ジューンベリーに忘れ物

シンボルツリーはジューンベリー
どこかに沢山の忘れ物をしてきた気がして

私『楽書きの会』同人 (9)

2024-03-23 12:01:05 | 思い
 地元紙『室蘭民報』の文化欄に掲載される随筆「大手門」は、
『楽書きの会』の同人が執筆している。
 その1人に、加賀谷仁左衛門さんがいる。

 彼の名は、同人に加わる前から知っていた。
ブログ『仁左衛門の不思議な世界』を偶然知り、
最初に彼の名前とプロフィールに惹かれた。
 
 ブログにあるプロフィールは、
 『 山から海まで、フィールドにいるのがいちばん。
街中で迷うのには煩わしさが付きまとうが、
森や荒野で迷うのは願ってもないこと。
 落ち葉の匂いと磯の香りの中で時間をつぶすのが大好き。
自然からの恵みを頂いて食べるのはもっと好き。
 「お~いみんな、一緒に出かけるぞ~」。
火山、自然、ジオパークに関する情報はもとより、
この地方の衣、食、住、さまざまな話題を、
私なりの風土記として伝えたいと思います。
 友人はロッドユール。
趣味はパン・焼き菓子作り。
 洞爺湖「仁左衛門の入江」の奥、紅蓮谷の草庵に在住。』

 ブログの1つ1つは、1枚の写真と短文で構成されているが、
まさに彼らしい「風土記」である。
 随筆「大手門」のエッセイも、
『落ち葉の匂い』『磯の香り』『自然からの恵み』などへの、
慈愛に満ちたものである。
 2月24日(土)の室蘭民報に掲載されたものを紹介する。
北国の冬ならではの素敵な窓辺である。

  *     *     *     *     *

      窓辺の自然観察
               加賀谷 仁左衛門

 冬になるとやってくる小鳥たちのために、
毎年裏庭に給餌台を作っている。
 だが雪が深くなると足元が覚束ないので、
今年は居間から餌をセット出来るように工夫した

 カラスや大型の鳥に邪魔されないよう、
小枝のついたままの雑木の枯れ枝を
地面に穴を掘って立てた。
 枝の先に底近くに穴をあけた
自作のペットボトルのエサ入れをぶら下げた。
 底面には止まり木の板も付けた。
室内から見るとちょうど椅子に座った目の高さだ。
 それも窓からたったの30㌢。
外からはガラス面が明るい雪景色を反射して、
室内が見えにくいらしい。

 今年は例年になく、
いつものシジュウカラのほかにヤマガラ、
そしてゴジュウカラもやってきた。
 いちばん動きが敏捷で表情豊かなのは
樺色混じりのヤマガラ。
 昔見た大道芸人のやっていた、
この鳥の御神籤引きの興行を思い出した。
 少し遠慮っぽいのがシジュウカラ。
黒ネクタイの太いほうがオス。
 いちばん顔を利かせているのは
一まわり大きいゴジュウカラで、
口ばしからの眼過線が灰色の背中と
白い腹のツートンカラーにつながり洒落者だ。
 見ていたら、なんと引っ張り出したヒマワリの種を
またねじ込んで戻している。
 どういうことなのだろうか。

 いちばん下手なのがスズメで、
鋭くない口ばしはヒマワリの種を割れないので、
引き出した種をあたり一面にまき散らす。
 そこにやってくるのは、ドテッと大柄で
おまけにくちばしも大きすぎて
種を引き出せないギャング顔のシメ。
 シメシメというわけだ。

 種類間の行動様式の違いが見えてきた。
個体の識別ができないので、
同種内での順位は分からない。

 庭仕事のないこの季節、
小鳥たちの動物行動学を勉強と相成った。
 その筋の権威、コンラート・ローレンツ教授に
弟子入りだ。

  *     *     *     *     *

 さて、私の随筆だが、3月9日(土)に載せてもらった。
多くの方から好評を頂いた。
 末尾に、その幾つかも記す。

  *     *     *     *     *

        鉄橋の電車

 春の遠足で、2年生と江戸川河川敷にある花菖蒲園へ行った。
目的地に着くと、口数の少ないN君が
珍しくみんなの輪の中心にいた。
 やけに嬉しそうに手ぶりをつけて話し、
周りの子どももその話に興味津々。
 「ずいぶん楽しいそうだね。私にも聞かせて!」。
ちょっと探りを入れてみた。
 「教えてあげなよ」。
周りの子からの声にN君はその気になった。

 「ボクのお父さんね、電車の運転手なの。
それで今日、菖蒲園のすぐそばのあの鉄橋を通るんだ。
 その時、ボクを見たら電車の警笛を鳴らしてくれるの。
お父さん、必ず鳴らすって約束してくれたんだ」。
 N君のワクワク感も、子ども達のワクワク感も伝わってきた。
「それって、いつ頃?」。
 思わず訊いてしまった。
「わかった。その時間になったら教えて上げるね」。
 はたして実際に鉄橋を渡る電車が警笛を鳴らしてくれるのか。
誰もが半信半疑だった。

 いよいよその時刻が近づいた。
それを伝えにいくと、
N君はすでに鉄橋の端から端までがよく見える所にいた。
 「もうじきお父さんの電車が来るよ!」
N君はうなずくだけで、鉄橋から目を離そうとしなかった。
 徐々に子ども達が集まってきた。
みんなで鉄橋を見た。
 気づくと2年生全員がいた。

 長い車両の電車がやってきた。
みんなで鉄橋にさしかかった電車をジッと見た。
 全ての話し声が消えた。
ガタンゴトン、ガタンゴトン、
鉄橋を通る電車の音だけが大きく聞こえた。
 電車の警笛に期待がふくらんだ。
その時だ。
『プゥーーン!』河川敷に警笛音が響きわたった。
 一斉に歓声が上がった。
みんなパッと笑顔になった。
 そして、鉄橋をゆっくりと通過する電車に
「オーイ!」と声を張り上げ、
跳びはねながら思い切り手を振った。
 すると再び電車は『プゥーーン!』。
興奮は頂点になり「すごいね!すごいよ!」。
 たくさんの歓声と喜びが広がった。
N君もとびっきりの笑顔。 

  *     *     *     *     *

【届いたメールの声】
 ① これはおもしろかった。
 最後の笑顔の後に、どんなやり取りが友達とあったのかと
続きが気になる。
 結構誰もが経験している自慢したい子ども心で、
画が浮かぶ分かりやすい話だから。

 ② 何気なく書いているようだけど、
臨場感を伝える技術みたいのがあるのかしら。
 そろそろ固定ファンがついて、
応援メッセージでもくるんじゃないの?

 ③ 3月9日の室蘭民報見ました。
塚原さんの随筆読んで、泣きました。

【ジョギング中に呼び止められ】
 ・先日の鉄橋の電車のお話、
すごく良かったです。
 1つ1つが絵本のようで、本当に素晴らしくて。

【同人仲間のブログに】
 ・(「鉄橋と電車」の要旨を紹介した後)
こういうエッセイが好きである。
 私も現役時代このような温かい光景があったかなぁーと
しばし自分に問うてみた。




     お気に入りに散歩道6  浅 春

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