白砂青松という慣用句があるように、海岸に生える松はの景色は日本の景色のシンボルである。川が運んだ土砂が海水に打ち寄せられるうちに白い砂となり、松は自生したものもあるが、砂防林として植林されたものが多い。植林したものの多くはクロマツである。一方マツタケで知られるアカマツは北の方の内陸に多く見られる。冬になっても葉を落とすことのないマツは、古くから日本人に愛されてきた。『和漢朗詠集』の源順の詩に
十八公の栄は霜の後に露はれ
一千年の色は雪の中に深し
とある。十八公は松の一字を分解して三字にしたもので、松の良さは霜が降りても葉の色を変えないことで他の木々と違いが分かる。雪のなかにあっては千年もの間色を変えない。
昔の街道には松を植えて目印としとしたものが、今もなお残されている。町並み木の松を見ると、そこを行列して「下へ、下へ」と通って行った参勤交代の武家の一行が彷彿とする。皇居前の大芝生広場には、2000本ものクロマツがある。江戸城を築城する前は、この辺りは入江となっていて自生のクロマツがあった。明治以降になって植栽されはじめ、昭和15年頃の整備事業によって現在の姿になった。松は常緑のほかに、葉が二葉になっていて夫婦和合という意味もあるらしい。庭の隅で大きく枝を広げる松の姿にはやはり気品を感じる。