gooブログはじめました!

写真付きで日記や趣味を書くならgooブログ

マーティン・スコセッシ監督『アビエイター』その13

2017-09-25 06:05:00 | ノンジャンル
 また昨日の続きです。
 「機内からお届けします。ハワード・ヒューズの世界最大200トンの飛行機。軍需契約の調査が行われた、いわくつきの大空の巨人です。ヒューズ氏は言いました。“水上走行試験では何が起こるか分からない”と」。“1947年11月2日 ロング・ビーチハーバー”の字幕。「マンモス機の外壁が大波をかぶるかもしれません。本格的な空の飛行は来春から。まだまだ未知の飛行機のようです」ハワード「諸君、まだ拍手は早い」。「記者席はヒューズ氏の後ろです。窓から見事な眺望が広がります」。「教授も前に来てくれ。シートベルトを締めて眺めを楽しもう。みんな、行くぞ。始動だ。第一エンジン、第二オーケイ。第三、第四オーケイ。第五、第六オーケイ。第七、第八オーケイ。スロットル全開」オーディ「スロットル全開」「大声を出さないと自分の声も聞こえません」。「プロペラ始動」「了解」「ふフラップ15度」「フラップ15度。ハワード、飛ぶには時速112キロが必要だぞ」「分かってる」。「南カリフォルニア沿岸は雲一つありません。澄んだ青空。温かい日差し」。オーディ「時速40キロ。48キロ。56キロ」。「このエンジンですから、かなり揺れるはずです」オーティ「落ち着いて行け。時速64キロ」「右スロットを使って180度旋回」「右スロットを使って180度旋回」。「クルーは4名ですが、この処女滑水に11名の整備員を動員。飛行艇の各所に配置して万全のチェック態勢です」「エンジン音は?」「問題ない。教授」「何か?」「頼みがある。窓から見て風速を教えてくれ」「およそ15ノットの風だな」「つまり向かい風だな。教授」「その通り」。
 「審理中はどうぞ静粛に願います。立って誓約を。400万ドルを受け取りましたか? 100機のXF--11偵察機を製造し、空軍に納入するために」「はい」「アメリカ空軍に何機納入しましたか?」「ゼロです」「もっとマイクに近づいて」「ゼロです」「1300万ドルは受け取りましたか? 飛行艇“ハーキュリーズ”の試作機製造費として」「受け取りました」「それで納入は?」「してません」「あなた自身が今認めたように4500万ドル受け取った。アメリカ政府から未納の軍用機の代金として」「その通り」「ではお尋ねするが、そのお金はどこに?」「それ以上のカネを飛行機に注ぎ込んだ」「それ以上? 他にも横領にかかわった訳ですか?」「自分のカネを注ぎこんだということです。自分のカネだ。つまり……」「ヒューズさん、あなたの財力は……。彼の話を聞こう。続けて」「私の最大の関心事は何と言っても飛行機だ。自分のカネを注ぐのは大きな喜びだ。その結果大金を失った。今後も失うだろう。それでも構わない。戦時中に政府のカネを使い込んだと言うなら、こう考えてほしい。他に60機以上の発注を受けたロッキード、ダグラスなども納入していない。総額8億ドルが発注されたが、1機も飛ばない。さらに60億ドルを超える兵器が納入されていない。なのに5600万ドルのヒューズ・エアクラフトだけが調査委員会に召喚された。飛ばない飛行機よりも、TWAの問題だからだ。指摘の通りだ。待て。この委員会にもう一つ言うことがある。“ハーキュリーズ”について。私に悪い評判が立っている。気まぐれだとかプレイボーイだとか。エキセントリックとも言われるが、嘘つきじゃない。“ハーキュリーズ”は記念碑的な大事業だ。史上最大の飛行機で、高さは5階建てビル。幅はフットボール場並み。1街区の規模だ。私の心血を注いだ名誉ある作品だ。だから表明した。“飛行テストが失敗したら祖国を去って戻らない”と。本気だ。ブリュースター議員、何度でも召喚しろ。逮捕するがいい。私が逃げたと公表するがいい。茶番にはウンザリだ。失礼する」。立ち上がり、去るハワード。拍手する者、握手を求める者も。
 トリップ「もうテレビは消せ」「まだです」「終わった。CABは通過しない。TWAはNYからパリへ飛ぶ。パリからモスクワ、日本、ハワイ、もちろんロサンゼルス、そしてNYへも。負けた」。
 「パワー全開」「パワー全開」「ヒューズ氏は“警告”していました。“すごい馬力なので、しっかりつかまれ”と。時速は40キロ、48、56、64。スロットルを開けて。64、72、80、88、96、104、112、120」。離陸して揺れが収まる。「一瞬静かになって空中に浮きました」。拍手。「飛んでいます。ハワード・ヒューズの快挙です。皆さん、本当に空を飛んでいます。ヒューズ氏の巨大な飛行艇がL.A.ハーバー上空を飛行しています。まさに感動の瞬間です。ヒューズ時代の到来を予感せずにはいられません」。(また明日へ続きます……)

 →Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto/