・お屋敷の七番目の父(ノルウエーの民話/アスビヨルンセン&モー 米原まり子・訳/青土社/1999年初版)
いろいろ分類されている昔話ですが、この話に類似するものはあるのでしょうか。
旅をしていた男がすばらしいお屋敷にたどりついて、こんなところで休めたらいいなと、薪を割っていた老人に、一晩とめてくれるように頼むと、台所にいって、おやじに話してごらんといわれます。
台所に行ってみると、先の老人よりもっと年老いた老人。その老人に泊めてくれるよう頼むと、テーブルのそばに座っているおやじさまに話すようにいわれます。
おなじようなやりとりが続き、六番目の老人の答えは、だいぶ時間がたってから。六番目の老人は、壁にかかっている角のなかにいるおやじに話すようにいいます。
七番目目の老人は、なにやら人間の顔めいた小さな白っぽい灰色の形をしたものがあるばかり。それでも旅の男が大声で、今晩泊めてくださいと頼むと、壁の角のなかから、「かまわんよ、ぼうや」という声。
男は豪華な料理と酒もごちそうになるという、これだけで終わる不思議な話です。
こんな話が子どもに語られたのでしょうか。七番目の父の年齢が気になります。
・ティム一家(天国を出ていく/ファージョン作/岩波少年文庫/2001年)
ファージョン(1881-1965)の「ティム一家」は、「お屋敷の七番目の父」のパロディでしょうか。年齢が逆転していきます。
ある村にみんな名前がティムという五人が住んでいました。この村では何事かおこるとか、こまったことがあるとティムの家にいって相談していました。ティム一家はうまれつき賢かったのです。
ある日、ジョンの家の納屋に、ジプシーたちが許可もうけずに、一晩ねたことがありました。
どうしたらいいか、ジョンが八十になるティムのところにいくと、六十のティムにきいてみるようにいわれ、そこでは四十のティムにきくようにいわれ、最後は赤ん坊ティムのところへ。
赤ん坊ですから何も言いません。
結局ジョンはなにもしないことに。
ジプシーたちが次の村のジョ-ジのところで断りなしに寝ると、ジョージは巡査を呼んできて、ジプシーに罰をくらわせました。すると一週間後ジョージの納屋と干し草山が焼けて、メンドリが一羽盗まれてしまいます。
ティム一家のおかげで、村では何か事件があっても、おおさわぎにならないうちに、しずまりました。
赤ん坊ティムは百歳になって亡くなりますが、後継者がいなかったため、この村もほかの村と同じように、何かに手だしをするようになりました。
楽しいのはその理由です。八十のティムは知恵が減っている、六十のティムも知恵が減っている、四十のティムは、二十のティムの知恵のほうが生きがいい、若いティムは、赤ん坊に聞くと泉からくみたてのいい知恵で教えてくれるというもの。
創作らしくちゃんと理由がついています。このあたりが昔話と創作の違いです。