面白山の山行から3日。秋晴れを機会に、蔵王山の秋を訪ねた。坊平の仙人沢から中丸山を経由して蔵王熊野岳までの7.3㌔。標高差852m、実動5時間のタスクであった。面白山で少し足が馴れたのか、休み休み気の楽な山行だった。今回はルート企画者の好意で刈田駐車場に車をデポ、下りはほとんど車での移動となった。それにしても蔵王の秋は哀切きわまりない。害虫に侵されて枯れたアオモリトドマツの哀しい姿を見る一方で紅葉が始まっていた。熊野のガレ場のはわずかに咲き残ったコマクサ。立ち込めた霧が晴れていくなかの山行であった。熊野岳から見るお釜のコバルトブルーはかっての光景をそのまま残していた。自分の足でここまで来るのはもう最後か、という考えが頭をよぎる。しっかりととその景色を心眼に焼き付けておこうという気持ちが先行してカメラのシャッターを切る機会が激減している。
陸奥をふたわけざまに聳えたまふ
蔵王の山の雲のなかにたつ 斎藤茂吉
熊野山に頂上には茂吉の山上歌碑があった。家族連れやツーリズムの観光客、なかには外人の姿が目につく。軽く会釈をすると微笑んで挨拶を返してくれる。アメリカ人であろうか、彼らのふるまいも山中で地元の人たちと交流しようとすることを示している。外人客が日本の自然を楽しんでいる姿はみていて清々しい。頂上の気温は16℃、少し風がある。登ってきて汗をかいた肌に心地いい秋風だ。山道は雨と流水で削られて跡が生々しい。思わず能登で孤立している被災地の惨状が目に浮かぶ。秋の田は黄金色に輝き、収穫のこの1週間という気がする。