ジューンベリーに忘れ物

シンボルツリーはジューンベリー
どこかに沢山の忘れ物をしてきた気がして

「ご褒美?」 だって!

2021-05-15 10:08:52 | あの頃
 ▼ 孫が1人いる。
首都圏なので、もう1年以上も会っていない。
 その子が、1年生になった。

 お家でひらがなの練習に集中している動画が、
LINEで送られてきた。
 あどけなさが姿を消し、急に成長したように思えた。
 
 これからの6年間、
小学生として、どんな日々を送るのだろう。
 きっと一日一日、力強く歩みを続けて行くに違いない。
「頑張れ!!」。

 さて、私からの入学祝いは、
定番通り、ランドセルだった。

 昨年の今頃だったろうか、
親子でランドセル専門店に出向き、注文した。
 私は、その代金を銀行へ振り込んだ。

 そして、それが届いた日に、
ZOOMのオンラインで「ありがとう!」。
 それで、ピリオドだ。
 
 「コロナ禍だから」。
息子らも私たちも「仕方ない!」。
 そう思っている。

 しかし、小学生になったプレゼントが、
・・・これ・・。
 もう少しでいいから、素敵なドラマがほしい・・・。

 そう思っているのは、大人だけなのかも・・。
  
 ▼ 私の7才、昭和30年に戻る。
まだまだ戦後が色濃く残る時代だったが、
製鉄所のある街だからか、
どこの家庭もある程度の暮らしをしていた。

 なので、1年生の多くは、
赤や黒の皮でできたランドセルだった。

 だが、私のそれは、薄茶色の厚い布製だった。
しかも、そこには男の子と女の子が、
手をつなく絵が描いてあった。
 
 子供なりにも、貧しい暮らしだったことは知っていた。
だから、そのランドセルを目の前にしても、
何も言わなかった。
 
 ただ、「布でも、絵のない黒がいいのに!」。
「毎日、これを背負って学校へ行くのか・・」
と、ちっとも嬉しくなかった。  

 ところが、こんなことがあった。
入学間近の日だった。
 当時住んでいた4軒長屋の端のおばさんが、
私を洋服屋へ連れて行った。

 母が仲よくしていたおばさんだった。
洋服屋に入るなり、
小学生がかぶる学生帽の売場へ行った。
 当時は、黒のその帽子をかぶる男の子が多かった。

 店の方と一緒に、私の頭に学生帽をかぶせ、
大きさの品定めをした。
 「一寸大きいけど、これでいい?」。
おばさんが、私を見て訊いた。

 突然のことに、私は戸惑った。
頭の学生帽を両手でさわりながら、
「これ、どうするの?」。
  
 あばさんは、明るい声で応えた。
「小学校へかぶっていきなさい。
おばさんが買ってあげる。」

 ますます私は戸惑った。
それまでに父母以外から、
何かを買ってもらったことなどなかった。
 だから、嬉しい顔もできないまま、
押し黙った。

 おばさんはさらに明るく言った。
「遠慮しなくて、いいの。
 毎日毎日長いこと保育所に通ったでしょ。
えらかったよね。
 この帽子は、そのご褒美」。

 私は、3才の秋から保育所に行っていた。
それを、おばさんは知っていて、
ご褒美だと言った。

 夕食の後、家族みんなに、学生帽を見せながら、
おばさんがそう言ったと、胸を張った。
 
 母は、新聞紙を細く折りたたみ、
帽子の内側にはめ、
目を真っ赤にしながら、私の頭にかぶせた。
 帽子の隙間がなくなり、丁度よくなった。

 1年生になると毎日、その学生帽をかぶって通学した。
他の子と違うランドセルのことは気になったが、
それよりも、学生帽が私を元気にしてくれた。       
 


≪追記≫ 【=『プラム』♂と『トマト』♀ 2人で=】

 ♀ ねえ、ご褒美だって。
   プラムは、どんなご褒美をもらった?

 ♂ ご褒美なんて、もらったかな・・・。
   トマトこそ、沢山もらっただろう?

 ♀ 小さい頃は、クリスマスとか誕生日とかに、
   毎年、プレゼントはもらったけど・・・。
   それって、ご褒美だったのからし?

 ♂ トマトのご両親は、
   「健康で元気よく!」と願いを込めて、
   プレゼントを贈ったんだと思うなあ。きっと!
   でも、ご褒美って、それとは違う気がする。
   もっと、すごいものなんじゃないかな。

 ♀ そうね。ご褒美なんて、
   なかなかもらえないものね!

 ♂ だけど、あげたい人なら、いっぱいいるなあ。

 ♀ そう! どんな人・・?

 ♂ 最近なら、ロック歌手の宮本浩次。
   彼が歌う『化粧』がいいんだ。
   聴いていると、強気な女性の悔いと言うのかな、
   そのせつなさが、胸を締め付けるんだ。
   その歌唱に、ご褒美をあげたくなるんだ。

 ♀ 私は、あの夜に必死に化粧する女性にも、
   ご褒美をあげたいなあ。

 ♂ そうか!・・・そうだね。




  『御衣黄桜(ギョイコウザクラ)』と言うらしい

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