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ヴィンセンテ・アモリン監督『汚れた心』

2014-01-11 10:38:00 | ノンジャンル
 山根貞男さんが朝日新聞で紹介していた、ヴィンセンテ・アモリン監督の'11年作品『汚れた心』をDVDで見ました。
 “私の名は高橋ミユキ。私は戦争を体験し、日本人植民地で終戦を迎え、そこで全てを失った”のナレーション。“日本は戦争に破れ、ブラジルでは日本人移民が溢れていた。彼らは日本に関する情報を遮断されていたため、大部分が日本の勝利を疑わなかった”の字幕。写真館を営む高橋(伊原剛志)は日本の勝利を信じる皇国派です。通訳は教師の妻(常磐貴子)の教え子であるアケミがしてくれています。日本陸軍大佐の渡辺(奥田瑛二)は日章旗を掲げて大和魂についての演説を始めますが、ガルシア大尉は集会の禁止を命じ、渡辺にも軍服を脱がせ、日章旗で靴を拭いて、今度やったら全員逮捕すると脅します。
 “連合国側から発表された声明によると、天皇が文書に署名し、敗戦を認め無条件降伏を受諾。天皇は日本国民は他国を支配しない事とした。最も衝撃だったのは、天皇は神ではないと宣言したことである”というラジオ放送を聞く青木。そこにたまたまいたアケミに、青木は今聞いたことを忘れるようにと言います。
 その日の深夜、高橋宅を訪れた渡辺は“日章旗が穢された。このような侮辱に対して取るべき道は一つしかない”と日章旗を高橋に渡します。日章旗を腹に巻き、渡辺を先頭に進む一団は、警察でガルシア大尉を殺すと言い、ドアに体当たりを始めます。警察は、援軍を頼み、全員を逮捕します。1人ずつ事情聴取を受けますが、その通訳を青木がすると、皇国派の連中は青木を敵に味方する非国民だと非難します。渡辺らが釈放されると、高橋は渡辺から日本刀を渡され青木の暗殺を命じられます。一方、日本人学校が役人に襲撃され、教科書を燃やされ、アケミは『ふるさと』を歌います。家の壁に「国賊」とペンキで書かれ、身に危険を感じた青木は、妻子を親戚に預けます。学校を再建する組合長の佐々木とそれを手伝う高橋。青木は壁の「国賊」の文字を塗りつぶしますが、訪ねてきた高橋は自決を迫り、拒否した青木を惨殺します。その場に現れるミユキ。
 当局に頼まれ、佐々木は集会で日本が敗戦した事実を語りますが、村民は1人ずつ去っていきます。身の危険を感じる妻のナオミは金と旅行許可証を用意して町を去ろうと佐々木に言います。佐々木の家には「国賊」の看板が立てられ、「佐々木が国賊だ」と書かれた紙片も配られます。
 ある夜、皇国派は現実派の虐殺に乗り出し、渡辺の訪問を受けた佐々木は、自決もしないし殺されもしないで戦うと言いますが、乱闘の末、佐々木は殺されます。ナオミは「犬が死んでるぞ」と言う皇軍派の男の訪問を受け、アケミとともに夫の遺体と対面します。高橋は、罪など一切犯していない、俺の行動は正しかったと自分に言い聞かせます。鶏の首をすべて落とすミユキ。佐々木の葬式が済むと、ミユキはナオミとアケミとともに町を去ります。
 高橋は渡辺の命令で英字新聞の写真に「マッカーサー司令官、天皇に降伏」などの嘘のキャプションをつけ、なぜ祝勝の記事に捏造しなければならないのか渡辺に訊きますが、渡辺は敵が日本からの情報を阻止しているからだと言います。高橋の暗殺を部下に命ずる渡辺。アケミの写真を見ながら、捏造写真を焼く高橋。そこへ皇軍派の男が襲いかかり、高橋は返り討ちにします。
 ハーモニカで『ふるさと』を吹く渡辺の元を訪ねる高橋は、刀を差し出し、皇国臣民に疑念などないと言う渡辺の首をはねます。高橋は警察に自首し、汚名を受け入れて生き続けるしかないと言います。
 老いた高橋の写真館をたまたま訪ねたアケミは自分の幼い頃の写真が飾られているのを見て、目の前の男が高橋だと知ると憤然と店を飛び出し、ミユキは再婚して日本に帰ったと言います。そして冒頭のナレーションが繰り返され、“あの戦争で私は愛する人を失った”と語られた後、“移民同士の抗争は多くの死傷者を出し、3万人以上が逮捕され、381人が有罪となった。10年後、全員に恩赦が認められた”という字幕で映画は終わります。

 奥田瑛二の狂信的な演技ぶりが見どころでした。

→「Nature Life」(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto/