みどりの一期一会

当事者の経験と情報を伝えあい、あらたなコミュニケーションツールとしての可能性を模索したい。

本選でも人種の壁が問われる/オバマ氏が背負うもの・黒人候補が抱える難題(5/14)

2008-09-01 17:22:45 | 市民運動/市民自治/政治
米大統領選で、オバマ上院議員の
28日の民主党の指名受諾演説をテレビで見た。

さすが演説がうまくて、多くの人をひきつける。

演説だけだったら、オバマ氏だろう。

わたしも共和党は好きでないので、オバマ氏を応援しているが、
アメリカには根づよい人種差別が存在していて、
ことはそう簡単ではないようだ。


 社説2 勝つために語ったオバマ氏(8/30)
日本経済新聞 2008年8月30日
 
 米民主党大会で大統領候補に指名されたバラク・オバマ上院議員の受諾演説は、選挙に勝つことにこだわる内容だった。アフリカ系米国人が2大政党で初めて大統領候補になった歴史的事実に対する微妙な扱いにそれが見てとれた。
 オバマ氏は「変革」を掲げる。それを象徴するのは、ケニア人男性とカンザス州出身の白人女性との間に生まれた自身が大統領候補になった事実だが、それを強調する戦術は、選挙戦のなかで有利にも不利にもなりうる。
 このためか、受諾演説の冒頭に近い部分でオバマ氏は、4年前の民主党大会での自身の演説を振り返る形で比較的あっさりと触れた。さらに締めくくりの部分で「私には夢がある」の一節で知られる公民権運動の指導者キング牧師の有名な演説に言及したが、その程度にとどめる計算が感じられる扱いだった。
 11月の一般投票に向け、オバマ氏に必要なのは、ヒラリー・クリントン上院議員との激しい予備選でできた民主党内の亀裂の修復である。クリントン支持者のうちオバマ支持になったのは半数以下とする世論調査の結果もあり、受諾演説は修復を目指す重要な機会とされていた。
 したがって演説の冒頭部分で大会運営関係者に続いてクリントン氏の名前を挙げて謝意を表した。共和党が来週の党大会で大統領候補に正式に指名するジョン・マケイン上院議員に対する批判にも多くの時間を割いた。いずれも11月に勝つために不可欠と考えたからだろう。
 米大統領選挙の見通しを立てるうえでいくつかの通説がある。例えばそれぞれの候補者の支持率は党大会の後に跳ね上がるとする党大会効果である。9月の第1月曜日の米国の祝日「労働の日」明けの世論調査の数字で11月の結果がわかるとする説もある。
 オバマ氏の支持率は党大会効果で上昇するだろうが、共和党のマケイン氏がオバマ氏を抜く結果が出た民主党大会前の世論調査もある。共和党大会は「労働の日」に始まる。党大会効果を考えれば、今回は「労働の日」明けの世論調査を見ても11月の結果を予測できないのは確かだろう。


毎日新聞が予備選のときから、一貫して、
この人種差別の視点で、問題を取り上げているので紹介したい。


余録:ブラッドリー効果とオバマ効果
毎日新聞 2008年8月31日

 白人と黒人の対決となった米国の選挙で白人候補の選対本部長が言った。「世論調査で5%負けていても、こちらが勝てる」。黒人への偏見を隠すため、世論調査では黒人を支持すると答え、実際には白人に投票する白人の有権者がそれくらいはいるからだ、と言う。人種問題を選挙に持ち込んだ差別発言だと批判され辞任した▲今年の大統領選挙ではない。1982年のカリフォルニア州知事選挙だ。黒人候補のトム・ブラッドリー・ロサンゼルス市長は投票日の出口調査でもリードした。「当選」と速報した新聞さえあった▲だが、わずかの差で敗れていた。選対本部長の読みが当たったのだ。黒人候補の実際の得票が調査の支持率より低く出る現象を、それ以来「ブラッドリー効果」と呼ぶ▲バラク・オバマ氏が民主党の大統領候補に指名された。ブラッドリー効果はいまだにあるのか。米民間機関ピュー調査センターによると、白人が多い州の予備選でオバマ氏の得票が世論調査より減った例があり、効果は存在した▲しかし、世論調査より実際の得票が高い逆転現象もあり「逆ブラッドリー効果」と命名された。アラバマなど黒人が多い州だ。世論調査ではオバマ支持と言えず、実際は投票した黒人がいたのだろうか。白人の裏返しの答え方をする心理に差別の歴史がどう反映しているのか▲米国史で人種という概念は肌の色に優劣を持ち込み、先住民や黒人の差別を白人が正当化する理由に使われた。一方、60年代の公民権運動の成果で人種差別は消えたという社会の建前もある。人々の心の奥底にある戸惑いと揺らぎはどんな「オバマ効果」につながるだろう。



