常住坐臥

ブログを始めて10年。
老いと向き合って、皆さまと楽しむ記事を
書き続けます。タイトルも晴耕雨読改め常住坐臥。

雪の別れ

2021年12月26日 | 源氏物語
天気jp.を開くと、今日現在の積雪量ランキングがある。
  • 1. 青森県 酸ケ湯198cm
  • 2. 道北 幌加内137cm
  • 3. 道北 朱鞠内125cm
  • 4. 山形県 肘折121cm
  • 5. 道北 幌糠110cm
生れた北海道と住み馴れた山形の肘折の雪は、その中に身を置いた経験がある。北海道の印象は、雪の深さもさることながら、気温の低さがそれに加わる。朱鞠内は深川から、ローカル線で山手に入る、人造湖のある地だが、夏湖畔でキャンプをし同級生と泊まった記憶がある。食材を持って、焚火でカレーライスを作った。友達と一緒であったが、煮炊きをしたのは人生最初の経験であった。この季節に、雪の便りが届いて、懐かしい記憶がよみがえる。

肘折温泉は20年ほど前、2家族で正月を3泊するのが恒例であった。県内で一番、日本の豪雪期でも3本の指に入る雪の温泉は格別であった。自炊に毛の生えたような食事でも、上げ膳据え膳が妻たちの喜びであった。夜が明ける前から除雪の音に目が覚め、一番風呂のついでに川が雪に埋もれながら流れる様子はここでなければ見れない雪景色であった。足跡のない川辺の雪の積もった岸に足跡をつけて歩くのは格別の楽しみであった。

秘境の雪は神秘的で幻想的だ。源氏物語で別れの悲しい場面には雪景色が背景として描かれる。明石の君は、源氏との間に生れた姫君の立后への道が開けるよう、正妻の紫の上の養子とすることに同意して、悲しい別れの場面が訪れる。

「雪、霰がちに、心細さまさりて、あやしくさまざまにもの思ふべかかりける身かなとうち嘆きて、常よりもこの君を撫でつくろひつつ見ゐたり。雪かきくらし降りつもる朝、来し方行く末のこと残らず思ひつづけて、例はことに端近なる出でゐなどもせぬを、汀の氷など見やりて、白き衣どものなよよかなるあまた着て、ながめゐたる様体、頭つき、後手など、限りなき人と聞こゆともかうこそはおはすらめと人々も見ゆ」(源氏物語巻4・薄雲)

雪のなかで白い着物の萎えたのを重ね着して、もの思いに沈んでいる明石の君の上品で美しい様子は、この世のものとも思えない。涙ながらに読んだ歌

雪深み深山の道は晴れずともなほふみ通へ跡絶えずして
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