食べているときは仲間が一緒だったり、お酒を飲んでいたりして楽しいです。
でも、ブログを書くのは孤独な作業です。
その味や店の雰囲気を思い出しながら、コンピューターに向かってひとりで文章にしていくわけです。
作家の村上春樹さんが想像力について福島県で講演されていましたね。(以下、産経ニュースより)
「想像力について話せということですが、きょうは代わりに、カキフライのことを話します。僕は、カキフライが大好きです。
でも、うちで食べることってまずないんです。うちの奥さんが揚げ物が一切イヤなので、出してくれないんです。結婚して45年になりますが、結婚したあとで、揚げものが苦手だということが判明したんです。つらいです…。
だから僕は、自分で作るんです。例えば奥さんが出かけたときは、鍋に油をそそいで、台所で1人で、カキフライを揚げます。
熱々のを食べるとおいしいですけど、世の中で1人でカキフライを食べることぐらいむなしいことはない(笑)。僕は「1人カキフライ」と名付けています。
カキフライは揚げたてを食べるのはおいしいです。でも、寂しいです。おいしいけど寂しい。寂しいけどおいしいという、永遠に循環していくわけです。
で、僕は小説を書くときは、だいたい朝4時から5時に起きて、コーヒーをいれて、コンピューターのスイッチを入れて、それから文章を書き始めます。自分の中にある言葉を一つ一つすくいだして、文章にしていくわけです。
これは孤独な作業です。「1人カキフライ」にすごくよく似てるわけです。小説は、誰に頼まれて書くわけではない。自分が書きたいから書くんです。カキフライだって、自分が食べたいから、誰に頼まれることもなく、自分で揚げるんです。
ですから、小説を書いているときは、自分の小説を書いているんだとは思わないようにしています。それよりは「今僕は、台所でカキフライを揚げているんだ」と考えるようにしています。そうすると、わりと肩の力がすっと、抜けるんです。
自分の小説を書いているんだと思うと、言葉が思い付かない。でも、僕はカキフライを揚げていると思うと、肩の力が抜けて想像力が出てくるんです。
皆さんももし小説をお書きになるようなことがあれば、カキフライのことを思い出してください。そうすると、すらすら書けます。書けなくても、カキのせいではないので、すいません(笑)。」
村上春樹さん、カキフライを思い出しても、すらすら書けません。
カキフライはおいしいかったです。