ウィンザー通信

アメリカ東海岸の小さな町で、米国人鍼灸師の夫&空ちゃん海ちゃんと暮らすピアノ弾き&教師の、日々の思いをつづります。

ええ加減奏法

2008年12月17日 | 音楽とわたし
「そんな真っ暗にしたら楽譜見えへんやん!」
「いや、ここでライトはつけたくない!」
「あんたの振る手も見えへんのに、どんなタイミングで始めるねん!」
「生徒達がDecemberって言い終わったらすぐに弾けばええやん

その曲は『The Lights of December』という名の曲で、明日のコンサートの1番最初に歌います。
生徒達がJanuaryから順に月の名前を言っていき、Decemberで前奏を弾き始めるというアイディアを、いきなり本番前日に思いついた指揮者ダリル。
舞台は真っ暗になっていて、暗くなると一気に目が見えにくくなるわたし(酉年の鳥目)には、大げさじゃなく何も見えません。

弾き出しのタイミングが分かっても音符が見え~ん
今夜、とにかくその前奏部分(半ページほど)を暗譜しないと、明日はのっけからえらいことになってしまいます。

ピアノの譜面立ての上部に、お粗末ながらライトがついているのだけれど、わたしの楽譜は横にダア~ッと長いので、端々にはもうほとんど光が届かないのです。

毎年なら、コミカルな寸劇なんかも入ったいろいろありのコンサートなのに、今年は歌、歌、歌。曲数もいつもより増えて20曲近くあります。

練習の時はグループ毎に歌うので、即興で弾かなければならない曲や、ピアノの伴奏パートが全く無くて、歌の音から和音を考えなければならない曲があっても、その場その場でなんとか考えて弾けてきたのだけど、
通しリハをやってみて思い知りました。いかん、頭が回らん

なので、その曲もだいぶ書き込みが増えました。
とにかくコードネームだけでも入れて、その場で瞬間的に思いつかなくても大丈夫なようにしました。
それと、多分読み疲れてしまいそうなタイミングで弾く曲は、面倒でも楽譜にして、それを貼付けました。

日本ではこんなことは滅多に無かったと思います。
けれども、こちらでは日常茶飯事。即興演奏やら適当なコードづけぐらいはできて当たり前みたいです。やっぱジャズの本場だからかなあ……。

ヤマハで講師をしていた時、核講師研修という、数週間仕事を休んで受けた研修がありました。
東京の日吉という所の、ちょっと見、きれいな刑務所っぽいビルの中で、朝早くから晩遅くまで、かなり厳しくし込まれました。
外出は一切禁止。もちろん食事の時間はあったけれど、宿題や練習や楽譜書きがやたらと多くて、はっきり言ってゆっくり食べる時間もありませんでした。
けれどもそこでは、世界的に有名な音楽家の方々を講師に招き、自分だけの力では到底受けられない素晴らしい講義をたくさん受けさせてもらいました。
即興も作曲も、さすがのわたしの目にも涙が溜まったこともあったけれど、かなりいい勉強になったと思います。
あの頃は、ヤマハも元気で、講師にそういう贅沢な教育をガンガン与えてくれた時代でもありました。

ピアノだけ勉強していたらきっと、この『アメリカンええ加減奏法』は身につきにくかったかも。

「だいじょ~ぶだいじょ~ぶ、まうみは誤摩化しクィーンやから」って……旦那よ、それって元気づけてくれてるつもりやんな?
コメント
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