中日新聞の「核心」がよいので、紹介します。
参院法務委員会での千葉景子委員(民主)の質問に、
鳩山法相が「国籍法第3条は改正する方向」
「法改正前でも最高裁判決趣旨をいかした取り扱いをしなければならない」
と答弁したそうです。
国籍法改正前でも婚外子の国籍容認へ、法務省が検討 母が外国人で、日本人の父から生後認知された非嫡出子(婚外子)に国籍を認めな い国籍法を違憲とした最高裁判決を受け、法務省は5日、同様の事例で国籍の取得の 求めがあった場合、国籍法改正前でも国籍を認めるための検討を始めた。 鳩山法相が同日の参院法務委員会で「法改正前でも最高裁判決趣旨をいかした取り 扱いをしなければならない」と明言した。今後、同省の民事局などで対応を協議す る。 また、法務省は同日、全国の法務局、地方法務局に、同様の事例で国籍取得の届け 出があった場合は、受け取り拒否をせず、預かって審査するよう通知した。 (2008年6月5日22時47分 読売新聞) |
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婚外子国籍確認訴訟:最高裁判決 要旨(2008.6.5 毎日新聞) 婚外子(非嫡出子)の国籍取得訴訟で、国籍法3条1項を違憲とした4日の最高裁大法廷判決の要旨は次の通り。 ■多数意見 国籍法3条1項は、日本国民である父と日本国民でない母との間に出生し、父が出生後に認知した子について、父母の婚姻により嫡出子の身分を取得するという「準正」が生じた場合に限り、届け出による日本国籍の取得を認めており、日本国民である父から出生後に認知されたにとどまる子と準正が生じた子との間で、日本国籍の取得に関する区別が生じている。 国籍法3条1項は、血統主義を基調としつつ、我が国との密接な結び付きの指標となる一定の要件を満たす場合に限り出生後における日本国籍の取得を認めることとしたものと解され、前記区別を生じさせた立法目的には合理的な根拠がある。また、84年の同法の改正により同項の規定が設けられた当時は、日本国民である父と日本国民でない母との間の子について、父母が婚姻したことをもって我が国との密接な結び付きの存在を示すものとみることには相応の理由があったものとみられ、準正を日本国籍取得の要件としたことには、立法目的との間に一定の合理的関連性があった。 しかし、その後の我が国における家族生活や親子関係に関する意識の変化やその実態の多様化等を考慮すれば、日本国民である父と日本国民でない母との間の子について、父母の婚姻をもって初めて日本国籍を与えるに足りるだけの我が国との密接な結び付きが認められるものとすることは、今日では必ずしも家族生活等の実態に適合するとはいえない。 諸外国においては、非嫡出子に対する法的な差別的取り扱いを解消する方向にあり、我が国の批准した条約にも児童が出生によっていかなる差別も受けないとする趣旨の規定が存し、さらに、多くの国で、認知等により自国民との父子関係の成立が認められただけで自国籍の取得を認める旨の法改正が行われている。 このような国内的、国際的な社会的環境等の変化に照らせば、準正を日本国籍取得の要件としておくことについて、前記の立法目的との間に合理的関連性を見いだすことはもはや難しくなっている。 日本国民である父または母の嫡出子として出生した子はもとより、日本国民である父から胎児認知された非嫡出子及び日本国民である母の非嫡出子も、生来的に日本国籍を取得するのに、同じく日本国民を血統上の親として出生し、法律上の親子関係を有するにもかかわらず、日本国民である父から出生後に認知されたにとどまる非嫡出子のみが、生来的に日本国籍を取得しないのみならず、国籍法3条1項により日本国籍を取得することもできない。 日本国籍の取得が我が国において基本的人権の保障等を受ける上で重大な意味を持つことにかんがみれば、このような差別的取り扱いによって子の被る不利益は看過し難く、立法目的との間に合理的関連性を見いだし難い。とりわけ、胎児認知された非嫡出子との間の区別の合理性を我が国社会との結び付きの程度という観点から説明することは困難で、母の非嫡出子との間の区別も父母両系血統主義の基本的立場に沿わないところがある。 したがって、同法が、日本国民である父から出生後に認知された非嫡出子についてのみ父母が婚姻しない限り日本国籍の取得を認めないとしている点は、今日においては、立法目的との合理的関連性の認められる範囲を著しく超える手段を採用し、その結果、不合理な差別を生じさせているものといわざるを得ない。 以上によれば、日本国籍の取得に関する前記の区別は、遅くとも03年に原告が法相あてに国籍取得届を提出した当時には、立法府に与えられた裁量権を考慮してもなおその立法目的との間において合理的関連性を欠くものとなっており、合理的な理由のない差別となっていたといわざるを得ず、国籍法3条1項の規定が前記区別を生じさせていることは、前記時点において憲法14条1項に違反するものであった。 