徒然なか話

誰も聞いてくれないおやじのしょうもない話

お通の話

2013-12-28 22:55:10 | 歴史
 僕が物ごころついてから、最初に読んだ長編小説は吉川英治の「宮本武蔵」だった。父の蔵書の中から、なぜこれを選んだのかは憶えていない。とにかく面白くて一気に読み切った。そして武蔵よりもお通さんに心を奪われた。初めて抱いた理想の女性像だったかもしれない。その後、映画やドラマで何本もの「宮本武蔵」を見たが、僕にとってはやはり、稲垣浩監督の「宮本武蔵」(1954)における八千草薫さんのお通が一番イメージにピッタリで忘れられない。
 吉川英治が創造したお通というキャラクターのモデルは、戦国時代から江戸時代初期にかけて才女の誉れ高かった「小野お通」だったらしい。柳田國男の「妹の力」によれば、「5歳で歌を詠み、7歳で機を織り、技芸典籍何一つとして暗からぬ才媛であった・・・」とある。しかし、柳田國男も述べているように、この人の出自や経歴には謎が多く、今日でも確定していないようだ。 また、「小野お通」は永い間、今日、歌舞伎や文楽には欠かせない「浄瑠璃」の開祖と信じられてきたが、「浄瑠璃」の語源となった浄瑠璃姫と牛若丸の恋物語である「十二段草子」が書かれたのは「小野お通」の時代よりずっと前の室町時代であることなどから、開祖説は今日では否定されている。しかし、才能豊かな「小野お通」が浄瑠璃の発展に何らかの形で関わっていた可能性はあるという。
 「小野お通」の出自についての諸説の中に、美作国津山の地士、岸本彦兵衛の娘という説があると「妹の力」の中に書かれている。僕が防府に勤務していた頃の工場長が岸本さんという方で津山の名家の出身だということを聞いていた。ひょっとして遠祖は、なんて思ったりしたのだが、津山には岸本姓はゴマンといるのだそうな。


映画「宮本武蔵」(1954)でお通を演じる八千草薫さん


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