オックスフォード世界の民話と伝説11 インド編/中川正文・訳/講談社/1978年改訂版
インド版の「わらしべ長者」です。日本版は自分がなぜ長者になったかをはなしませんが、ここでは長者になったわけを商売仲間に話します。
母親に育てられた一人息子が、お金持ちの商人から元手をかりて、商売するように言われます。
息子が商人のところにいくと、よその商人の息子が、元手のお金をなくして、怒鳴りつけられていました。金持ちの商人は、「ここに死んでいるネズミがあるだろう。かしこい人は、こんなものでも、お金にするんだ。」と大声をだしました。それを聞いたかれは、ネズミを借りると証文をかきネズミを借ります。金持ちの商人は、「わしの話を聞いて、ほんきでネズミを持っていくばかがいるわい」と、大笑いします。
外へ出ると、一人に商人から、ネコのためにネズミをくれといわれ、両手いっぱいのマメととりかえます。
かれは、町はずれのつじの、日のかげっているところで、地面にマメをおき、水がめをもってたっていました。そこへくたくたに疲れた木こりがとおりかかると、かれは、マメをすすめました。大よろこびの木こりは、それぞれが二本の木ぎれをくれました。かれは、すぐに市場にいって木ぎれを売るとマメを買い、まえのようにつじにたって、木ぎれをもらいました。毎日同じことを繰り返し、だんだんお金を増やしたかれは、木こりたちが貯えていた木を、すっかり買い取ることができました。
しばらくして、ひどい大雨が続き、木こりが仕事ができないので、木の値段がみるみるうちに高くなっていきました。かれが、たくさんのお金をもうけたことは、いうまでもありませんでした。
それを元手に、店を開き商売をすると、だんだんお金持ちになっていきました。
木こりにとってマメが魅力だったいうのがわかりにくいのですが、そこは突っ込まない方がよさそうです。