社説:オバマ氏指名・本選でも人種の壁が問われる
毎日新聞 2008年8月30日 

 こんな日が来るとは、昨年までだれも想像できなかっただろう。8万人の熱狂的な聴衆の前で、民主党の大統領候補指名を受諾し、人々を奮い立たせたのは47歳の黒人だった。バラク・オバマ上院議員の指名はそれだけで米国史に新しいページを開く事件だ。
 黒人がこの国の政治システムで指導者として欠かせない役割を果たす時代が来た。絶え間なくみずからを刷新し続け、自己像を作り替えていく米国の力強さをみる。
 今年の大統領選は民主党に有利な条件がそろっている。ブッシュ大統領の支持率は低迷し、サブプライムローン危機やガソリン価格値上がりで経済は悪化している。長引く戦争や苦しい生活への不安と疑問が社会に広がる。
 世論調査によると民主党支持は51%で共和党(38%)を13ポイントも上回る。現政権への失望感は大きく、政権党交代の理由は十分にある。
 ところが、オバマ氏は優勢とはいえない。共和党候補に来週、正式指名されるジョン・マケイン上院議員に全米レベルの支持率調査では、ほぼ同率に追いつかれた。調査機関によると、州ごとの選挙人の獲得予想数でオバマ氏はわずかにリードしているが差は縮まっている。両候補互角の州は10以上あり、大接戦だ。
 なぜオバマ氏は有利な条件を生かせないのだろう。予備選で訴えた「変化」だけでは通用しないとか、政策のあいまいさを批判されたとか、さまざまな解説がある。
 表面には出にくいが底流にある理由は、「人種」ではないか。たしかに民主党の予備選では人種の壁は乗り越えられた。だが、いざ大統領当選の可能性が現実となると、後押しをためらう心理が働く米国人がいるのかもしれない。
 人種差別主義者を自認する米国人はほとんどいない。しかし、政策や能力、人格などの問題点を探し、オバマ氏に投票しなくていい理由を見つけ、なぜか安心する人はいるだろう。接戦州で有権者の5%がそういう投票行動をとるなら、オバマ氏は苦戦する。
 決して正面から取り上げられないが、人種は隠れた争点といえる。黒人を大統領として受け入れる準備が米国人にあるかが問われる選挙となるだろう。
 指名受諾演説でオバマ氏は「私が最も大統領候補らしくない候補であることはわかっている。典型的な名門でもない。だが全米で何かが揺れ動いているから、私はここにいる」と述べた。時代が見つけた新しい指導者の自負と挑戦がうかがえる。
 主流ではない少数派の初の候補として、マケイン氏と3回のテレビ討論で政策を競いあってほしい。次期政権の動向に大きな影響を受ける世界中の人が本選まで約2カ月間、両候補の政策論争と米国民の選択を見守っている。



【関連記事】

特集ワイド:オバマ氏が背負うもの 黒人候補が抱える難題

「夕刊特集ワイド」 毎日新聞2008年5月14日夕刊

 ◇格差と差別に、米社会の本音と建前
 米大統領選予備選で当初本命だったヒラリー・クリントン上院議員(60)を代議員数でリードし、民主党の指名を固めつつある黒人候補バラク・オバマ上院議員(46)。米国史上初めての黒人大統領への期待は膨らむが、黒人であるがゆえの不利もある。オバマ氏が背負うものとは何だろうか。【國枝すみれ】

 ◇隠れた偏見、これから--上坂昇・桜美林大教授
 ◇支持者に歴史作るカタルシス--久保文明・東大教授
 ★アンクル・トム攻撃
 オバマ氏は今までの黒人政治家と全く違う。桜美林大の上坂昇教授(アメリカ論)は「従来の黒人政治家は、黒人の権利を闘いとった公民権運動時代に原点を持ち、黒人の利益を代表し、白人社会に異議申し立てすることで、支持基盤を固めてきた。だが、オバマ氏は黒人の代表として政界に登場したわけではない」と指摘する。
 実際、オバマ氏は今回の選挙戦で「白人と黒人、金持ちと貧しい人、保守とリベラルの懸け橋になる」と主張。米紙の取材に「私は政治的点数稼ぎに自分の人種を使う人間ではない。自分が黒人だからという理由だけで動きたくはない」と答え、黒人から「本物の黒人ではない」と批判されたこともある。
 米国では、黒人が白人に協力すると、「アンクル・トム(白人に迎合する黒人)」と攻撃されることがある。オバマ氏はこぼしている。「黒人の政治家であるためにはなんらかの形で白人の気分を害さなければならない。白人と連携しようとすると、黒人から白人におもねっていると非難される」

