今週に梅雨が明けるかも、という天気予報士のコメントがあった。現実は、明けるどころか、梅雨前線が居座って、大変な雨がもう一週間以上続いている。線状降水帯、大雨特別警報という言葉が、頻繁に飛び交い、洪水による大災害が九州に続いて岐阜でも起こっている。被災地の人々には、心からのお見舞いを申し上げる。
漱石の『三四郎』にお婆さんが「昔は雷さえ鳴れば梅雨があけるが、近ごろじゃそうはいかない」という話が出てくるが、明治の時代でさえ、梅雨が時代とともに変化していたらしいが、今日この頃では、雷どころか、大雨の大災害を経なければ梅雨はあけない。いつの時代でも、梅雨があけてさっぱりした青空を願うのは人間に人情というものだ。梅雨明けの大雨を、「送り梅雨」と呼んで、人々は梅雨明けを待った。
「梅雨明け十日」という言葉がある。梅雨が明けると、十日ほどは安定した晴天が続くということを表している。山登りをする人たちは、この日が来るのをひたすら待ち詫びる。これを待ちきれずに雨の中で沢登りをして流され、行方不明になった人がいる。洪水で大災害が起きているなかで、大雨の予報のなかを強行する山行は理解しかねる。返り梅雨というのは、梅雨明けの雨、送り梅雨のあとにぶりかえして来る梅雨である。今年は返り梅雨と言えるが、大きな災害を伴った前例のない返り梅雨である。