2008年度の「検定」に合格したというニュースが、4月9日の夕刊各紙に載った。
この日の午前、文部科学省は「教科書検定審議会」を開催し、
『新編 新しい歴史教科書』(自由社版)の検定合格を正式に発表した。
毎日新聞は社会面トップ記事。
教科書検定:「つくる会」516カ所指摘 大戦表現などに意見--08年度 毎日新聞 2009.4.9 ◇申請2冊が合格 文部科学省は9日、08年度の教科書検定結果を公表した。「新しい歴史教科書をつくる会」(藤岡信勝会長)が主導し自由社が発行する中学社会科(歴史的分野)の教科書は516カ所の欠陥が指摘されいったん不合格となり、再申請でも136カ所に意見が付いたが、すべて修正して合格した。2年連続不合格だった東京書籍の生物2(高校)は、3回目の申請で合格した。 ◇iPS細胞登場--生物2 08年度検定は主に中学で10年度から使う教科書が対象。中学は新学習指導要領全面実施が12年度に迫り、対応する教科書の検定が10年度に予定されているため、申請は中高合わせて2冊のみで他の教科書会社は見合わせた。 自由社の教科書は、第二次世界大戦に関する「日本軍も(略)侵攻した地域で、捕虜となった敵国の兵士や非武装の民間人に対しての不当な殺害や虐待を防ぎきれなかった」との記述が「理解し難い表現」と指摘され、「(略)不当な殺害や虐待をおこなって多大な惨禍をのこしている」と修正した。 また開国後の朝鮮について日本が「近代化を援助した」との記述は「誤解の恐れがある」とされ、「軍制改革を援助した」に修正。日本の南方進出についての記述も「アジア諸国の独立に寄与したかのように誤解する恐れがある」と指摘され、表現を変えた。 藤岡会長は「確かにそうだと思える指摘がほとんど。史実が正確になり質が向上した」と話している。単純ミスが多かったことについては「コンピューターの誤作動が原因」とした。東京書籍の生物2は132カ所に意見が付きすべて修正した。人工多能性幹細胞(iPS細胞)を開発した山中伸弥・京都大教授に関する記述が初めて教科書に登場した。【加藤隆寛】 ◇「つくる会」分裂状態 09年度、2冊同時に採択対象 今回の検定合格で、「新しい歴史教科書をつくる会」主導の歴史教科書2冊が同時に09年度の採択対象となる見通しとなった。教育現場が混乱する恐れもあるが、背景には会の分裂騒動がある。 「つくる会」現会長の藤岡信勝・拓殖大教授らが中心となって執筆し、扶桑社から発行された歴史教科書は00、04年度の検定に合格。だが藤岡氏らと元会長の八木秀次・高崎経済大教授らの対立が強まり、07年になって八木氏らが「教科書改善の会」を設立して扶桑社の子会社から新教科書の発行を目指すことになった。 藤岡氏らは新たに自由社をパートナーに迎え、昨年4月に今回の教科書を検定申請。6月には扶桑社を相手取り、「印税比率で73%の著作権は自分たちにある」として、現行教科書の出版差し止めを求める訴訟を起こした。 扶桑社版と自由社版では構成やほとんどの記述が同じだが、文部科学省は「外形的に明らかな著作権侵害が認められなければ申請を受理する。『民対民』に口は挟めない」と併存を認める姿勢だ。 扶桑社版は現在、東京都立の中高一貫校や杉並区立中などで使われており、採択率は0・4%。 各教育委員会や国私立校の校長は、今夏までに10年度以降に使う教科書を文科省が作成する目録から選ぶが、訴訟で著作権侵害が確定すればどちらかの教科書が発行できなくなる可能性もある。文科省は「発行できなくなれば、教委などに採択替えを求める」としている。【加藤隆寛】 毎日新聞 2009.4.9 |
「つくる会」は、扶桑社と係争中なので、
「扶桑社版」と「自由社版」の教科書が並存することになる。
「つくる会」は、09年度の採択に向けて動きだしているようだけど、
「火中の栗」を拾う自治体はあるのだろうか。
とはいえ、2005年度の杉並での採択もあることだし、
東京都のように右よりの首長がいる自治体では採択するかもしれないので、
各自治体の教育委員会が採択しないように、監視するしかない。
「つくる会」の歴史教科書の検定合格を受けて、
市民団体が「教科書の不採択を」と訴える共同アピールを発表した
教科書検定:つくる会教科書合格 市民団体「不採択を」 毎日新聞 2009年4月10日 08年度の教科書検定で「新しい歴史教科書をつくる会」が主導し自由社が発行する中学社会科(歴史的分野)の教科書が合格したことを受けて、歴史問題や平和、教育関係などの市民グループ34団体が9日、東京都内で記者会見し、教科書の不採択を訴える共同アピールを発表した。 つくる会の教科書について「太平洋戦争が侵略戦争だったことを認めず、アジア解放に役立った聖戦と美化している」と批判。「日本国憲法の理念を敵視する考え方を一方的に子どもに注入するような教科書は許されない」と主張している。 一方、つくる会の藤岡信勝会長は同日、記者会見で「伝統と文化の尊重や愛国心などを明記した改正教育基本法を踏まえて編集した。新学習指導要領の方針も先取りしている」と話した。【加藤隆寛、井上俊樹】 毎日新聞 2009年4月10日 ----------------------------------------------------------------------- 教科書検定:つくる会教科書は不採択を 市民団体アピール 毎日新聞 2009年4月9日 08年度の教科書検定で「新しい歴史教科書をつくる会」が主導し自由社が発行する中学社会科(歴史的分野)の教科書が合格したことを受けて、歴史問題や平和、教育関係などの市民グループ34団体が9日、東京都内で記者会見し、教科書の不採択を訴える共同アピールを発表した。 アピールでは、つくる会の教科書について「太平洋戦争が侵略戦争だったことを認めず、アジア解放に役立った聖戦と美化している」と批判。「侵略戦争への反省から生まれた日本国憲法の理念を敵視する考え方を一方的に子どもに注入するような教科書は許されない」と主張している。 一方、つくる会の藤岡信勝会長は同日、記者会見で「伝統と文化の尊重や愛国心などを明記した改正教育基本法を踏まえて編集した。新学習指導要領の方針も先取りしている」と話した。【加藤隆寛、井上俊樹】 毎日新聞 2009年4月9日 |
「新しい歴史教科書をつくる会」も見解を出している。
新しい歴史教科書をつくる会
第250号 平成21年 4月9日(木)
『新編 新しい歴史教科書』検定に合格!
