木いちごの王さま/きしだえりこ・文 やまわきゆりこ・絵/集英社/2011年
テッサとアイナが山盛りの木いちごを洗っていると、その中に虫がいてびっくり。弟のラウリが、「ころしちゃえ!」といいます。
虫はテーブルのうえを はいだしました。「ふみつぶしちゃえ!」と、またラウリが わらっていいました。でもふたりは、木いちごのはっぱのうえに そうっと虫をすくいあげ やぶのなかに にがしてやりました。
お昼に、木いちごとクリームをたべると、木いちごは 全部なくなりました。ふたりは、お姉さんからいわれて、冬のジャムにする木いちごを 森へとりにいきました。森の中はすずしくていい気持でしたが、たおれた木などがあって、ふたりをじゃましました。それでも ふたりは、どんどん森の奥深くに入っていきました。ようやく大きな木いちごのしげみにぶつかり、かご二つとエプロンに 木いちごをつむと、歩き出しました。ところが、森の奥まできたことがなかったので、迷子になってしまいました。
日が暮れ、草や花に夜露がおりてきました。森を歩いていると、いつの間にか、木いちごの森へ もどっていました。
ふたりは、大きな石に こしかけて なきはじめました。「おなかが すいた!」「ああ、バターパンと お肉が すこしあったら!」といったとたん、ふしぎなことに、アイナのひざのうえに、とりのフライがのった バターつきパンが 落ちてきました。テッサの手にも、バターつきパンがありました。「これで ミルクが あったらね!」といったとたん、ふたりの手には、ミルクのコップがありました。食べおわり、「ちょっとでいいから、やわらかい ベッドで ねむれたら いいのにねえ。」というと、そばには ふんわりと したベッドが。
つぎの日、目をさますと、またミルクコーヒーとブドウパンが。不思議に思っていると、白いマントをきて、赤い帽子をかぶった 小さな おじいさんが しげみのなかからでてきて ふたりに わけを話してくれました。
おじいさんは 木いちごの国の王さまで、何千年も 森をおさめていますが、王として、けっして うぬぼれないように、百年に 一日だけ 虫になり 朝から晩まで小さな虫として生きるよう 神さまから命令されていたのです。小さな虫ですから 小鳥に食べられたり、踏みつぶされるかもしれません、昨日は、ちょうどそんな日でした。ふたりが、助けてくれなかったら、たぶん死んでいたでしょう。夜になって 王の力をとりもどし、あなたがたをさがしました。どうしても お礼をしたかったのです。それで いっしょうけんめい おもてなしを したという わけです。
心配していたお姉さんと弟のところへ帰ると、たくさんの おいいしいジャムを 作りました。
原作は、フィンランドの作家サカリアス・トペリウスといいます。タイトルに「王さま」とありますが、不思議なできごとがおこりはじめると、ようやく結びついてきます。
やさしくほっこり、ちょっと夢を感じさせるお話です。
山脇さんが、今年の9月に亡くなられたというニュースがあったばかり。子どもたちが大きくなっても「ぐりとぐら」シリーズは まだ書棚にのこっています。
岸田衿子さんも2011年5月に亡くなられています。
亡くなられても 残されたものは ずうっと 生き続けます。