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吉成真由美編『知の逆転』その2

2013-07-07 08:27:00 | ノンジャンル
 ジャック・リヴェット監督・共同脚本の'09年作品『ジェーン・バーキンのサーカス・ストーリー』をWOWOWシネマで見ました。ムチの芸を行っていて芸人が死亡する事件が起き、それがきっかけでサーカスを離れていた女性(ジェーン・バーキン)が、ひょんなことで知り合ったイタリア人男性の仲介で、サーカスに戻るというストーリーの映画でしたが、ストーリー自体は台詞で説明されるだけで、体して魅力的ではなく、ただ画面を見て楽しむといった感じの映画でした。よくリヴェットに関しては、その“演劇性”に言及されますが、それを理解するには格好の映画で、役者が映画の役を“演じている”ことにわざと目がいくような作りになっていて、それはサーカスで演じられる寸劇がラストで、役名と演者の名前が混沌としていくという場面、それからやはりラストで、サーカスのテントから役者が1人ずつ出て来て、カメラ目線でストーリーを語っていくという場面で、如実に現れていました。ということで、人物が出てくるとその人物は2重の意味を負っているという点でただ登場するだけで饒舌な存在と化し、かえって人物が出てこない場面の方が見ていて気楽に楽しめました。今後、リヴェット映画を見る(再見する)際の手引きとなる映画だったと思います。

 さて、昨日の続きです。
 「言語表現力をなくした失語症の患者でも(中略)歌を歌うことはできるのです。(中略)歌っているうちにメロディーだけでなく言葉が思い出されてきて、たとえ音楽の中にはめ込む形でしか現れてこないとしても、これ自体が脳のどこかに言語がしまいこまれていることを示しているわけで、(中略)これを取っ掛かりとして、新たに言語を呼び戻したり、言語野がないほうの脳で言語的な発達を促すことだってできるのです」、「アルツハイマー病患者の場合、知っている音楽でないと効果が出ません。古い音楽や、昔の歌などです。うつろだったり興奮している患者も、音楽に対して静かに聞き耳を立て始め、涙を流したり微笑んだりするのです。音楽は、昔それを聴いていたときの感情や情景の記憶を呼び覚ますからでしょう。これらの感情や情景を、音楽なしに直接呼び覚ますことはできません」、「アルツハイマー病ほど頻繁に起こるわけではありませんが、前頭側頭型認知症(fronottemporal dementia)という病気があります。主に前頭葉と側頭葉に病変が起こるわけですが、側頭葉だけが関与している初期の段階に、突然爆発とも言えるほどの極端な視覚的ないし音楽的な能力の発現が起こることがあります」、「言語処理の機能は左の前頭葉と側頭葉に遍在しているわけですが、音楽は、リズム、ピッチ、感情、音程など、さまざまな要素が絡んでいるので、その処理には実にたくさんの脳の部位が関与しています」「(三歳で素晴らしい絵描きの才能を示した)ナディアのケースは私の同僚、ハワード・ガードナーが(知能は一つではなく、言語知能、音楽知能、身体知能など複数あるという)『複数知能説』を提唱する大きなきっかけとなりました」、「(音楽の能力は)領域特定化しているようです」、「ポジティブな平和な時間というものは芸術や科学の基礎であり、最も望ましい状態ではないでしょうか」、「多くの動物や猿が、40もの異なる危険を知らせる音を持っていることが知られていますが、これらはどちらかというと記号のようなものです。人間の言語では、チョムスキーの言うような意味での文法というものが不可欠になります。文法こそが言語に限りなく多くの意味というものを生み出すことを可能にし、言語をクリエイティブなものにしますから。単に情報交換を目的としたコミュニケーションのためだけでなく、われわれ自身そのものを表現する手段としての言語というのは、人間に特有のものでしょう。音楽もそうです」、(以上、脳神経科医&作家のオリバー・サックス)(また明日へ続きます‥‥)

 →Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto