monoろぐ

古典和歌をメインにブログを書いてます。歌題ごとに和歌を四季に分類。

季節表現 夏 四月

2015年04月03日 | 日本古典文学-夏

四月(しぐわつ)
 春(はる)の粧(よそほひ)の濃(こ)き淡(うす)き、朝夕(あさゆふ)の霞(かすみ)の色(いろ)は、消(き)ゆるにあらず、晴(は)るゝにあらず、桃(もゝ)の露(つゆ)、花(はな)の香(か)に、且(か)つ解(と)け且(か)つ結(むす)びて、水(みづ)にも地(つち)にも靡(なび)くにこそ、或(あるひ)は海棠(かいだう)の雨(あめ)となり、或(あるひ)は松(まつ)の朧(おぼろ)となる。山吹(やまぶき)の背戸(せど)、柳(やなぎ)の軒(のき)、白鵝(はくが)遊(あそ)び、鸚鵡(あうむ)唄(うた)ふや、瀬(せ)を行(ゆ)く筏(いかだ)は燕(つばめ)の如(ごと)く、燕(つばめ)は筏(いかだ)にも似(に)たるかな。銀鞍(ぎんあん)の少年(せうねん)、玉駕(ぎよくが)の佳姫(かき)、ともに恍惚(くわうこつ)として陽(ひ)の闌(たけなは)なる時(とき)、陽炎(かげろふ)の帳(とばり)靜(しづか)なる裡(うち)に、木蓮(もくれん)の花(はな)一(ひと)つ一(ひと)つ皆(みな)乳房(ちゝ)の如(ごと)き戀(こひ)を含(ふく)む。
(泉鏡花「月令十二態」~青空文庫より)