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ダリアが咲くと、ああ今年もこの季節になったか。それにしても、一年の巡りは早いと思うのは、自分ばかりではないらしい。年を重ねると、時は怒涛のように流れて、大暑になる前にすでに秋を感じている。よく言えば、季節の先取りとも言える。岩波文庫の名句365という冊子がある。パラパラとページを繰って拾い読みしていると、ツルゲーネフのこんな言葉が目に入った。
「時の過ぎるのが早いか遅いか、それに気づくこともないような時期に、人はとりわけて幸福なのである。」
この言葉を信じれば、それは自分にとっては、何かに打ち込んでいた時期にあたる。すでにその時期は遠い過去になっている。しかし、時はそれほど単純なものでもない。死と隣り合わせのような暑い夏をやり過ごすには、時の流れは速い方がいい。極寒のなかに閉じ込められて人が求めるのは、早く春が来てほしいということだ。夏が過ぎていくことに、淋しさを感じることもまた事実だ。
さらば、あまりに短かかりしわれらの夏の烈しき光よ!
これはボードレールの詩の一句。押しとどめることのできないのが時の流れであり、そこに生きる限りある命は、時の流れがその形を変えて行く。