秋田のむかし話/秋田県国語教育研究会編/日本標準/1974年
ある日、じっちゃが、天子に、ばっちゃがその后になった夢を見て、ばっちゃに大きな声でいったが、ばっちゃは、何の反応も見せない。一言二言しゃべりあっているうちに、じっちゃはかんかんになって、ばっちゃをぶんなぐってしまう。それを見た近所の男が、とんでもないじっちゃだと、太い縄で木に縛りつけてしまいます。
じっちゃが大声で叫んでも誰も助けてくれない。泣きっ面をしているところへ、大きな扇をもった天ぐがあらわれ、わけを話すと、これから乱暴しなかったら、助けてやってもいいというので、じっちゃは、これからは決してしないと約束し、縄をとってもらう。
じっちゃは、天ぐが空を飛べるのが不思議でならない。人間でも飛べるというので、一回貸してくれるよう頼むと、一回だけだと、天ぐから扇を借りると空中へ。そのまま、返せと言っても、天ぐをしり目に、じっちゃはとんでいってしまう。
下を見ながら飛んでいくと、呉服屋が見え、一番いい着物を身に着けると、便所に行くふりをして、また空へ。つぎはめがね屋。ここでもめがねを手に入れ、また空へ。料理屋では、うめえ料理をいっぱい食うと、また便所へいくふりをして、「テンテコテン、テンテコネン」と、飛び上がる。料理屋の人たちは「食い逃げだ、食い逃げだ」と大騒ぎ。
どんどんとんで、隣町のりっぱな家に来ると、”娘の病気をなおしてくれば、娘のむこにする”の立て札。
自分の年もわすれて、娘の病気をみてやる気になったが、ほんとうに病気がなおせるか心配になって、しんだねこで試してみることに。扇の柄でちょこっとついてみると、ねこは「ウーン」とうなる。もう一度つくと「ニャオーンとないて、三回目には、「ウワーッ」と、ねこはいってしまう。
扇で娘の病気をなおすことに成功し、娘のむこに なることになった じっちゃでしたが、このあと思いがけない結末が・・?
天ぐより、人間の方が悪賢い存在か、はたまた天ぐが正直すぎるのか。