「つくる会」三度目の挑戦にお力添えを
ー自由社版『新しい歴史教科書』の検定合格についての見解ー
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以下、「つくる会」教科書の検定合格関連の記事です。
「つくる会」分裂、ほぼ同内容で2冊目合格 教科書検定 朝日新聞 2009年4月9日 文部科学省は9日、来年度から新たに学校で使われる教科書についての検定結果を発表した。今回申請があり、検定に合格したのは「新しい歴史教科書をつくる会」が主導した自由社の中学歴史と、東京書籍の高校生物の2冊。同日の教科用図書検定調査審議会の総会で報告された。 「自虐史観の克服」を掲げる「つくる会」は過去、扶桑社から教科書を出してきたが、会は意見対立で分裂。中心の筆者らは今回、出版社を変えて教科書をつくったが、細かな文章表現まで扶桑社版とほぼ同じ内容になっている。扶桑社も従来通り発行を続けるため、代表執筆者も内容も変わらない2冊が存在する異例の状態となる。 「つくる会」による扶桑社版の中学歴史教科書は過去、00年度と04年度の検定に合格。今回の自由社版は04年度の改訂版を踏襲しており、章立てや項目の表記もほぼ同じだ。日本の優れた点や公(おおやけ)、天皇に献身する精神に焦点を当てた記述の多さも変わらないが、今回はさらに、戦艦大和や、昭和天皇の発言を紹介するコーナーを追加している。 申請本には516カ所に検定意見が付き、つくる会側は修正して再申請。さらに136カ所の意見が付いたが、修正して合格した。検定意見の多くは固有名詞の誤記などの単純ミスだが、過去の扶桑社版の検定時に意見がついたものを再度記し、同じように検定意見が付いた個所も複数あった。 教科書検定はほぼ4年に1度実施され、通常は大量の申請がある。しかし今回は、中学の新学習指導要領の本格実施が12年度に迫っており、それに対応した教科書検定が来年度にあるため、ほとんどの出版社が申請を見送った。東京書籍の高校生物は過去に2回申請し、誤りを多く指摘され不合格になっていたもので、今回、3回目で合格した。(上野創) 朝日新聞 2009.4.9 |
08年度検定に「つくる会」教科書合格 出版社変更、300か所修正 読売新聞 2009.4.9 文部科学省は9日、2008年度の教科書検定結果を発表した。 合格したのは2教科2冊で、うち1冊は「新しい歴史教科書をつくる会」(藤岡信勝会長)のメンバーらが執筆した「中学社会 歴史」(自由社)。同会の「新しい歴史教科書」(扶桑社)は以前の検定で、第2次大戦の歴史認識などを巡り物議を醸したが、扶桑社が発行継続を拒んだため、出版社を変えて新たに検定を受け直した。 同省によると、同会の新教科書の初稿には、旧日本軍が大戦中、敵国捕虜や民間人に対して「不当な殺害や虐待を防ぎきれなかった」との記述があった。しかし同省は、これでは日本が多くの国々に多大な損害を与えたことが伝わらないとの検定意見を付け、「不当な殺害や虐待をおこなって多大な惨禍をのこしている」に修正された。同会は従来の歴史教科書を「自虐史観に基づく」と批判。今回も不適当な記述が300か所近く認められ、いずれも検定で修正されたという。 今回の初稿は、04年度に検定を受けた扶桑社版の初稿とよく似ており、検定を経た結果、内容・表現のほか、ページ建てまで扶桑社版とほぼ同じになった。新教科書は教育委員会が採択すれば、来年度からの使用が可能になる。 今回申請が2件にとどまったのは、12年度に中学の新学習指導要領が実施されることに伴い教科書も一新されることから、多くの会社が新たな申請を見合わせたため。合格した他の1冊は高校用の「生物2」(東京書籍)で、今回、不合格となった教科書はなかった。 (2009年4月9日 読売新聞) |
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