monoろぐ

古典和歌をメインにブログを書いてます。歌題ごとに和歌を四季に分類。

「星の別れ」用例

2015年07月07日 | 日本国語大辞典-は行

 「星の別れ」という用語の意味は「陰暦七月七日の夜、牽牛と織女の二星が会ってまた別れること。」で、日本国語大辞典・第二版では早い例として、狂歌『玉吟抄』(1608年)からの用例をあげていますが、100年以上さかのぼる用例があります。

七夕別
仙人の千ひろの竹の庭鳥や星の別の夜半を告ぐらん
(10・草根集、3424)
『新編国歌大観 第八巻 私家集編4 歌集』角川書店、1990年、138ページ


「袖に墨付く」用例

2015年07月07日 | 日本国語大辞典-さ行

 「袖に墨付く」という用語の日本国語大辞典・第二版の用例年よりも100年ほどさかのぼる用例があります。
 『新編国歌大観 3巻』では、同一歌が「七夕はひまなく袖につくす身をけふやあふせにすすぎすつらん」と表記されていますが、「袖に尽くす」では意味がとおらないと思います。

修理大夫顕季の六條の家にて七夕をよめる
七夕はひまなく袖につくすみをけふやあふせに薄すつらん
(巻第二百五十四・散木奇歌集、第三・秋部・七月)
『群書類従・第十五輯(訂正三版)』続群書類従完成会、1987年、17ページ


古典の季節表現 秋 七月

2015年07月07日 | 日本古典文学-秋

七月
としにいちどの 七夕様よ 笹に五しきの いろをなし しつぽりぬるゝ 一夜竹(だけ) はれてあはれる 天(あま)の川 けんぎゆう しよくじよの のたまはく あけのみやうじよふ つらにくや またらいねんの 文月(ふみづき)と かへすがへすの くりごとにも ふりにあはれぬ 身のいんぐわ
(とっちりとん「十二ヶ月」~岩波文庫「江戸端唄集」)


季節表現 七月

2015年07月05日 | 日本古典文学-秋

七月(しちぐわつ)
 灼熱(しやくねつ)の天(てん)、塵(ちり)紅(あか)し、巷(ちまた)に印度(インド)更紗(サラサ)の影(かげ)を敷(し)く。赫耀(かくえう)たる草(くさ)や木(き)や、孔雀(くじやく)の尾(を)を宇宙(うちう)に翳(かざ)し、羅(うすもの)に尚(な)ほ玉蟲(たまむし)の光(ひかり)を鏤(ちりば)むれば、松葉牡丹(まつばぼたん)に青蜥蜴(あをとかげ)の潛(ひそ)むも、刺繍(ぬひとり)の帶(おび)にして、驕(おご)れる貴女(きぢよ)の裝(よそほひ)を見(み)る。盛(さかん)なる哉(かな)、炎暑(えんしよ)の色(いろ)。蜘蛛(くも)の圍(ゐ)の幻(まぼろし)は、却(かへつ)て鄙下(ひなさが)る蚊帳(かや)を凌(しの)ぎ、青簾(あをすだれ)の裡(なか)なる黒猫(くろねこ)も、兒女(じぢよ)が掌中(しやうちう)のものならず、髯(ひげ)に蚊柱(かばしら)を號令(がうれい)して、夕立(ゆふだち)の雲(くも)を呼(よ)ばむとす。さもあらばあれ、夕顏(ゆふがほ)の薄化粧(うすげしやう)、筧(かけひ)の水(みづ)に玉(たま)を含(ふく)むで、露臺(ろだい)の星(ほし)に、雪(ゆき)の面(おもて)を映(うつ)す、姿(すがた)また爰(こゝ)にあり、姿(すがた)また爰(こゝ)にあり。
泉鏡花「月令十二態」~青空文庫より


「読み置く/詠み置く」用例

2015年07月02日 | 日本国語大辞典-や・ら・わ行

 「読み置く/詠み置く」という単語の日本国語大辞典・第二版の記載例よりも古い用例があるので、紹介します。

名に流れたる海人小舟、初瀬の山と読置ける、其川野辺の縁あるに、
(「玉鬘」)
西野春雄校注『新日本古典文学大系57 謡曲百番』岩波書店、1998年、271ページ

名にし負ふ難波津の、名にし負ふ難波津の、歌にも大宮の、内まで聞こゆあみきすと、網子調ふる、海士の呼び声と詠み置ける、古歌をも曳く網の、目の前に見えたる有様、あれ御覧ぜよや人びと。
(「芦刈」)~国文学研究資料館HPの岩波・古典文学大系本文データベースより

男の人の国にまかれりけるまに、女にはかにやまひをしていと弱くなりにける時、よみおきて身まかりにける
(巻第十六・哀傷、858詞書)
佐伯梅友校注『古今和歌集』(岩波文庫)、1981年、200ページ