熟年新米弁理士のひとり言

平成18年に59歳で弁理士試験に合格した企業内弁理士です。弁理士試験、企業での知的財産業務について、気軽にお話します。

辺野古訴訟判決

2016-09-22 19:39:53 | Weblog
沖縄タイムスの連載記事に、「木村草太の憲法の新手」があり、毎回読んでいます。

木村草太さんは、憲法学者、首都大学東京教授で、テレビ朝日の報道ステーションのコメンテーターとしても有名ですね。

40回のテーマは、「辺野古訴訟判決 県の主張に応えていない」です。

この判決には、私も唖然としました。

おそらく法律を勉強したことがある人は、「何だ子の裁判官は」「本当に司法試験に合格しているのか」というような疑問を持ったでしょうね。

判決文の抜粋です。

「全ての知事が埋立承認を拒否した場合、国防・外交に本来的権限と責任を負うべき立場にある国の不合理とは言えない判断が覆されてしまい、国の本来的事務について地方公共団体の判断が国の判断に優越することにもなりかねない。これは、地方自治法が定める国と地方の役割分担の原則にも沿わない不都合な事態である。よって、国の説明する国防・外交上の必要性について、具体的な点において不合理であると認められない限りは、被告はその判断を尊重すべきである」

この裁判官の見解によれば、米軍基地が嫌悪施設だと認めつつ、「みんな嫌がるから、地元の話など聞いてられない」ということになり、これでは、安全保障に関する事柄は全て、自治体の意向を無視して、国が勝手にできることになってしまいます。

憲法が、地方自治を保障する意味を見直さねばならないのに、この裁判官はこの重要な視点が完全に欠落しています。

国地方係争処理委員会は、話し合いによる解決を求めていたのですが、それすら無視しているという驚くべき暴挙判決です。

この判決を基礎にするならば、国は、話し合いの場を設けるインセンティブがなくなりますね。

なぜならば、何もしない方が、国の主張が通りやすいからです。

裁判官が国家権力の横暴を支持してどうするのか。

司法の信頼が完全に崩れ去った判決です。

沖縄に基地が集中しているのを知りながら、「仕方ない」と国民が思っていたのでは、地域間の不平等は解消されません。

米軍基地による恩恵を受けているのは、日本国民全体なので、「本当に沖縄でなければならないのか」を、一人一人が考えていくことが必要です。

つまり、基地の設置場所の決定は、政府任せにしないで、全国民の代表が集う国会で、辺野古でなければだめな理由について、議論を尽くすべきでしょう。

憲法92条は、「地方自治の組織及び運営に関わる事項」は、「地方自治の本旨」に従い、法律で定めなくてはならないと規定しています。

この条文を素直に読めば、米軍基地を設置する際には、どの地方公共団体の自治権を、どのような範囲で制限するのか、「法律」で決定すべきであることになります。

沖縄県は、今回の訴訟で、埋め立て地を基地として運用する根拠法が整備されていないのに、埋め立てを行うのは不合理だと主張したのですが、判決は、辺野古基地建設に伴って生じる自治権の制限は「日米安全保障条約及び日米地位協定に基づくものであり」憲法上問題がないと言い切りました。

しかし、日米安保条約や地位協定はあくまで「条約」であり「法律」ではありません。

条約があったからといって、憲法92条の要請を満たせるはずがないことは明らかです。

今回の判決は、ほとんど国の主張の引き写しで、沖縄県の正当な主張に全く応えていません。

これで、「公正に判断した」と裁判官の良心に誓って言えるのか、大いに疑問ですね。

最高裁には、公正で理論的な判決を期待します。





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