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誉田哲也『ストロベリーナイト』

2009-04-10 18:20:00 | ノンジャンル
 幻冬舎発行の雑誌「星星峡」で、みうらじゅんさんの小説と豊島ミホさんの小説を読みました。みうらじゅんさんは、スカパーで放送されている「勝手に観光協会」と「男同志2」を欠かさず見るほどのファンなのですが、小説は全くつまりませんでした。それに対し、豊島ミホさんの小説はやっぱり面白い! 最近面白い小説に恵まれていなかったので、ちょっとホっとしました。

 さて、誉田哲也さんの'06年作品「ストロベリーナイト」を読みました。
 亀有の掘近くの人通りの激しい植え込み近くで、ブルーシートの上からきつく縛られた死体が発見されます。若くして警部補に昇進した女性刑事・玲子はその場所と死体の状態の矛盾に注目し、その掘に住む原虫による感染症で一ヶ月前に死んだ男が死体を掘に沈める役だったのではないかと推理し、実際に掘から別の死体を発見します。死体の2人は数カ月前から毎月第二日曜日に外出していて、その外出が始まった頃から仕事に精力的になっていたことが分かります。また殺人の動画を流す裏サイト「ストロベリーナイト」の存在が浮かび上がり、そのサイトで生の殺人の見学を希望すると、第二日曜日にステージ上で行なわれる殺人への招待状が届けられていたことが分かります。玲子の部下である大塚は独自の捜査でそのステージとして使われている元ライブハウスに潜入することに成功しますが、犯人たちに捕えられ殺されます。真相に迫った玲子たちを、真犯人である警官が襲いますが、寸での所をライバルの同僚に助けられ、犯人のグループを逮捕します。その中には、幼少時に虐待を受け多重人格者になっていた少女も含まれていたのでした。
 やはり飛ばし読みでしたが、主な台詞だけ読んであらすじを追うことはできました。本筋とは関係ない日常生活の描写が多いのが、飛ばし読みの理由です。後の「ソウルケイジ」で活躍する登場人物がここでも同じキャラクターで多く活躍していますが、死体や殺人のえげつない描写も健在です。警官もの、残酷な小説がお好きな方にはオススメです。

マノエル・デ・オリヴェイラ監督『わが幼少時代のポルト』

2009-04-09 13:02:00 | ノンジャンル
 WOWOWで、マノエル・デ・オリヴェイラ監督の'01年作品「わが幼少時代のポルト」を見ました。
 延々と抽象音楽を指揮する指揮者の後ろ姿。「過去を呼び戻すことは時代を越える旅である」「各人の記憶だけが成しうることだ」「それを試みてみよう」の字幕。廃墟となった家の映像をバックに、生家について語る声と歌。夜の海。劇場の映像と、そこで演じられる劇。騎馬警官と、車に乗って劇場から帰る長い道中。昔のポルトの街の映像。高層建築をよじ登る男と、それを見守る群集。当時のセレブの映像と、その再現ドラマ。子供時代の思い出。両性具有について談笑する男たち。ナイトクラブの再現ドラマ。以前カフェがあった通り。カフェでの再現ドラマ。当時の希望と絶望。第二次世界大戦を語る声と指揮者の後ろ姿。当時の港の映像。映画監督になった頃の思い出。編集の再現ドラマ。冒頭の廃墟の映像と歌。20世紀初頭の街角の映像。当時の映画館と現在の映画館。当時の映画撮影の再現ドラマ。川に沿った長い移動撮影。海、灯台、そして冒頭の歌。
 ナレーションと昔の映像と再現ドラマが重層的に重なりあって構成されている、非常に変わった映画です。冒頭の字幕からも分かるように、オリヴェイラ監督自身の回想を、そのまま映画にしてしまおうという試みで、興味深いものでした。100才を越えて未だに現役を続けるオリヴェイラ監督ですが、その回想には第二次世界大戦とそれに続くファシスト政権に影響された苦い思い出が拭い切れないことが、この映画を見て分かりました。それとともに、20世紀初頭の時代に対するノスタルジーも感じられました。その時代への興味がある方にはオススメです。

浜なつ子『マニラ娼婦物語』

2009-04-08 16:17:00 | ノンジャンル
 昨日の朝日新聞の夕刊に、山際素男さんの訃報が載っていました。私が大学の文学部に通っていた時、インド史の授業でレポートを提出する際に読んだのが、山際さんのアウトカースト(アンタッチャブル)についての本でした。私が所属していた哲学科の先生のよそよそしさに比べ、インド史の先生がとても親身で、しかも渡される資料(特に南インド諸州についてのもの)はとても充実していて、山際さんの名前を聞くと、あの時のインド史の先生のありがたさを思い出します(失礼ながら、名前は失念してしまいました。)。当時は本当にお世話になりました。

