
このコンクールは新型コロナ感染拡大防止のため、一昨年が延期となり、昨年は無観客で行われたため、観るのは3年ぶり。﨑秀五郎(当時は本條秀五郎)さんがわずか3分強という端唄「綱は上意」で最優秀賞に選ばれたのはついこの前だったような気がする。
2011年から見始めて今年で11年になるが、いつも思うのは観客の少なさ。全国のトップレベルの邦楽演奏家たちが集うコンクールなのにもったいないなと思う。しかし、昨日は終わる頃には結構入っていて少し安心した。
今回、熊本出身の筝曲の清原晏(きよはらはる)さんが最優秀賞を受賞したことは県民として喜ばしい。清原さんは昨年も出場しているのだが無観客だったので観ていない。後日公開された映像では、お仲間と三曲等合奏の部で出場していた。「おや?」と思ったのは今回も同じく合奏の形をとっているが、筝曲部門に個人名での出場となっている。このへんの参加規程はどうなっているのだろう。
今回、尺八・笛音楽部門に笙(しょう)で出場した出会ユキさんは雅楽の管方装束に身を包んでの登場はとても新鮮に感じた。他の楽器に比べてハンディがあると思われるがあえてチャレンジした彼の勇気に拍手を送りたい。
笙の雅な音色を聴きながら、それとはかけ離れたある一文をふと思い出した。
「倡瞽者は淫楽の器を鳴らし、淫風の歌を謳ふ」
これは江戸時代前期に肥後藩士・山崎半彌が残した「歳序雑話」という熊本歳時記に記された祇園社(現北岡神社)の祇園会の様子を表したくだりの一部である。6月14日(旧暦)に行われる祇園会は、それはそれは盛大で賑やかなものだったようだ。北岡の麓を流れる坪井川には遊舟が浮かべられ、舟上では酒食とともに音曲を楽しんでいたという。そんな様子を表現したもので、意味は
「倡瞽者(しょうこしゃ)つまり盲人音楽家がみだらな楽器を演奏し、みだらな歌を唄う」
おそらく盲人音楽家が三弦、胡弓、琵琶などを使って地唄を唄っていたのだろう。武家の式楽であった能の「謡曲」に対し、今日われわれが「邦楽」と呼んでいる音楽の多くが当時は武士階級から差別的な見方をされていたわけである。
まさに倡瞽者であり、地唄三絃の名手と謳われた長谷検校を記念するこのコンクールが今日、日本の邦楽界をリードするイベントとなっていることに感慨を覚えるのである。
※写真は2011くまもと全国邦楽コンクールにおいて最優秀賞を受賞した筝曲の佐藤亜美さん
やはり、隠れた邦楽家がけっこう居られるということでしょうか。
>熊本出身の筝曲の清原晏さんが最優秀賞を受賞した・・・
それは良かったですね。
昨年のコンクールの「楓の花」を謡いながら琴を奏でておられるのが清原晏さんでしょうか?
↓
https://www.youtube.com/watch?v=rqw8A9f1Mlo
何とか見つけました(汗)
有難うございました。
>「楓の花」を謡いながら・・・
そうです、向かって左が清原さんです。
男性の筝演奏者は楽器の超絶技巧を見せる方が多いのですが、歌も筝演奏もしっかりできていることが評価されたのかもしれません。