 ★血の一滴ルール 
 オバマ氏が黒人と白人との間を揺れ動くのは、その生い立ちにある。父はケニア人、母は白人で、両親が離婚したため、母と祖父母の白人家庭で育てられた。コロンビア大とハーバード大法科大学院を卒業し、米国の主流文化を吸収した。
 米国にはかつて「ワン・ドロップ・ルール」という決まりがあった。1863年の奴隷解放宣言まで、一滴でも黒人の血が混じった人間は黒人とみなされ、奴隷とされた。現在でも、混血は黒人として扱われる傾向があり、オバマ氏も例外ではなかった。
 オバマ氏は自伝で「自分を偽らないと、白と黒のどちらにも所属できない恐怖にとらわれた」といい、「青年期には麻薬に浸ったこともあった」と告白している。
 オバマ氏の自分探しは、シカゴの貧困地区で育った、いわゆる「本物の黒人」であるミシェルさんと結婚したことで決着したようだ。彼女は黒人として生まれたことを「負債」とせず、プリンストン大、ハーバード大法科大学院と進学、弁護士になった。オバマ氏は彼女を「私の心のよりどころ」と呼んでいる。

 ★4分の1は貧困層
 1964年に公民権法が制定され法的立場は平等になったが、経済格差は依然大きい。米政府の統計によれば、黒人の4人に1人が貧困生活を送り、7割が未婚の母から生まれる。黒人の高校退学率は白人の2倍近い。囚人約220万人のうち4割が黒人だ。
 アジア系やアフリカからの新移民が経済力を高めていくなか、米国生まれの黒人が低迷しているのはなぜか。人種差別、公教育の崩壊、麻薬や犯罪のまん延。いろいろな理由があるが、多くの白人は黒人自己責任論に傾いている。上坂教授は「60年代は白人も人種差別をしたという罪の意識があり、差別解消に努力した。だが今は、もういいかげんにしてほしい、が白人の偽らざる気持ちだ」という。
 3月末のNBC世論調査で、米市民の72%が「米国は黒人大統領候補に投票する準備ができている」と回答した。 しかし、上坂教授は、本選になれば「米国人の隠された偏見がじくじくとしみ出てきてオバマ氏は白人である共和党のマケイン氏に負ける」と予想、「暗殺が企てられる可能性もある」と心配する。本音と建前を使い分けるのは米国人も同じというわけだ。

 ★夢を見たい支持層
 一方で、黒人だからこそ熱烈に支持する白人もいる。東大の久保文明教授(アメリカ政治)は「米国人はオバマ氏を支援することである種のカタルシスを感じている」と分析する。
 オバマ支持者は反戦団体などリベラル左派。民主党内で左の原点を取り戻そうとしているグループ。一方で、オバマ氏は無党派層や共和党穏健派の支持も得ている。久保教授は「支持者はオバマ氏の選出自体が目的で、政策はさほど関係ない。黒人に投票することで、新しい歴史を作ることに参加できると感じ、いい気持ちになれるのだ」と言う。
 米国の世論調査会社「ギャラップ」の4月の調査によると、大学を卒業していない白人はクリントン支持56%、オバマ支持35%だが、大学以上の学歴がある白人の場合、オバマ支持56%、クリントン支持37%だ。
 「インテリ層や高所得層ほど『米国は変わった』『米国にも良いところがある』というメッセージを世界に発信したいと思っている。夢を見たい人はオバマ支持。明日の3度の食事が心配な人がクリントン支持」(久保教授)なのだ。

 ★直面する難題 
 私は米国特派員時代、黒人居住区に何度も取材にいった。道路に麻薬中毒者が倒れている。高校生が射殺される。無料学校給食のリンゴはしなびていた。だから、白人たちが「差別はない」と強弁するとき、怒りを覚えた。一方で、黒人にも問題があるのは事実と感じた。子どもたちは黒人なまりの英語を話し、一般的な発音の英語を「アカデミック・イングリッシュ」と呼び、「白人的」としてばかにしていた。彼らに未来はあるのか、と暗たんたる思いがした。
 05年6月のギャラップ調査によると、「マイノリティーの地位向上のため政府が大きな役割を果たすべきだ」と考える割合は、白人26%、黒人71%。もう差別はなくなったと考える白人と、そう思わない黒人。その差は大きい。
 オバマ氏は、オレゴンなど2州で予備選が実施される5月20日、一般代議員の数が過半数に到達するのは確実として、事実上の「勝利宣言」に踏み切る意向を表明している。民主党の指名を獲得したら、次は、「信念の男」として知られ、白人労働者層に人気がある共和党のマケイン候補と対峙(たいじ)することになる。
 オバマ氏は人種問題という難題を抱え、薄氷の上を今後も歩かざるを得ないのだ。
(毎日新聞 2008年5月14日 東京夕刊)


アメリカは変わることができるのか、
アフリカ系米国人が大統領になることができるのか、

あと2ヶ月、目がはなせない。


写真をクリックすると拡大。その右下のマークをクリックするとさらに拡大
最後まで読んでくださってありがとう
「一期一会」にクリックを 
 明日もまた見に来てね
 


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 「太王四神記」にはまった(笑)。 | トップ | 速報!「福田首相、辞任へ」... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

市民運動/市民自治/政治」カテゴリの最新記事