353億円超の巨額の財政赤字に陥った北海道夕張市の破綻は、2006年当時、日本中に衝撃を与えました。
あれから10年、財政再建は順調に進んでいるものの、急激な人口減少や超高齢化など立て直しへの課題は多いようです。
財政再建に取り組んだ35歳の若き市長、鈴木直道氏は「夕張は日本の縮図」「夕張の将来は日本の将来」と断言しています。
同氏は、東京都庁の職員で、破綻後に夕張市に派遣されていましたが、東京に戻った後の11年の市長選の際に、夕張市民から出馬してくれと言われ、出馬しました。
歴史上、財政再建団体になった自治体は885以上あるのですが、夕張が世間にあれだけの衝撃を与えたのは、赤字額の圧倒的な大きさです。
1年間行政サービスを何もしないで全て借金返済に充てるとして、それを100%とすると、夕張の次に赤字額が大きかった自治体でさえ133%でしたが、夕張は801%だったのです。
133%の自治体は9年で返済を終えました。均等割りで年間15%の返済です。
これに対して夕張は返済期間20年、均等割りで年間40%を返さなければいけません。
そんな緊縮財政、「ミッション・インポッシブル」だと言われたそうです。
確かに、無理ですね。
予定通り95億円返済し、いざという時のための財政調整基金も一定程度積みましたのですが、一方で、その副作用として人口が3割以上減り、高齢化率が40%から49%に上がりました。
260人いた市の職員は100人になり、残った職員は年収ベースで最大40%減、市長は70%減の月額25万9000円、退職金も100%減です。
議員は18人を半分の9人にして、報酬を40%減。
法律上の上限まで市民税を上げ、公共施設の使用料等も。小学校は6校を1校に、中学校は3校を1校に統廃合、市の出先機関も5カ所を1カ所にした値上げ、図書館や市民会館は廃止、各種団体やイベントへの補助金も全廃です。
凄まじい支出カットです。
夕張は、人口が12万人弱で北海道で7番目の大都市でしたが、今は9000人。
しかし、当時の都市構造が維持されたままです。
これがいけませんでしたが、破綻したことによって思い切った歳出削減が実施できたそうです。
都市構造を変え、「コンパクトシティー」を目指すという観点では、夕張は日本で最もそれを進められる可能性がありますね。
人口減少に歯止めをかける努力はしなければいけませんが、厳しいリスクを見つめることを放棄してはいけません。
夕張の将来は日本の将来でもあります。
国全体を考えるということで言えば、子育て政策を自治体間競争にせず、国がもっと主導的に決めて欲しいと訴えていました。
市長は「逆再生」と言っています。
経済成長期は道路や橋、建物をどんどん整備してきたが、これからは、縮小しながら、国やまちを作り変えていかなければいけません。
成長期は行政と利益を上げる人が同じ方向を向いていましたが、これからは、行政はかつて利益を得ていた人たちを説得していかなければなりません。政治的エネルギーとしては、ものすごく大変です。
選挙で選ばれる首長や政治家は、責任が人生として残っていく仕事です。
A案とB案があって「A案で行く」と決断したら、5年後、10年後にその判断がどうだったのか、決定者自身もそれを背負って生きていかなければなりません。
やりがいがあるけれど、大変な仕事でもある。
そういう苦しみを感じない人はならない方がいいと思います。
この市長の言葉をどう受け止めるのか。
政治家は真剣に考えてほしい。
有権者も人気投票ではなく、政策実行力やお金に執着しない等の候補者の中身で判断してほしいものです。
都知事選挙、参議院選挙で、有権者の覚悟が問われています。
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