春の岬
春の岬旅のをはりの鴎どり
浮きつつ遠くなりにけるかも
(詩集「測量船」より~青空文庫)
「夢の手枕(たまくら)」という用語の用例は、日本国語大辞典・第2版では、大観本謡曲『絵馬』(室町末)からの例が添えられていますが、さかのぼる例があります。
歎わひさてふるほとの思出にむすひもはてぬ夢の手枕
夢の手枕。妖艶之由各申。
(巻第百八十九・光明峯、寄枕恋、四十八番・右・忠俊寺摂政家歌合)
塙保己一編『群書類従・第十二輯(訂正三版)』続群書類従完成会、1993年、519ページ
逢恋
よひよひにいらて明つるねやの中は我も習はぬ夢の手まくら
(巻第四百八十八・春夢草)
塙保己一編『続群書類従・第十七輯下(訂正三版)』続群書類従完成会、1958年、911ページ
「夢の中(うち)」という用語は、日本国語大辞典・第2版では、『成尋母集』(1073年頃)からの例が早いのですが、さらに、159年さかのぼる用例があります。
やどりして春の山辺にねたる夜は夢の内にも花ぞちりける(巻第二・春歌下、117)46ページ
夢のうちにあひ見ん事を頼みつゝくらせるよひは寝んかたもなし(巻第十一・恋歌一、525)134ページ
佐伯梅友校注『古今和歌集(岩波文庫)』岩波書店、1981年
「鳴き尽くす」という単語の語釈は「虫などがあらん限りに鳴く。」とのことで、日本国語大辞典では1312年の玉葉和歌集からの例を早い例としてあげていますが、300年ほどさかのぼる用例があります。
なにせんになきつくしけむほととぎすきみがためにとこゑををしまで
(14・能宣集、95)
『新編国歌大観 七巻 私家集編3 歌集』角川書店、1989年、46ページ
けふさらば鳴きつくしてよ鶯の春ののちには誰かしのばん
(27・永久百首、春、残鶯、115、俊頼)
『新編国歌大観 四巻 私家集編2、定数歌編 歌集』角川書店、1986年、251ページ
四月
きみのよいのは 卯月のはじめ 半天(はんてん) たつたいちまいで かたにてんびん いせいよく かつほかつほと ゆうこへは したをかけ行(ゆく) はつがつほ うへをとび行時鳥(ほととぎす) てつぺんかけるといふこへは うへとしたとで 掛合(かけよう)て どちらがたかねか しれはせぬ
(とっちりとん「十二ヶ月」~岩波文庫「江戸端唄集」)