gooブログはじめました!

写真付きで日記や趣味を書くならgooブログ

北野武『アキレスと亀』

2009-08-01 15:42:00 | ノンジャンル
 WOWOWで、北野武監督・脚本の'08年作品「アキレスと亀」を見ました。
 アキレスが亀に追いつけないというパラドックスを説明するアニメ。銀行の頭取(中尾彬)の息子の真知寿は父がパトロンである画家からベレー帽を贈られ、学校でも特別扱いされていつでも絵を描いていましたが、取引先の倒産で銀行経営が破綻し父が芸者と首吊り自殺をすると、母に田舎の叔父(大杉漣)夫婦に預けられます。やがて母が飛び降り自殺し、その死体の絵を壁に描いたことで施設に送られるころになりますが、乗ったバスは帰宅後によく遊んでいた知的障害の青年・又造を轢き殺します。青年になった真知寿(柳ユーレイ)は新聞配達をしていましたが、彼の絵を見た画商に学校で学び直した方がいいと言われ、印刷工場で働きながら美術学校に通い始めます。休みの日に学校の仲間と前衛的な作品の製作に打ち込みますが、製作中の事故で仲間が死んだことをきっかけに離ればなれになり、真知寿は工場で事務をしていた女性と結婚し子どももうけます。中年になった真知寿(北野武)は妻(樋口可南子)とともに絵の具を画布に叩き付けて作品を作っていますが、女子高生の娘に馬鹿にされます。作品を作るごとに画商に持ち込みますが、その度に注文をつけられ、またその注文通りに作品を作ろうとする二人。やがて娘は愛想を尽かして家を出て行き、妻も真知寿を殺そうとした疑いをかけられて警察に捕まったことをきっかけに真知寿の元を去ります。援交をする娘に借金を申し込む真知寿。やがて娘が急死し、娘の顔に口紅を塗りたくってデスマスクを取ろうとする真知寿に対して、「狂ってる。人間じゃない。」と叫んで妻は逃げ出します。自分の遺影を作り、排気ガスで自殺しようとしますが失敗し、小屋に火をつけてその中で絵を描き、大ヤケドを負いますが助かります。ミイラ男のような姿でさびた空きカンを路上で売っていると、妻が現れ「帰ろう」と声をかけてくれます。「そしてアキレスは亀においついた」という字幕で映画は終わります。
 死が突然挿入されるところは北野映画の面目躍如といったところで、映画の中に現れる数々の北野作品の絵画も素晴らしいものでした。主人公を北野監督自ら演じるところからコメディ色が強くなりますが、娘の死に顔に口紅を塗りたくるところから一気に狂気の色合いが増し、最後にまたハッピーエンドに終わるという、ひと粒で2度も3度もおいしい映画でした。映画好きの方には文句無しにオススメです。