gooブログはじめました!

写真付きで日記や趣味を書くならgooブログ

西原理恵子『この世でいちばん大事な「カネ」の話』その2

2011-08-28 06:10:00 | ノンジャンル
 昨日の続きです。
 予備校生時代に自分の絵の実力のなさを知ったわたしは、とにかく金を稼げればどんな仕事でもやる覚悟で、出版社を回れるだけ回って仕事を探し、エロ本の出版社で仕事がもらえるようになり、それからは高知県人特有のサービス精神の甲斐もあって、やがて大学3年生の時、目標としていた「絵の仕事だけで月収30万」を得ることができるようになります。その際に原動力となったのは、お金がなくて罵り合う両親、借金のために死んでしまった父親、学校を辞めさせられて何もかもなくして、いられなくなった田舎といった、あの場所にもう戻りたくないという強い思いだったのでした。
 そして大手の出版社のメジャーな週刊漫画雑誌「ヤングサンデー」での『ちくろ幼稚園』で漫画家デビュー、麻雀を題材にしたギャンブル漫画『まあじゃんほうろうき』を書き、ギャンブルの罠に一時はまるも、ギャンブルの師匠・銀玉親方と戦場カメラマンだった元夫の鴨ちゃんのおかげで、その泥沼から生還、高級なレストランや敷居の高い料亭に潜入ルポした『恨ミシュラン』で現場取材の面白さに目覚め、スタッフの支援もあって、どん底の人間が持つ「正しいことは正しい」と言える「気概」を示すことに成功します。
 そして鴨ちゃんとともに、自分が育ってきた場所よりも、もっと貧しい、もっと大変な暮らしがあるアジアの国々を旅して、そこで生きている子供たちのことを漫画に描くようになり、貧困が貧困を生む社会システムに思いを馳せ、バングラデシュで始まっていたグラミン銀行の試みに希望を託します。
 最後に鴨ちゃんとのこと。鴨ちゃんはアル中のお父さんを心から憎んで育った過去を持ち、わたしとの結婚後、自らがアル中となってしまい、わたしのことをひどい言葉で罵るようになります。そしてわたしは離婚を決意。その後、彼は自力で更正施設から生還し、わたしたちの元へ帰ってきて、彼が子供の頃から欲しくても手に入れられなかった「暖かな家族との暮らし」をやっと手に入れることができたのも束の間、半年後にガンで亡くなります。しかし、わたしは彼をちゃんと看取ることができ、子供たちにもお父さんのいい記憶だけを残せたことで、貧しくて、かなしい出来事をたくさん見てきた子供時代のあの場所から、家族の笑顔がある場所、幸せで安心な我が家にやっとたどり着けたと思うのでした。

 西原さんの実人生を一気に読ませていただきました。ラストは読んでいて胸締めつけられる思いでしたが、それ以外にも、高知には「酔ってバカなことしてはじけて、なんぼ!」という「酔狂」という価値観が存在すること、ギャンブルでは「負けてもちゃんと笑っていること」というのが基本中の基本のマナーであること、失敗をして普通だったらしょんぼりして当たり前のところを「笑い」に転化するのは生きていく上で大切な知恵であること、「お金の話をするのは下品なことだ」という教育は、従順な従業員を企業が得るための一助となっているということ、嬉しいことばかりの暮らしを続けていると、嬉しいことの中に不満の種を探すようになり、「これじゃなきゃいやだ」という我が儘な子供ができあがるということ、給料が高い仕事というのは、その仕事をする際に被る「ガマン」料がコミになっている場合が多いということ、「いくらがんばっても、どうにもならない」という状況に追い込まれたら、思い切ってそこから逃げ出し、心と体を休めて、ちゃんとものが考えられるようになってから再出発すればいいということ、人の気持ちと人のカネだけはアテにしてはいけないということ、「カネとストレス」「カネとやりがい」のバランスの間に自分のやりたい仕事を見つけ、それでも見つからないということであれば「人に喜ばれる」仕事を探すと、結構長続きするということ、貧しい国を旅していて、その国の状態を知るには「汁そば一杯いくらですか?」「玉子一個、いくらですか?」「人ひとり殺すと、遺族への賠償金としていくら払えばいいのですか?」という3つの質問が効果的であることなどなど、「勉強」になることがたくさんありました。若い人に特に読んでほしい本だと思います。

→Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto/