徒然なか話

誰も聞いてくれないおやじのしょうもない話

谷崎潤一郎 「細雪」

2015-11-21 19:11:39 | 文芸
 今年は、明治末期から戦後昭和まで活躍し、近代日本文学を代表する小説家の一人である谷崎潤一郎の没後50年ということで、谷崎の作品や谷崎自身を取り上げた番組が多い。先週の「歴史秘話ヒストリア」(NHK総合)では谷崎と彼を取り巻く女たちを取り上げていたし、昨日のプレミアムシネマでは市川崑監督版の「細雪」(1983)を放送していた。また、昨夜のETV特集では、日本文学研究者ドナルド・キーンさんの、70年にも及ぶ文豪たちとの交友が話の中心だったが、中でも谷崎との出逢いは強烈な印象だったらしく、外国人に対して「日本について知りたかったら『細雪』を読めと言いたい」というキーンさんの言葉が印象的だった。
 映画「細雪」の1950年版に、末妹の妙子を演じた高峰秀子さんは、自身の著書「わたしの渡世日記」の中で、谷崎潤一郎邸を訪ねた時の様子を次のように述べている。

――谷崎家は、当主潤一郎をのぞいては全くの女の城だった。潤一郎好みの友禅や小紋のやわらかものに身を包んだ女たちが、まるで花にたわむれる美しいチョウチョウでもみるようにヒラリヒラリと舞う中に、大桜鯛なる潤一郎がひときわ高く君臨している、という風であった。
(中略)
 いま、「細雪」の一節が、そっくりそのまま私の目の前に展開されていた。ここにいる人たちは、谷崎潤一郎一家なのか、藤岡貞之助一家なのだろうか?…… ――

 キーンさんも何度も谷崎邸を訪問し、高峰さんと同じような光景を見たのかもしれない。


「細雪」(1950)における高峰秀子さん