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大栗博司『重力とは何か アインシュタインから超弦理論へ、宇宙の謎に迫る』

2013-07-02 08:50:00 | ノンジャンル
 先日の『タイム・トラベラー』の話の続きですが、解説書にテーマ曲を作曲された高井達雄さんへのインタビューも掲載されていて、高井さんが『鉄腕アトム』を始め、テレビ番組や日本に輸入された外国映画の日本版のテーマ曲(例えば、『夜霧のしのび逢い』などは、原曲とは全く違う曲を高井さんが作曲し、クロード・チアリさんに歌ってもらったりしたということです)などを多く作曲されていることを知り、またこのインタビューのインタビュアーが、これまた濱田高志さんであることに驚きました! 濱田さん、すごい仕事を沢山されているのですね。早速ネットで濱田さんの名前を検索しましたが、少なくともウィキペディアの項目にはなっていませんでした。もっとスポットライトが当てられていい方だと思いますが‥‥。

 さて、昨年に出版された本についての朝日新聞の特集記事で紹介されていた、大栗博司『重力とは何か アインシュタインから超弦理論へ、宇宙の謎に迫る』を読みました。“まえがき”にあたる部分から引用すると「本書ではアインシュタインの相対論に始まる過去100年間の研究の発展をたどり、最新の重力理論の描く宇宙像をお伝えする」本なのだそうです。
 著者は、マクスウェルが電気現象と磁気現象を統一して電磁気学を確立し、そのマクスウェル理論とニュートン力学の矛盾を解決するためにアインシュタインの特殊相対論が登場し、さらに、ニュートン理論では説明不足だった重力現象を乗り越えるため、特殊相対論を包括する一般相対論が考えられ、またさらにブラックホールや初期宇宙の特異点といった極限状態を説明するために、特殊相対論と量子力学を融合させて「場の量子論」が登場し、その後、それでもまだ解決されずに残った無限大の問題を解くために超弦理論が生まれ、その結果、その理論が成り立つために必要な“宇宙が10次元であること”も、事実に沿うことが立証されてきたと述べます。しかし、依然として一般相対論と量子力学の融合が完成したとは言えず、ただその統一を果たす上で、超弦理論がきわめて有力であることが確かめられたのみである、とも語られます。さらにホログラフィー原理の立場から見ると、そうして理解された時空間もある種の“幻想”と言うことができ、“幻想”と“現実”の区別が、単に観測者の立場によるものだということが明らかになったと述べられます。また、超弦理論によって宇宙の成り立ちを説明する「究極の統一理論」が構築されたとしても、その基本法則は理論的な必然性を持つのか、それとも偶然に決まったのかという問題は残ると著者は言います。
 上記のようなことが、以下のような章立てで記述されていきます。すなわち、第一章では重力の「七つの不思議」について述べられ、第二章からは、その不思議がどのように解かれてきたか、またそれがどのように宇宙の理解につながってきたかが述べられます。具体的には第二章でアインシュタインの特殊相対論について、第三章では一般相対論について話されます。第四章ではアインシュタインの重力理論が予言したブラックホールとは何であるか、どのように見つかったか、そしてホーキングによる「ビッグバンの証明」について語られ、第五章では相対論と共に20世紀の物理学を支えてきた量子力学が紹介されます。第六章ではいよいよ相対論と量子力学を統合する「超弦理論」の話が始まり、第七章では相対論と量子力学の矛盾を照らし出す「ブラックホールの情報問題」をどのように解決したか、おしまいの第八章では超弦理論の課題と将来の展望について語られます。
 以上の内容以外にも、電磁波は電波と光だけでなく、波長が長い(周波数が低い)方から順に、電波・赤外線・可視光線・紫外線・X線・ガンマ線という名前で区別され、電波の中にも長波、中波、短波、マイクロ波‥‥といった区別があること、ブラックホールでは時間が止まっていること、1919年にドイツ人であるアインシュタインの理論をイギリス人であるアーサー・エディントンが証明したことは、第一次世界大戦で疲れ切っていたヨーロッパの人々に久々の明るい話題として受け入れられたこと、ビッグバン理論に強く抵抗したのは当時のソ連で、マルクス=レーニン主義の弁証法的唯物論(物質は無からは生じない)と矛盾する説だったからなど、忘れていたこと、新たに知ったことが多くありました。読む価値は十分ある本だと思います。

 →Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto