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加島祥造『英語名言集』その1

2017-08-12 11:10:00 | ノンジャンル
 朝日新聞で紹介されていた、加島祥造さんの’93年作品『英語名言集』を読みました。
 著者による「はじめに」から引用させていただくと、
「題名は「英語名言集」となっているがこの本は、日本のいわゆる「名言集」とまったくちがう。おもに20世紀の人びとの言葉が集められている。私の心が感銘したものを選んでいる。だから、無名のアメリカの少女のものからインドのガンジーまで、名言と言えないものも含まれている。ほとんどが、20世紀から21世紀へと向かって動き働いてゆくと思える言葉である。
 この百句はまず、英語、次に私の訳とコメントがつづく。コメントには、英語を学習する上で役に立つように、単語・慣用表現・文法などの解説も織りまぜた。英語に興味のある人にはとくに、次のような読み方をすすめたい。
(1) まず英文を先に読み、考えてみる。
(2) 自分で訳してみる。
(3) 私の訳した文章を見てみる。ただし、それを手本と思わないこと。
 しかし、訳とコメントがこの本のボディ(主体)なのである。そこでは英語で表された考えが私たちの考え方と、どのように通じ合い、どのようにちがうかを見ようとしている。
 コメントはできるだけ若い人たちの視点を心にとめて書いたが、しかし知性の水準は下げなかった。たえず興味と真剣味をもって若い人たちと対話しようとした。だから少しむずかしいと思える句もあるだろう。それらは無理に理解しようとしなくてもよい。いつか、将来、すっとあなたの胸に入ってゆくかもしれない。(後略)」
 では具体的な内容に触れておきましょう。
 私が気に入った名言は、「Make love not war」(戦争をするぐらいならセックスしよう)、「This we know. The earth does not belong to man ; man belong to the earth. This we know」(私たちは知っている。大地が人間のものではないことを。そして、人間は地球のものであることを。私たちは知っている)、「Nature provides exceptions to every rule」(自然は人間の作ったあらゆるルールに例外を提供している)、「Be a good animal, true to your animal instincts」(本物の動物になれ。動物の生の本能にしたがって)、「Laugh, and the world laugths with you ; Weep, and you weep alone」(笑えば、世界も君と一緒にわらってくれる。泣くと、君は一人泣くことになる)、「I am for people, I can’t help it」(チャップリンの言葉、「私は庶民の味方だ。誰もそれを止めることはできない」)、「To err is human
----but it feels divine」(メイ・ウエストの言葉、「過ちをするのが人間、でも誤るって素敵な感じ」)、「The voice is greater than the eyes」(声は目に映るものよりずっと多くの情報を提供してくれる)、「Give Peace a Chance」(ポールとレノンの言葉。「もう一度平和にチャンスを!」)、「We must learn to live brothers or perish together fool」マーティン・ルーサー・キング牧師の言葉。「私たちは兄弟として共に生きることを学ばなければならない。それができなければ、馬鹿者として共に滅びるだけだ」)、「The notes I handle no better than many pianists. But the pause between the notes---ah, that is where the art resides!」
(「音符を扱う技術では私はほかの多くのピアニストと変わらない。しかし音符と音符の間の間------この間にこそピアノ芸術の秘密がひそんでいる」)、「I hoped that the trip would be the best of all journeys : a journey into ourselves」(女優のシャーリー・マクレーンの言葉。「いろんな旅のうちでも、この旅が最上のものとなってくれればいい。と私は願ったわ------自分自身のなかへの旅が」)。
 また、名言に添えられた著者による解説にも面白い部分が多くあり、たとえば、
・「21世紀になれば、情報整理を学問と取りちがえて学者顔する人たちはいなくなり、機械にその席をゆずることになろう。イングが心配したようなことは、自然と減るにちがいない。
 そのあとでは、values(価値)を学ぶ世紀になろう。人の心が評価(evaluate)するものについて学ぶのである。巻紙に筆で書いた手紙と、ワープロで打った手紙のvalueのちがいの問題である。当然これは、とても複雑で微妙な問題であり、だからこそ、21世紀の教育はこれを学ぶようになってくるだろう。若い人は、いずれ機械にとって代わられるような分野にばかり心を奪われないで、ときにはvalueに心を向けたほうがいい」
・「ところで、人がこのwisdomへいたるには、大切な条件がひとつある。それは「心をひろくもつ」ということだ。せまい心の人は、汚れたものや嫌なものを切り捨てて、自分のなかをきれいに澄んだものにしようとする。あるいは自分の利得になるものばかりを取って、目先の損を受け入れまいとする。こういう人はclever(利口)どまりで、wisdomへの道に入れない。(後略)」
・「21世紀には、コンピュータの発達などによって、人間の知能はますます専門化され、特殊な分野が発達するだろう。専門馬鹿になる確率が増すというわけだ。これは人類にとってたいへんに危険なことなのだ。なにしろコンピュータを使って狭い分野をきわめただけの人が、なにかの権力をもつ地位に立つと、きわめておそろしいことをしでかすかもしれないからだ(後略)」(明日へ続きます……)

 →Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto/