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加島祥造『英語名言集』その3

2017-08-14 11:21:00 | ノンジャンル
 また昨日の続きです。
・「アーネスト・ヘミングウェイとウィリアム・フォークナーは、20世紀アメリカ文学の代表的小説家たちであった。すこしあとだがフォークナーもまた、マーク・トゥエインを近代アメリカ文学の父親と呼んだ。もうひとり、詩人T. S. エリオットは20世紀で高名なアメリカ生まれの詩人だが、彼も『ハックルベリー・フィンの冒険』を高く評価して、世界のどんな傑作とも肩を並べるものだと言った」
・「トマス・ハーディは『テス』Tess(1878)という小説(映画にもなった)で日本に知られている。女主人公のテスは、用心ぶかくしないで恋人をつくり、ついに悲劇の道をたどるのだが、ハーディは、恋というものが強い人間的衝動と考えていて、それが理性や社会(世間)や利害なんかで抑えられるものじゃない、そんな自制心や用心ぶかさに押さえこまれるような恋は、恋じゃないと言うのだ」
・「日本は儒教道徳や、男性中心の恥意識のなかで、ずいぶん人間の自然本能を拘束したものの、根底には神道的自然観を失わなかったせいか、西欧ほどは肉体性軽視の状態を生じなかった。しかしこれからの日本には、もっと強力な敵が現われつつある。
 私の暮らす伊那谷(いなだに)で、農村の人たちが私にこう言った------「都会の人は脚が丈夫だねえ。地下鉄の階段なんかをよく歩くせいかな。おれたち、車ばっかり乗ってて、足が弱ったよ」。私はこれを聞いてたいへん驚いた。過去の精神主義の束縛よりも、現在の(そしてこれからの)機械化による能率主義のほうが、人間の肉体能力や本能を、ずっと強力に衰弱させるものなのだ。
 だからこれから、ロレンスのこの思想はきっと21世紀の焦点となる------Be a good animal!」
・「だからせめて、窓を開けるときだけは、自然に向かって窓を開けよう。そうすれば自分の心も開けられよう。そういう心掛けで、窓を両手で押し開こう。この引用句は、私たちにそのように語りかけているようだ。私たちの窓は、ときにはマンションの、洗濯物のかかったベランダの窓だったり、オフィスの、外は騒音と排気ガスにみちた窓だったりする。汚い路地裏のアパートの窓だったりもしよう。しかし、それとともに開ける私たちの心の窓は、いつもそのむこうに、澄んだ空や水をたたえている。閉じた心の窓の中は、澱んだり濁ったりしているかもしれないが、開いた心の窓から見えるのは、いつも陽のひかる空や月の照る丘、輝く風景なのだ」
・「ひとりの人の喜びや笑いは、他の人びとに伝染する。その場にいる人びとを明るくさせる。笑いにはそういう伝播性がある。ひとりの人の悲しみは、その場を暗くすることもあるが、深くは伝染しない。君の泣きじゃくる姿をみて、もらい泣きをする人がいるかもしれないが、君はその人によって慰められはせず、かえって悲しくなるばかり------こういう経験は誰にもある。憐みpityは、喜びや笑いを失った人への同情であって、悲しみへの共感ではないのだ」
・「(前略)はっきりと、あなたの心がおもしろがれば、何でもおもしろいのだ、と言ったほうがいい。あなたの心が何もおもしろがらないなら、世の中はつまらないものだらけだ。心次第なのだ。そして実はこの見方は、東洋においては実に深い点まで掘り下げられている」
・「それで文字以前の時代に、耳がどんな偉大な働きをしていたか、忘れられた。しかし声が耳から伝わったとき、それは人の心の奥深くに蔵(しま)いこまれて命となる。私たち日本人の古人も縄文期の長い年月を、耳から心へ、心から声に、歌を、祈りの言葉を、伝えつづけた。その記憶は大和(やまと)言葉のなかに、いまも生きている。
 文明は、その声を記録できるようになった。これは20世紀の技術によって、文字による視覚文明の束縛から、ふたたび人を解放しようとするものだ。このことははかりしれないほど大きな変革らしいのだが、眼の文化に慣れ過ぎた20世紀までの社会では、この変革の大きさがまだ実感されない」(実際、映画は無声映画からトーキーへと移行しました。)
・「平和にもう一度チャンスをやってみないか、とザ・ビートルズは歌った。本当の平和がきたら、個人の間の争いだってなくなるかもしれない。とにかくすこし「本物の平和」に任せて、そこで人間がどうするかを見てみようじゃないか。
 自分の心のなかでも同じだ。自分の心にある静かさにチャンスを与えてみたらどうか。自分のなかの静かさや優しさにチャンスを与えてみたら、案外自分は静かさの好きな優しい人間なんだな、と発見するかもしれない。
 Give tenderness in you a chance------英語では、こういう言い方もできるのだ」(また明日へ続きます……)

 →Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto/