友達との貧乏旅行を計画している
だが それとは別の一人小旅行も計画している
一つは 東京生まれの父が幼少期と少年時代 2度に渡って預けられた母方の実家の地
もう一つは 母が 家族で東京に移り住む以前に住んでいた故郷である
どちらも何とか日帰りが可能な距離だ
前者には行った事がある
私の祖母と同じ顔の写真を見て あっ お祖母ちゃんだ と言ってしまった
黒い額縁に納まった写真だったのに^^
6人きょうだい(内二人は戦前に亡くなっている)の中で 何故自分だけが母の実家に行かされたのか
父の中では それが一生の疑問でもあり トラウマの様なものでもあった
今となっては真偽も判らぬ出生の秘密があったのではないかという いささかロマンティックな解釈もまた
父にとっては 自分を納得させるのに十分なリアリティがあったのかもしれない
気分良く家族相手に呑んだ時は いつもこの話しになった
2度目は10歳の頃 今日から夏休みという日 突然の事だった
年子の兄は弟の手を引いて駅まで見送り 電車の乗り方をしつこいほど説明してくれたという
たった一人でいくんだぞ 父は必ずそう付け加えた
それから青春時代の前半迄 その地で過ごした
父親が宮内省勤めの友達がいて 東京で別れたと思ったら この地で偶然にも再会
一家で父に優しく接してくれたらしい
その友人の姉が―父が亡くなる少し前に初めて聞いたのだが―父の初恋の女性だった
といっても密かに想いを募らせるだけの
士族の商法が何故か成功した家だったが 父は店の手伝いをさせられ その家の跡継ぎである長男は放蕩息子
孫にあたる父は 祖父母には勿論 地域の人にも可愛がられたから その息子との確執もあったという
多感な青春時代だから 不良だったというのも判る気がする
店の手伝いの合間に 友達と酒を飲みタバコを吸い そして蔵に隠れて本を読む少年
父にとっては愛憎が渾然一体となったような それでもまた確かな一つの故郷なのだ
そして話の締めくくりは お前たちは親きょうだいと一緒に暮らせるのだから 幸せなんだぞと
その後 父は遠く根室の測候所まで行くことになり 更にまた戦地である北支へと
そこもまた 思い出イッパイの土地らしいのだが…
私は 生後一年半でこの地に住み 家族とも別れずに生きてきた
何だか 父の人生の埋め合わせというか反動というか そんな風にも最近思う
だが それとは別の一人小旅行も計画している
一つは 東京生まれの父が幼少期と少年時代 2度に渡って預けられた母方の実家の地
もう一つは 母が 家族で東京に移り住む以前に住んでいた故郷である
どちらも何とか日帰りが可能な距離だ
前者には行った事がある
私の祖母と同じ顔の写真を見て あっ お祖母ちゃんだ と言ってしまった
黒い額縁に納まった写真だったのに^^
6人きょうだい(内二人は戦前に亡くなっている)の中で 何故自分だけが母の実家に行かされたのか
父の中では それが一生の疑問でもあり トラウマの様なものでもあった
今となっては真偽も判らぬ出生の秘密があったのではないかという いささかロマンティックな解釈もまた
父にとっては 自分を納得させるのに十分なリアリティがあったのかもしれない
気分良く家族相手に呑んだ時は いつもこの話しになった
2度目は10歳の頃 今日から夏休みという日 突然の事だった
年子の兄は弟の手を引いて駅まで見送り 電車の乗り方をしつこいほど説明してくれたという
たった一人でいくんだぞ 父は必ずそう付け加えた
それから青春時代の前半迄 その地で過ごした
父親が宮内省勤めの友達がいて 東京で別れたと思ったら この地で偶然にも再会
一家で父に優しく接してくれたらしい
その友人の姉が―父が亡くなる少し前に初めて聞いたのだが―父の初恋の女性だった
といっても密かに想いを募らせるだけの
士族の商法が何故か成功した家だったが 父は店の手伝いをさせられ その家の跡継ぎである長男は放蕩息子
孫にあたる父は 祖父母には勿論 地域の人にも可愛がられたから その息子との確執もあったという
多感な青春時代だから 不良だったというのも判る気がする
店の手伝いの合間に 友達と酒を飲みタバコを吸い そして蔵に隠れて本を読む少年
父にとっては愛憎が渾然一体となったような それでもまた確かな一つの故郷なのだ
そして話の締めくくりは お前たちは親きょうだいと一緒に暮らせるのだから 幸せなんだぞと
その後 父は遠く根室の測候所まで行くことになり 更にまた戦地である北支へと
そこもまた 思い出イッパイの土地らしいのだが…
私は 生後一年半でこの地に住み 家族とも別れずに生きてきた
何だか 父の人生の埋め合わせというか反動というか そんな風にも最近思う