友々素敵

人はなぜ生きるのか。それは生きているから。生きていることは素敵なことなのです。

「宮脇保・楚 勉二人展」

2008年09月08日 22時26分00秒 | Weblog
 昨日は岐阜県美濃市へ出かけた。『宮脇保・楚 勉 二人展』の最終日だったので、どうしても行きたかった。この展覧会は、「半世紀の時を経て先生と教え子の二人展」である。宮脇先生は美濃中学校で教えていて、楚さんの3年生の時の担任であった。楚さんの話では、中学3年の時はもう進学コースと就職コースに分かれていたそうで、彼は就職コースにいたから英語の授業は無かったので「英語は全く苦手です」と言う。

 おそらく絵が好きで、実際上手だったのだろう。宮脇先生にお話を聞くゆとりが無かったのでわからずじまいだが、楚さんの名古屋市立工芸高校の受験に、宮脇先生は付き添って行ってくれたそうである。「僕一人のために行ってくれたのですから、今で言えばひいきですよね」と楚さんは笑うが、それほど彼の才能を見抜いていたのだと思う。楚さんは新聞販売店で働きながら高校を卒業し、三菱重工名古屋航空機製作所に入社した。

 1944年生まれだが、経歴を見ると1学年上のようだ。名古屋のデザイン界では名の知れた人だから、同じ世界にいた私としては恥ずかしい思いだが、なんとなくこの人とは馬が合って、付き合ってきた。苦労の深さが違うから、私の一方的な敬愛でしかないけれど、いつも話を聞く度にすごい人だなと感心させられる。

 先回会った時に比べて、ちょっとやせていた。相変わらず饒舌だが、話し過ぎて咳き込むような時もあり、おかしいなと感じたが、口に出すことは失礼だからただ相槌を打って聞いていた。いただいたパンフを読み直してみると、「昨年12月、脳梗塞で右半身100%麻痺。身体は90%回復。現在、自宅でリハビリ中」とあった。なんと地力のある人か。そんな状態にまでなりながら、こんなに元気に来客に対応している。改めて、楚さんの底力を見た気がした。

 宮脇先生は80歳だそうだが、教え子たちに囲まれながら、ご自分の作品の解説をされている姿は活き活きとして若々しかった。作品も抽象画から具象画まで幅広く、筆遣いは勢いがある。その優しいまなざしが楚さんの才能を見つけ、彼を絵の世界へと導いたのだろう。運命の出会いというものがあるし、運命を自ら切り開いていく力が無くてはせっかくの出会いも生きてこない。

 美濃という小さな町で出会った二人が、50年の時を経て、作品を展示できることは奇跡に近い。作品の力強さばかりでなく、人生の不思議さを感じさせてくれた。
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