どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

この世に死神がいてよかった・・チェコ

2019年06月02日 | 昔話(ヨーロッパ)


       命の水 チェコの民話集/編: カレル・ヤロミール・エルベン・編 出久根 育・絵 阿部 賢一・訳/西村書店/2017年


 この世で死神が役割を果たさなくなったら?

 生き物がいたるところでふえ、畑の作物は害虫にすっかり食べられ、湖や川は生き物であふれ、水は悪臭を放ち飲めなくなってしまいます。
 おまけにカやハエの大群がとび、人間を殺しかねないほど。

 こんな事態をひきおこしたのは、鍛冶屋が百歳になって、おむかえにきた死神を、椅子にしばりつけて、動けなくしてしまったこと。

 どうして?
 ある日、イエスとペテロが一晩宿をかしてくれないかと鍛冶屋に頼みます。鍛冶屋は豪勢な夕食を用意し、一行をベッドで休ませ、自分は納屋のわらのうえでねむります。

 ペテロにいわれて、鍛冶屋は、イエスに三つの願い事をします。

 お願いの一つは、百歳まで健康で長生きすること、第二に、自分のかわりに鍛冶の品をつくってくれること、第三に、イエスが座った椅子にだれかが座ったら、からだが固まり、わたしが いいというまで動けないようにすること。

 百歳になった鍛冶屋は、おむかえにきた死神を椅子で動けなくしてしまいます。

 すると、ハムをつくろうと、ブタに斧で一撃をくわえると、ブタは倒れますが、すぐに起き上がって、にげてしまいます。
 ガチョウの首を切ろうとすると、血は一滴も流れず、鍛冶屋がおどろいているすきに逃げ出してしまいます。
 ハトの頭を切り落としても、地面に落ちた頭から首がのびて動いています。

 死神を自由にすれば、肉は食べられそうですが、それは自分の首を絞めること。

 肉のかわりにエンドウ豆やおかゆを食べて、しばらくは暮らせますが、春になると食べ物がまったくなくなります。

 死神は、この世に必要なんだと気がついた鍛冶屋でした。


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