日本国民である父と日本国民でない母との間に出生し、父から出生後に認知されたにとどまる子についても、父母の婚姻により嫡出子たる身分を取得したことという部分を除いた国籍法3条1項所定の要件が満たされる場合に日本国籍の取得が認められるものとすることによって、同項及び同法の合憲的で合理的な解釈が可能となる。この解釈は、前記区別による不合理な差別的取り扱いを受けている者に直接的な救済のみちを開くという観点からも相当である。 この解釈は、国籍法3条1項につき、過剰な要件を設けることにより前記区別を生じさせている部分のみを除いて合理的に解釈したものであって、同項の規定の趣旨及び目的に沿うものであり、この解釈をもって、裁判所が新たな国籍取得の要件を創設するものであって国会の本来的な機能である立法作用を行うものとして許されないと評価することは当を得ない。 したがって、日本国民である父と日本国民でない母との間に出生し、父から出生後に認知された子は、父母の婚姻により嫡出子たる身分を取得したという部分を除いた同項所定の要件が満たされるときは、同項に基づいて日本国籍を取得することが認められるというべきであるから、原告は、法相あての国籍取得届を提出したことによって、日本国籍を取得したものと解するのが相当である。 ■反対意見 <横尾和子、津野修、古田佑紀各裁判官の反対意見> 家族生活や親子関係に関する国民一般の意識に大きな変化があったかは具体的に明らかでなく、家族の生活状況に顕著な変化があるとも思われないし、非嫡出子の増加の程度もわずかである。西欧諸国を中心に、非準正子にも国籍取得を認める立法例が多くなっているが、我が国とは社会の状況に大きな違いがあること等から、その動向を直ちに我が国における憲法適合性の判断の考慮事情とすることは相当でない。 準正により父が親権者となるなど父子関係が強固になる▽届け出のみにより国籍を付与する要件は明確かつ一律であることが適当である▽非準正子の場合には、我が国との結び付きの有無、程度を個別に判断する帰化制度によることが合理的であり、帰化の条件も大幅に緩和されている--などから、準正があった場合をもって届け出により国籍取得を認めることとすることには、十分合理性が認められる。 国籍法が、準正子に届け出による国籍の取得を認め、非準正子は帰化によることとしていることは、憲法14条1項に違反しない。 <甲斐中辰夫、堀籠幸男両裁判官の反対意見> 国籍法は、日本国籍を付与する要件を定めた創設的・授権的法律であり、同法が規定する要件を満たさない場合には、日本国籍の取得との関係では、白紙の状態が存在するにすぎない。出生後認知された非準正子について、同法は、届け出により日本国籍を付与する旨の規定を置いていないから、非準正子の届け出による国籍取得との関係では、立法不存在ないし立法不作為の状態が存在するにすぎない。 同法が立法不存在ないし立法不作為により非準正子に対して届け出による国籍付与のみちを閉じているという本件区別は、遅くとも原告が国籍取得届を提出した当時には、憲法14条1項に違反するものであった。 しかし、違憲となるのは前記の立法不作為の状態なのであって、国籍法3条1項の規定自体は何ら憲法に違反しない。したがって、同項の規定が、非準正子に対して日本国籍を届け出によって付与しない趣旨を含む規定であり、その部分が違憲無効であるとする多数意見の解釈は、国籍法の創設的・授権的性質に反する上に、準正子を出生後認知された子と読み替えることとなり、法解釈の限界を超えている。 同法が徹底した血統主義を法定しているとは解されず、同項が出生後認知された子に対し届け出による日本国籍を付与することを一般的に認めた上で非準正子に対しこれを制限した規定と解することはできない。したがって、同項の規定の解釈から非準正子に届け出による日本国籍の取得を認めることはできないから、原告側の上告は棄却すべきものと考える。 非準正子の届け出による国籍取得については、立法不存在の状態にあるから、その違憲状態を是正するためには、国会の立法措置により行うことが憲法の原則である。多数意見は、法律にない新たな国籍取得の要件を創設するものであって、実質的に司法による立法に等しいといわざるを得ず、賛成できない。 ■国籍法3条1項 父母の婚姻及びその認知により嫡出子たる身分を取得した子で20歳未満のもの(日本国民であった者を除く)は、認知をした父または母が子の出生の時に日本国民であった場合において、その父または母が現に日本国民であるとき、またはその死亡の時に日本国民であったときは、法務大臣に届け出ることによって、日本の国籍を取得することができる。 ■憲法14条1項 すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分または門地により、政治的、経済的または社会的関係において、差別されない。 (2008.6.5 毎日新聞) |
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