでスウィートなラブコメ調…だったのが、可愛いレベルだった白佳琪のこだわりと束縛が、だんだん異様なまでに重くキツくなっていき、いつしかサイコパス調に。彼氏がコソコソと他の女と会ってることに気づいて、白佳琪が何かヤバいことをするのでは?と不穏で危険なサスペンス劇場…が、青年の夢の中にウサギの怪人が現れ、青年の願いが現実化した世界に…と、突然ファンタジーな展開に。終盤はオカルトめいてくるし、いろんなジャンルをぶっこんだ忙しい内容に、かなり戸惑ってしまいました。

 それにしても。白佳琪のこだわり、強迫神経症が壮絶。生きづらいな~。あんなに可愛くて、しかも金持ちなのに。私もわりとこだわりが強いほうだけど、さすがに白佳琪ほどではない。こだわりに合わせるよう他者に要求、強制したりはしません。まあ、誰とも深く関わらないから、そうする必要がないだけかもしれないけどとにかく、こだわりが強すぎる人は恋愛が困難ですよね。白佳琪の彼氏みたいな献身的(隷属的?)な男、なかなかいませんよ。まさに愛は忍耐、とばかりに白佳琪に従う青年。涙ぐましいほど頑張ってたけど、さすがにもう限界!な状態になるのは、当然で同情。でも、他の女とこっそり頻繁に会いながら、白佳琪と別れられずズルズルと二股を続けるとか、かなりクズでもあった。どっちともセックスしないのが、返って異様な三角関係でした。

 ウサギの怪人への願いがかなった世界では、白佳琪でも林艾璇でもなく、憧れの美人モデルである黒澤由里が恋人になっていて、理想の恋愛生活にルンルンな青年。めんどくさい女どもはもう要らない!やっぱクズ男、でもよほどの聖人でないかぎり、男は同じことすると思います。その理想の世界も実は…な、ラストのオチが怖くて切なかったです。深すぎる強すぎる愛の一念が起こした怪奇!この映画、「不思議の国のアリス」をモチーフにしているようで、白佳琪と黒澤由里は主人公をそれぞれ奇怪な恋の迷宮へといざなう白いうさぎ、黒いうさぎの役割になっています。謎めいたラストシーンは観客の解釈に委ねられ、考察させるものとなっています。


 青年役(名前がない!)は、最近観たドラマ「此の時、この瞬間に」にも出てた台湾の人気俳優リン・ボーホン。やっぱ彼、岸優太に似てますね。岸くんはイケメンじゃないけど、ボーホンはイケメン。男らしさと愛嬌、大人と少年がいい感じにブレンドされてます。「青春弑恋」と「僕と幽霊が家族になった件」とのギャップで分かるように、コメディの時もシリアスの時もいい演技、いい表情が多くて、すごく器用な役者さんです。こんな彼氏ほしいわ~と思わせるボーホンのスウィートさでした。目力の強さ、鋭さも彼の魅力。肉体美も。ちょこっとだけ脱いでますが、相変わらずいいカラダ♡


 白佳琪役のクロエ・シャンが、すごく可愛くて怖かったです。宮崎あおい+和久井映見、みたいな顔?超可愛いけど、関わらないほうがいいのでは…早く逃げたほうがいいのでは…な、ヤバいメンヘラムード&演技がなかなか強烈。黒澤由里役は、リン・ボーホンと「恋の病 潔癖な僕らのビフォーアフター」でもカップルを演じてたニッキー・シエ。ぜんぜん気づかなかった。男にとって理想的(都合がいい?)なパーフェクト美女だけど、実は怪しい信仰系のオカルト呪術女で、メンヘラ女とはまた違うヤバさ。まさに、げに恐ろしきは女。独特の設定やポップな演出と雰囲気、強迫神経症の主人公、iPhoneで撮ったという映像など、「恋の病」とよく似た感じの作品。同じ監督と聞いて納得!台北の夜市、台北101が見える沿岸、原チャリ(青年の電気?スクーター、あれいいですね。ほしい!)など、台湾!な風景も、台湾に行きたい気持ちを高めてくれました。
 
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