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中島らも『ぷるぷる・ぴぃぷる』その2

2011-08-05 05:08:00 | ノンジャンル
 アラン・レネ監督、アラン=ロブ・グリエ脚本の'61年作品『去年マリエンバートで』を洋画★シネフィル・イマジカで再見しました。パイプオルガンの音をバックに、バロック風の館の様子を描写する文章の朗読に合わせ、カメラが館の中を滑らかに移動していく冒頭の10分ほどには魅せられましたが、人物が登場し始め、時間が止まったかのようにそれらが故意に動きを止めるシーンが出てきたりすると、もう見てられなくなり、それから先は飛ばし見してしまいました。『二十四時間の情事』を撮ったレネも、ここに至って策に溺れたというのが正直な感想です。デルフィーヌ・セイリグもこの頃は少しも魅力的でないのが不思議なほどでした。

 さて、昨日の続きです。
 『ぷるぷる・ぴぃぷる』と題されたテレビやラジオ用に書かれたコントは、全部で34本。玉石混交でしたが、大家が家賃を集めに行くと、店子が田舎でもらった嫁が貸家の中に田んぼを作ってしまっていた(96ページ)というシュールなものから、祖父が孫のエミに「二十歳の誕生日をもって『ポン太郎』と改名すべし」という遺言を残すというような、ひたすらくだないものまで、思わず声を出して笑ってしまう面白いものも多くありました。特に2段落ちのものは秀逸で、1つ目のコント(欧米型の経営方針を唱える副社長によって、ジミーとジョニーとチャッピーと改名させられた社員たちがお互いに名前と容姿が釣り合っていないと言い合い、そのうち副社長が自分だけ女性名のカトリーヌとしたことに嫉妬し始め、副社長が改めて3人の名前をベティ、パトリシア、ローズマリーに変えてやると、最後の社員が「実はポチっていうのがよかったのに」と言って、他の社員の笑いを誘う)とか、5つ目のコント(「日本語のルーツを求めて」という教養番組で、教授がヤンキー言葉の「ちゃあっそ」の語源を解き明かし、それがどうも男女の営みに関するものであることがほのめかされた後、番組の最後に、男性司会者の「‥‥ちゃあっそ‥‥」という声がフェイドインしてくる)とかは、本当に素晴らしい出来だと思いました。
 最後に、著者が主催する劇団「リリパット・アーミー」の第2回公演の演目を小説化した『フレームレス・TV』が掲載されていて、これは、母星である地球が400年前に突如として滅亡した原因を探るため、600年後の火星のコロニーから1989年の東京へタイムスリップしてきた中年の艦長と若い女性・イリヤ、そして若い男性のバフが、それぞれテレビ局のディレクター、不正を働いた代官への仇を討たんとする「おちゃめ侍」、謎の妖怪研究家に変装して潜入調査をし、やがて人類滅亡の陰謀を企むNHKの集金人に出会い、最後には3人組の漫才トリオとしてその時代に取り残されるというお話なのですが、それまでの「落語」とか「コント」とかの枠組みがない分だけ、やりたい放題となって収拾がつかなくなっている感があり、あまり成功していないように思いました。

 ということで、いろいろ書いてきましたが、今まで読んだらもさんの本の中では一番面白く、常に手許に置いておきたいと思わせる本でした。まだ読んでいない方には一読することをオススメします。

→Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto/