ある日、ミモロは、トコトコと京都の町中を散策していました。「京都って、名所旧跡をめぐるのも楽しいけど、町歩きが面白いんだよね~」と、折を見ては、町歩きを楽しむミモロです。
「あれ~こんなところに本屋さんがある~」と、二条通と高倉通の交差点近くで立ち止まりました。
「ブック&ギャラリー レティシア書房」という看板がかかる、小さな本屋さんです。
フローリングの床、木製の本棚など、外からは、やさしく陽光が注ぎます。
「どんな本があるのかな?」ミモロは、棚を見上げます。
京都の町中には、大きな本屋さんもありますが、こういう小さな本屋さんも京都では、とても人気があります。
小さな本屋さんの特徴は、そのお店のオーナーさんの個性が発揮されていること。
話題のベストセラーなどは、並んでいません。
「なんかいろんな本がある~」
小説、歴史書、エッセイ本、さまざまなジャンルの本が、並びます。古本も、新刊本も…
本のタイトルだけを見ていても、時間が過ぎてしまいそう…。
「あ、絵本もある~」子供のころ読んだことがある児童書や絵本も…
「あの~この本屋さん、いつできたんですか?」とミモロは、店の奥に座る店主の小西徹さんのそばへ…。
「はい、ちょっと待ってね~。え?いつって?そうもう3年くらいになりますよ」と。以前は、大きな本屋さんに勤めていらしたそう。自分の本屋さんをもつ夢を実現したのが3年前。
「どういう基準で本選んでるんですか?」とミモロ。
「う~ん、そうね~。読むだけじゃなくて、そばに置いて、なにか語りかけてくれる本でしょうか?」
最近は、書籍のデジタル化が進んでいます。
私自身も古い人間なのでしょうか、デジタル画面では、読む気になれません。
やはり手にとって、その本の装丁、紙の感じ、文字の配置など、本の内容以外の部分の魅力もいろいろあるもの。
デジタルだと、本の内容や筋のみを追うことになりがち。そこに作者の個性や思いの伝わり具合が希薄になるような気がしてなりません。
小西さんがおっしゃるそばに置いておきたくなる本とは、ふとページをめくり、読み返したり、人生のさまざまな場面で、心に触れてくる本ではないかと…。
「そういうこと、デジタル書籍じゃできないね~」とミモロも思います。
もし絵本が、デジタルだったら、何度も読み返して、表紙や角がボロボロになる…そんなことはありえません。でも、そのボロボロになった状態こそ、子供のころの思いなのです。
「ここにいると落ち着くね~」店内に流れるBGMが、いっそう心地よさを誘います。
CDもいろいろあります。懐かしいものも見つかります。
「あ、ブースカがいる…」本棚の上に懐かしいおもちゃ、ミシン、カメラなどもさりげなく置かれています。
「このブースカなかなか貴重なものらしいですよ~」と小西さん。昭和が薫る品々に、心が和みます。
「昭和と言えば、これ大変貴重なものなんです」と見せてくださったのは、「暮らしの手帖」の1巻から100巻までの完本。
「バラバラで売られていることはありますが、完本は、なかなかありません」と。
なんでも、女子寮に放置されていたもので、引き取り手がなく、ここに…。
記念すべき1巻は、1948年に発行されたもの。最初のころの表紙は、「暮らしの手帖」を創刊した花森安治さんが描いた絵です。
「暮らしの手帖」は、女性誌のパイオニア。広告を取らず、独自の立場で、商品の品質などをチェックしたことでも知られます。
「戦後間もない時代なのに、この表紙すごくおしゃれ~」とミモロ。
物のない時代、そのヨーロッパの町を思わせる表紙は、女性たちの憧れだったのでは?
「はじめのころは、『美しい暮らしの手帖』って、美しいという文字が入っているんです」と小西さん。
そう、『美しい暮らし』それこそが、当時の夢なのです。
「なんか今見ても、すごくおしゃれなファッションもあるね~」と、驚くミモロ。
カタログのように写真ばかりの現在の雑誌とは違い、文字とイラストだけの雑誌です。テレビもあまり普及していなかった時代、雑誌を読むことのときめきは、いかばりだったでしょう。
「あ、川端康成だって~」。そう、有名な作家さんたちも執筆しています。
ミモロは、もっと読みたくてたまらない様子…。
さて、この書店の特徴のひとつに、リトルプレスという自費出版本や編集プロダクションなどが独自につくった本を多数扱っていること。
書店の入り口近くの一番目立つ棚に平積みにされています。
「全国のリトルプレスがあるですよ~。なかなか素晴らしい内容です」と小西さん。
「いつかミモロちゃんも本出版したら?できたらお店に置きますよ」と小西さん。
「お店に置かれるような、すてきな本が作りたい…それミモロの夢なの…」と、ミモロ本への意欲を高めるミモロです。
「また、遊びに来ます~」とミモロ。「ここにいると、時間が経つの忘れちゃいそう」慌ててお買いものへ急ぎます。
*「ブック&ギャラリー レティシア書房」京都市中京区高倉通二条下ル瓦町551 075-212-1772 12:00~20:00 月曜休み
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