gooブログはじめました!

写真付きで日記や趣味を書くならgooブログ

ポール・オースター『わがタイプライターの物語』

2010-04-10 15:32:00 | ノンジャンル
 ポール・オースターの'02年作品「わがタイプライターの物語」を読みました。サム・メッサーによる絵とのコラボレーション作品です。
 1974年に三年半ぶりにアメリカに帰ってきた私は、荷の中に入れてあったタイプライターが修繕不能の状態で壊れているのを発見します。一文無しだった私は、その夜食事に呼ばれた友人に使っていないタイプライターを安く譲ってもらうことになります。40ドルで買ったそのタイプライターは、その日以来今日まで、私の書いた全ての言葉を清書してくれました。リボンを交換するのと、キーにこびりついたインクを時おりブラシで落とすのを別とすれば、ほとんどメンテナンスも不要で、私は次第に愛着を持つようになり、周囲が次々にワープロやパソコンに移行していく中で、私は過去を共有し、未来も共有するであろうこのタイプライターを使い続けています。そしてある日、知人のサム・メッサーが我が家を訪れ、彼が私のタイプライターを見た時に、彼はタイプライターに恋をし、その絵を描き続け、そのことによって私のタイプライターは「それ」から「彼」へとゆっくりと、しかし確実に変わっていきました。そして「彼」と過ごした日々はもうすぐ私の人生の半分になろうとしています。
 サム・メッサーの原色を使ったボリューム感のある多くの油絵と、オースターの文章からなる、詩集のような趣きの本でした。ちょっと家の本棚にあるとオシャレな感じの本です。あっと言う間に読めてしまうのが難ですが、オースター・ファンのみならず、絵本の好きな方にもオススメです。