 さて、浜なつ子さんの'88年作品「マニラ娼婦物語」を読みました。
 著者は当時「ジャパゆきさん」の名前で呼ばれていた、フィリピンから日本への女性不法就労者の実態を調べるため、マニラに行き、売春の舞台となっていたゴーゴーバーで、自分を一心に見つめる女性と出会います。その女性に誘われるままに、その女性の実家を訪ね、やがてその女性は日本に働くために、日本に観光ビザで入国します。その間、著者は中絶の現場に立ち合い、偽造パスポート作りについて見聞し、殺し屋と遭遇し、その他様々な経験をします。
 読み出した当初は、マニラの貧民街の暮らしぶりに好奇心を覚えましたが、それも結局フィリピンの普段の生活を描いたものでしかなく、すぐに退屈し始めました。インドの少女売春のひどさを聞いていたりしたので、フィリピンの娼婦の置かれた環境のひどさにも、それほど驚くことはありませんでした。それよりも写真のいくつかに素晴らしく美しい女性が写されていて、これはスペインやアメリカ人との混血ゆえのことか、と改めて考えたりもしました。フィリピンの貧しい人々の暮らしぶりに興味のある方にはオススメです。

誉田哲也『春を嫌いになった理由(わけ)』

2009-04-07 16:29:00 | ノンジャンル
 誉田哲也さんの'05年作品「春を嫌いになった理由(わけ)」を読みました。
 大学卒業後就職できないでいる瑞希は、叔母でTVプロデューサーの織江から霊能力者の通訳のバイトを与えられます。織江が担当する番組で、霊能力者は幽霊が出没するという場所の近くのビルの廃墟から白骨死体を発見し、行方不明になっている久保という男性が既に死んでいることをほのめかします。その番組を見ていた岩本は、行方不明になっている人物が自分であることを知り、テレビ局へ走ります。実は、番組で発表されていた行方不明の男性の写真は、白骨死体の人物のもので、岩本はその人物になりすまし、日本で結婚し暮らしていた、不法入国した中国人でした。テレビ局に着いた岩本は、日本人と結婚し帰化していて岩本を探していた妹と再会しますが、その場に久保を殺し、その物品を奪った岩本を付け狙っていた月という殺し屋もやってきます。月は岩本を殺そうとしますが、現場にいた警官に阻止され、月は逮捕されます。番組後、警官に付き添っていた男に、瑞希が幼い頃夢に出て来た男が実体化していたことを瑞希は知らされ、自分も霊能力者であることを知り、TVスタッフは今後の番組レギュラーとして出演してほしいと言い、霊能力を信じていない瑞希はうんざりするのでした。
 この作品も飛ばし読みしましたが、それでもあらすじを追えるということは、無駄な描写や書き込みが多い証左であるような気がしました。瑞希の物語と、テレビを見ている岩本と、不法入国した岩本こと守敬の話が平行して語られていき、最後にその3つの話が一気に一つにまとまり、そこでカタルシスが生じる仕掛けになっているのですが、岩本に関してはただテレビを見ているだけで何のドラマもなく、その仕掛けがあまり機能していないように感じました。テレビ局での描写が多いので、そうしたものに興味のある方にはオススメです。


ジミー・カーター『カーター、パレスチナを語る』

2009-04-06 17:35:00 | ノンジャンル
 ジミー・カーター元米大統領が'06年に出した「カーター、パレスチナを語る アパルトヘイトではなく平和を」の日本語訳を読みました。パレスチナ問題についてカーターが語った本です。
 本書では、カーター元大統領が州知事時代の'73年に行なったイスラエル初訪問から始まり、'77-81年の大統領時代、パレスチナ・イスラエル双方の事情、シリア・ヨルダン・エジプト・レバノン・サウジアラビアといった近隣諸国の事情、'81-89年のレーガン米大統領の時代、パレスチナ人への訪問記、ジョージ・H・W・ブッシュ米大統領の時代、'93年のオスロ合意、'96年のパレスチナの選挙、ビル・クリントン米大統領の和平努力、ジョージ・W・ブッシュの時代、'03年のジュネーヴ提案、'05年のパレスチナの選挙、'06年のパレスチナとイスラエルの選挙、イスラエルがヨルダン西岸に築いた壁などについて語られます。そこで私が知ったことは、イランの大統領がヨーロッパにおけるナチスのホロコーストを神話と表現し、イスラエルは滅ぼされるべき、さもなくば中東からヨーロッパに移されるべきだと言っていること、シリアの指導者がレバノンは自分たちの国の一部であると考えてきたこと、イスラエルがレバノンを爆撃したり占領したりしてきたのは、PLOの攻撃拠点がレバノンにあったからだということ、カーターが大統領の職を辞した後も、カーター・センターを夫人と共に設立し、65ヶ国で保健、農業、民主主義の増進、平和の促進に関するプロジェクトを進めていることなどです。
 この本はそれまでアメリカではタブーであったイスラエル批判を元大統領が行なったということでセンセーションを引き起こし、ベストセラーになったとのことですが、内容自体は「報道ステーション」などで既に聞いたもので、期待した新しさはありませんでした。政治家の本らしく無機的な文章が単調に続くので、苦痛に感じる方もいらっしゃるかもしれません。ただ、パレスチナ問題の全貌を知りたい方にはオススメです。