常住坐臥

ブログを始めて10年。
老いと向き合って、皆さまと楽しむ記事を
書き続けます。タイトルも晴耕雨読改め常住坐臥。

岩部山三十三観音

2022年11月17日 | 登山
今月最後の山行は、南陽市小岩沢岩部山三十三観音である。この山は、古くから石切場として、石材を切り出しが行われていた。江戸の中期、この地に住む金毛和尚の発願で、山中の岩に観音像三十三体を彫り、御詠歌をつけて一山で悩む人々を救う聖地とされてきた。石に彫られた像は、年月を経て風雨による損耗もみられるが、その温顔はいまなお、対面して温かさを感じる。ゆっくり回って3時間余で三十三観音を礼拝できるが、古い時代の民衆の信心を追体験することができる。

金毛上人は、西国三十三観音詣でを行い、この山に観音像を刻んで、衆生が一日で苦しみから解放される霊験を施そうとしたのである。我々の一行は、石切り場の跡から三十三へ向かい、山中にある三十三番を皮切りに、ジグザグに切られた道を岩部山山頂へ向かう。ここは伊達の岩部山館跡がある。同行した城研究家のMさんが、兵士を駐屯させた平場の館跡への道に、幾層のも重なる土塁を確認された。観音は館跡とは無関係に散在する岩の一つ一つに彫られている。岩部山は岩のあるやまだが、この山の石を切り出し石材として利用してきた。山中には巨石や洞穴などが散在、観音像を彫る場所に不足はない。

六観音というのがある。様々な形に姿を変え観音の慈悲の広大さを示す、十一面観音、千手観音、不空羂索観音、馬頭観音、如意輪観音。そして姿を変えずもっぱら息災、除病に霊験のある聖観音の六体のことだ。この六観音はそれぞれ地獄、餓鬼、畜生、修羅、人間、天上の六道を支配し、ここで苦しむ人間を救う六道抜苦の菩薩として信仰された。岩部山にはこの六地蔵が三十三体彫られているが、一行は岩部山入り口のジグザク道を、天狗岩から山頂館跡へ向かう。途中にある二十一番が聖観音である。菩提山穴太寺と書きつけがある。御詠歌は「かかる世に生まれあふ身のあな憂しやと思はで頼め十声一声」

岩部山を下り、尾根を引く南の山に一番がある。那智山青岩渡寺に続いて如意輪観音の記載。御詠歌は「補陀落や岸うつ波は三熊野の那智のお山にひびく滝津瀬」。補陀落とは南インドのポータラカ山。観音が住む補陀落浄土として信仰を集めた。死者は阿弥陀如来の浄土に往生し、成仏する。西国三十三観音の寺社を巡って修行した金毛和尚は、この地に巡礼地の観音を彫ることで、一日にして観音巡りを成就させ、飢饉に苦しむ衆生を救おうとしたのである。山中を巡ること4時間、ゆっくりお詣りし、写真を撮り歓談して、秋の一日を楽しんだ。参加者6名、内男性2名。
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