私が東京の大学に進学することが決まったあと、部屋探しに行く必要があり、目白にすむKさん母子のお世話になりました。当時娘さんが音大の学生さんで、都内でひとりぐらしをしておられたところ、お父さん(ご主人)がご病気になられ東京の病院で治療することになり、お母さんは娘さんのところに一緒にいらっしゃったのです。そこに、母と私が数日泊まらせていただきました。
部屋も決まり、もろもろの家財道具も、百貨店やスーパーに連れて行っていただき、買い揃えました。その日の夕食は、母はどこか外の飲食店でどうですかとKさん親子を誘いましたが、「朝からずっとあちこち歩いてつかれているでしょ? 家でできるもので支度して食べましょう。」といわれ従いました。
帰ったのは夜でした。その日の夕食はKさんのお母さんが百貨店で買ってくださった豪華なちらし寿司でした。綺麗な厚紙を円形に折りたたみ、開けるとお花のように広がり、その中に丸いちらし寿司がのっていました。あまりの美しさに母と私はうれしくなりました。島根ではそんなにきれいな包装のお寿司は見たことなかったからです。
そして、一緒に出されたのは
春菊入りのお味噌汁でした。
お味噌は赤だし、そしてアツアツでした。
4月の最初はまだまだ冷え込みます。一日中外にいて、体は冷えていました。
春菊の香りがお味噌とマッチして、本当に美味しく、そして、体も心もあたたまりました。
知らない人ばかりのはじめての都会で、ありがたいおもてなしでした。