ウィンザー通信

アメリカ東海岸の小さな町で、米国人鍼灸師の夫&空ちゃん海ちゃんと暮らすピアノ弾き&教師の、日々の思いをつづります。

米国ブラックメール事情

2010年11月03日 | 米国○○事情
先月の20日、鍵盤修理専門のマイクが、わたしのピアノの鍵盤を預かったまま一向に音沙汰が無いのに痺れを切らし、彼の携帯に旦那が電話をかけた。
旦那が、と言ったが、彼自身は全くそういうことをしたくなくて、わたしがあまりにしつこく頼むので、嫌々ながらかけてくれたのである。

思い起こせばマサチューセッツ州の彼の元から、鍵盤運送用の特別仕様の箱が送られてきたのが8月のはじめ。
近所に住む調律師アルバート(彼がマイクを強く推薦した)に協力してもらい、鍵盤をピアノ本体から抜き出してその箱に詰め込んだ。
それを旦那とふたりでどっこらしょと車に乗せ、わざわざ宅配会社の本社まで行き、無事向こうに着くよう祈るような気持ちで送ったのが8月の4日だった。

それから始まった待ち地獄。
無事に届くかどうか心配なので、着いたら連絡して欲しいとメールをした。
し~ん……。
着いているはずだと思うが、請求されている見積額の個人チェックを送りたいので、アルバートから聞いた額でいいのかどうか、それを確認したいので連絡してほしいとメールした。
し~ん……。

心配になって旦那に言うと、「今は夏やで。アメリカ人にとってはヴァケーションの季節。もうちょっと気長に待ったら?」
それならそれで、そんなあやふやな時期に、鍵盤を送らせるのがおかしいちゃうん?と思いつつ、これもまた国民性なのかもしれないと我慢した。
夏も終わり、9月になって、なんぼなんでもあんまりや!と思い、電話が無理ならメールでいいから送って!と旦那に強く頼んだ。
そこで初めて、旦那が少しだけ厳しいめの文面のメールを送った。
即返事が送られてきた。
「確かに鍵盤はこちらに着いています。そろそろ修理に入ります」

そろそろって……と絶句したが、とりあえず安心して、それからまた待ちの態勢が続いた。

9月が過ぎた。
2台ピアノの練習を待つ人が痺れを切らし始めた。練習したくなくてウソついてるんちゃう?と疑う人まで出てきた。
コンサートが続いたけれど、残った生徒用のピアノで練習するしかなかった。
上級者のレッスンに活用していたので、それができずに不便した。
その間にも、無駄なこととは思いつつ、わたしはメールを数回送った。
し~ん……。

頭の中に、ポツポツと毒キノコのように生え出した不満が、ベトベトの怒りの膜で包み込まれてしまって、とうとう脅迫めいた文句がブンブンと唸りをあげて、わたしの口から出るのを待つようになった。
気がつくとマイクに呪の言葉をつぶやいている。
この英語は正しいのだろうかと、呪いながらもそんなことを考えている自分に情けなくなりながら。

10月も中旬を過ぎ、いくらなんでも3ヶ月はないだろうと思ったわたしは、もう一度、今度は電話をして直接話をつけてくれ、と旦那に頼んだ。
今回も嫌々ながら、とりあえずかけてくれた。
「どうしてこんなに時間がかかるのか、妻は理解できないでいる。もしかして、修理代の一部でも先に支払わなかったからなのかと心配している」
「いや、修理代はすべてが終わってから連絡するので、その後で送ってくれたらいい。そんなことは全く関係無い。もう修理は始まっていて、多分あと1週間で終わる。終わったら修理にかかった費用を請求します」
なんでもいい、その7日という数字が出ただけでもありがたいと思おう。

このことをブログに書いた。
皆が怒ってくれた。美代子さんなどは、「向こうに踏み台持参で行って、相手の顔をハンドバッグで叩いてやりなさい!」と、具体的な作戦まで語ってくれた。
もし7日経ってもまた連絡が来なかったら、今度こそはそうしてやろうと真剣に思っていた。

28日になって、29日になって、30日になった。
やっぱりし~ん……じゃないか!
わたしの胸の中はもう真っ黒。コールタールのような怒りが渦巻いてどうしようもなくなった。
「あのさ、1週間って言うてたやん。けど、またやっぱり連絡無いやん。どうなってるか聞いてくれへん?」
「いや、もうボクはかけへん。まうみ、あんたは理解できてないと思うけど、マイクはなんちゅうか、職人らしい偏屈っぽいとこがあって、督促の電話とかメールとか、そういうのを嫌がるっていうか、放っといてくれっていう感じの男やと思う。こないだかけた時、言葉にはせんかったけど、あ~も~うるさいなあ、鬱陶しいっていうメーッセージが声にこもってた。そやし、ああいう男にうるそう言うのはかえって良く無いと思う」

プッツン……。

これはわたしの辛抱線がキレた音。
あ、そう。

アホらしなって言葉が消えた。一番のアホはマイク。二番はアルバート。三番は旦那。もうええわ。アホトリオと真剣に付き合うたらこっちまでアホがうつる。
年末までに戻ってきたら良しとしよう。
戻ってきて、仕事が中途半端やったり、別に左程特別に優れてなかったら、訴えてやろうかとも思ったけれど、アホが相手だと、それこそ浪費になるのでやめる。
誠意の無い、人を思い遣れない男どもめ。
けど、やっぱり脅迫してやろうか。向こうからしたらたったの3ヶ月なんかしらんけど、わたしにとってはめっちゃ大事な3ヶ月やってんから!
よし、思いっきり嫌~な文章書いて送り付けてやろう!

今朝、突然、わたしのメールに、旦那から、宅配会社からの連絡メールが転送されてきた。
マイクが鍵盤を、調律師の元に送り返したという通知だった。
本人からの言葉はひとっことも無い。ただの宅配会社のサービスメールだ。
トラッキングをしたら、到着が明日になっていた。
8月4日に見送った鍵盤が、丁度3ヶ月後の11月4日に戻ってくるらしい。
おちょくっとんのかぁ~


コメント (8)
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