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奥圭三『例えばイランという国 8人のイランの人々との出会い』

2009-06-03 15:54:00 | ノンジャンル
 今朝の朝日新聞に「ライ麦畑の『続編』ダメ サリンジャー氏が提訴」をいう記事が載っていました。もうとっくに亡くなっていると思っていたサリンジャー氏、現在90才で健在なのだそうです。ちょっとビックリしました。

 さて、高野秀行さんが推薦する、奥圭三さんの'02年作品「例えばイランという国 8人のイランの人々との出会い」を読みました。イランの紀行文と、イランで知り合った8人の人と交わした話の記録からなる本です。
 自分たちと全く違う価値観を持つイスラムというものに幼い頃から興味を持っていた著者は2001年夏にイランに旅行します。先ず驚くのはそのホスピタリティで、こちらから手を振ると誰もが笑顔で手を振り返し、頼みもしないのに周囲の人が世話を焼いてくれ、客引きはなく、お茶は奢ってくれるわ、バス代はただにしてくれるわ、その様子は他の国には例を見ないものです。そんな中でも向こうから声をかけてくれ、色々と世話してくれたのは、テヘランで文具店を営む40才の男性、やはりテヘランに住み自宅のマンションに招待してくれた32才の投資家の男性、テヘランでタクシー運転手をする、日本への出稼ぎ経験のある30前後の男性、文化都市シーラーズでタクシー運転手をする26才の男性、砂漠の町ヤズドの24才の大学生、古都エスファハーンで闇両替商をし、現体制に不満を持つ45才の男性、同じくエスファハーンに住む熱狂的な愛国者の18才の高校生、そしてトルコとの国境近くの田舎町マークーの53才の小学校教師です。彼らとの会話にからめて、著者はイランの歴史を概観し、'79年のイラン革命、'80年からのイラン・イラク戦争の背景を説明し、また会話した人々が皆イラン・イラク戦争の時に、経済援助を続けてくれ、それに加え自衛のためにしか軍隊を持たない日本に対して敬意と好意を持ち、日本人の人間性も高く評価してくれていることを語ります。そしてあとがきで、この本がアメリカの同時多発テロ以降の対テロ戦争の矛盾に対するアンチテーゼとして書かれたことが明らかにされています。
 この本を読んで、イランの人たちがとても身近に感じられるようになりました。また、憲法9条の大切さも改めて学んだような気がします。紀行文としての面白さも文句無しです。本好きな方にはオススメです。