gooブログはじめました!

写真付きで日記や趣味を書くならgooブログ

G・ヤノーホ『カフカとの対話』

2014-07-18 08:51:00 | ノンジャンル
 デイヴィッド・クロネンバーグ監督の'12年作品『コズモポリス』をWOWOWシネマで見ました。ほとんどの時間をリムジンの中で過ごす若い大富豪が主人公で、ワンシーンだけジュリエット・ビノシュが出演し、ほとんどのシーンで主人公が他者と会話し、暗い深みのある画面が印象的な映画でした。

 さて、山田太一さんがアフォリズムが満載されていると言っていた、G・ヤノーホの'68年作品『カフカとの対話』を読みました。
 冒頭の部分から引用させていただくと、「1920年3月末のある日、夕食の席で父が、明日の午前中に役所に訪ねて来るようにと言った。
『お前がよく学校をずるけて市の図書館へ行くのを、私は知っている』そう父は言った。
『ともかく、あす私のところへおいで。身なりを整えて来るがいい。人を訪ねるのだ』
 私は、二人でどこへ行くのかとたずねた。
 父は私の好奇心を楽しんでいるのではないかと思われた。しかし彼は一言も教えてはくれなかった。『いいから』と父は言った。『訊きたがるんじゃない。不意打ちのほうがいい』
 翌日の正午少し前、労働災害保険局の四階にある彼の事務所にはいってゆくと、父は私を頭の天辺から足の先まで注意深く見まわした後、事務机の真中の抽斗をあけ、花文字でグスタフという銘のある緑色の帙(ちつ)をとり出し、前においたまま、私をながい間見つめていた。
『なにを立っている』しばらくして父が言った。『掛けなさい』私の緊張した表情が、いたずらっぽい様子に軽く彼の瞼をすぼめさせていた。『心配しなくていい。叱りつけようというのじゃない』彼はやさしく語りはじめた。『私はお前と友達同士のように話したい。父親ということを忘れて聞くがいい。お前は詩を書いているね」彼は請求書をつきつけるように、私を見つめた。
『どうしてそれをご存じ?』私は口ごもりながら言った。『どうして分かったのです』
『なんでもないことだ』と父は言った。『毎月電灯料がたいそうかさむ、私は使用量が増えたわけを調べてみて、お前が夜更けまで灯りをつけていることが分かった。おそくまでお前がなにをしているかが知りたくて、私は見張っていた。そして、お前が一心に書いていること、書いては破り書いては破り、かと思うと、そっとアップライトの底に隠していることを確かめた。だから、ある朝、お前が学校に行っている間にあれを見てしまった』
『それだけ?』
 私は唾をのみ込んだ。
『それだけさ』父は言った。『「体験の書」という表題の黒いノートが見つかった。これには興味を覚えたけれども、お前の日記だと分かったのでよけておいた。お前の魂を掠め取ろうとは思わない』
『でも詩を読んだではありませんか』
『ああ、詩は読んでしまった。「美の書」という題の黒っぽい紙挟みのなかだった。私に分からぬところが多かった。あるものはどうしても馬鹿げているとしか思えない』
『なぜあれを読んだのです』
 私は17歳だった。だから少しでも触れられることは、神聖冒涜を意味した。
『なぜ私が読んではいけない。なぜお前の作品を知ってはいけないのだ。いくつかの詩は私の気に入りさえしている。私はできればその道の人から、専門的な批評を聞きたいと思った。それで速記をとり、役所のタイプライターで写しをこさえた』‥‥」

 全部で400ページ弱のうち、30ページほどを読んだところで、先を読むのを断念しました。理由は単純に内容に興味が持てなかったからです。それは実際にカフカとの対話が始まってからも同じでした。

→Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto/