どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

おわりのない話

2020年01月19日 | 昔話(ヨーロッパ)

        世界むかし話8/イギリス・アイルランド/三宅忠明/ほるぷ出版/1979年

 

 暗いあらしの晩、一等航海士が船長にむかし話をきかせてくれといわれ、語ったのが・・

 「暗いあらしの晩でした。船長さんがブリッジで一等航海士にいいました。「むかし話をきかせてくれ。」 そこで、一等航海士は語りはじめました。『暗いあらしの晩でした。船長さんがブリッジで一等航海士にいいました。「むかし話をきかせてくれ。』 そこで一等航海士は語りはじめました。・・・・

 おなじ話がどこまでもつづくパターンの昔話。日本のものはめずらしくありませんでしたが、これまで外国のものはほとんどよんだことがありませんでした。この話はイングランドの昔話。

 多分、子どもが寝るまで語られたであろう、おわりのない話。多分外国にも数多くありそうですので、紹介されていないだけなのかもしれません。


きょうのぼくは どこまでだって はしれるよ

2020年01月18日 | 絵本(日本)

       きょうのぼくは どこまでだってはしれるよ/荒井良二/NHK出版/2019年

 

はみ出すほどの白い馬は”あさやけ”。

おおきなまちのおいわいのひ

森 山をこえて まちへ。

いよいよ ぼくは みんなのまえで 走ります。

「きょうのぼくは どこまでだって はしれるよ!」がなんども繰り返されます。

希望の象徴でしょうか。

「ちょうちょが へやのなかに まよいこんできましたよ しばらく ここで みちくさしてね しばらく ここで あそんでね」とよびかける やさしいまなざし。

一ページ、一ページが絵画をみるようです。開いたページをそのままにして ファンタステックな風景を 眺めつづけました。

この詩には手書き文字がふさわしいようです。


きょうはすてきなドーナツようび

2020年01月17日 | 絵本(日本)

   きょうはすてきなドーナツようび/竹下文子・文 山田詩子・絵/アリス館/2012年

 

 目立たないけど、一度食べた人は必ずまた買いにくるほど美味しいという、まちの小さなドーナツ屋さん。おじさんひとりで切り盛りし、たくさんの木と花にかこまれたお店です。

 ならんでいるのは、おさとうドーナツ、チョコドーナツ、クリームドーナツ、ごまドーナツ、キャラメル ナッツにストロベリーと、どれもこれもおいしそう。

 ある日、ドーナツ屋のおじさんが 重たい小麦の缶を、うっかり 足のうえに おとし大きな怪我をしてお店は休業に。

 「ドーナツはできたてが一番おいしいのに」と、ドーナツたちは自ら売り込みに出かけます。

 メガネ屋さんに、公園の花壇に、電車のつり革に、道路の信号に、ピエロの曲芸とびいり。まちのあちこちに、美味しそうなドーナツが神出鬼没にあらわれます。

 さいごは パレードの楽隊と一緒に、ドーナツ屋さんまで、行進していきます。

 病院からもどってきたドーナツ屋のおじさんは、おおぜいの人が つめかけているのをみて、びっくり。

 店員さんも七人になって、まいにちにぎやかなドーナツ屋さんです。

 絵はカレルチャペック紅茶店代表の山田さん。最近、チェコのカレル・チャペックの短編を読んだばかりで、紅茶店の名前は、この人に由来しているのでしょうか。

 ドーナツが大好きな人たちの笑顔がいっぱいです。

 かわいいネズミや、ぼうしをかぶるドーナツ、気球にのるドーナツ、リスにも注目です。


大根どのむかし

2020年01月17日 | 創作(日本)

      百曲がりのカッパ/世界のむかし話⑫ 百曲がりのカッパ/松谷みよ子・作 梶山俊夫・画/学校図書/1984年初版


 世代をこえて読まれている絵本の「おおきなかぶ」。
 おおきなかぶをみんなで引っこ抜くというシンプルな話ですが、絵の魅力もあって楽しまれているようです。

 「大根どのむかし」も大きな大きな大根の話。

 村中の大根が雨が降らず、育たない中で一本だけ残った大助の大根。村中でこやしをかけて、みずやりしていると、千年杉ほどの大きさに。
 村中で堀り上げ、そりにつけてひっぱりはじめると山かげでごろごろという雷が。

 すると大根が「いまのは大根おろしだべ。おらおろされるのはやだやだ」と泣き始めます。
 大根が口をきいたのにおどろいた村人が、大根を食べるのをやめて、村の入り口においておくと、その大根が雪を止め、夏には涼しいかげとなって、台風もこなくなります。

 ところが大根がいつもいつも腹すいたというので、そのたんびにこやしをあげなくてはならないのに閉口した村人が、大根を追い出してしまいます。

 大根が姿をけしたとたん、嵐はくる吹雪はくる日照りがくる夕涼みもできねえなんていやなことばかり続きます。

 最後のオチも笑えます。もとは山形の昔話のようですが、方言の魅力もあるようです。

 松谷さんの監修で、絵本にもなっていました。

   だいこんどのむかし/渡辺節子・作 二俣英五郎・絵/ほるぷ出版/1992年


むかし話を知らない男・・アイルランド

2020年01月16日 | 昔話(ヨーロッパ)

       世界むかし話8/イギリス・アイルランド/おやゆびトム/三宅忠明・訳/ほるぷ出版/1979年

 

 むかし話のむかし話です。

 妻が編んだ靴下を売り歩いていたローリーという男が、町に着くまでに日が暮れ道にそった家に泊めてもらうことになりました。

 家の老人はこころよく泊めてくれますが、これが不思議な家。

 戸棚からナイフとフォークがとびだしてきて、たる木につるされている肉を切りとると、次に鍋がおりてきて、肉がそのなかにとびこみます。

 暖炉の火がひとりでにつき、バケツが動いて肉の鍋に水がそそぎこまれました。

 じゃがいももバケツでひとりでにあらわれ、鍋に入ります。料理がすべて勝手にすすんでいき、夕食が終わると、老人がこの家の夜の過ごし方を話し出します。

 夜の三分の一は夕食に、つぎの三分の一はむかし話をするか歌をうたって、のこった三分の一を寝てすごすというのです。

 むかし話も知らない、歌もうたえないローリーは、老人から泊まることを断られてしまいます。

 ローリーが、しばらく歩いていくと、道端で くしにさした肉を焼いていた男に会います。

 男は、くしをもって、こげないように ひっくりかえしてくれるようローリーにたのみ、姿をけします。

 ローリーが くしをまわしはじめると、くしにさした肉が「わしのひげを やくな!」とわめきます。びっくりしたローリーは、くしも肉もほうりだして一目散ににげだし、かけこんだ家は、夕食を食べた家。

 奇妙な体験を老人に話すと「ちゃんとおもしろい話を知っているじゃありませんか。どうかえんりょなくとまっていってくだされ」といいます。

 ところが、ローリーが、ぐっすり眠って翌朝目をさますと、老人も家もなく、靴下の袋をまくらにして道端の草むらに寝ていたのです。

 夕食のときテーブルクロスがひとりでにまかれ、ナイフとフォークが肉を切ってくれるというのは、まさに何がおきてもおかしくない むかし話の世界。

 この老人の正体は?


げんこつげんたろう

2020年01月15日 | 絵本(日本)

   げんこつげんたろう/くすのきしげのり・作 伊藤秀男・絵/廣済堂あかつき/2015年

 

 げんたろうが絵を描いていると 男の子に絵をとりあげられ からかわれて 思わず ケンカしそうに。

 先生にとめられ 手を握って ぐっと怒りをこらえます。

 くやしいとき かなしいときは げんこつ。

 手をひらかないと 仲直りのあくしゅはできません。

 どうする げんこつ げんたろう?

 げんたろうが かいていたのは おかあさんの誕生日におくる似顔絵でした。

 げんこつは ごつごつしたイメージ。絵も力づよく 和紙にクレヨンと水彩をつかってえがかれています。

 表紙はげんこつ 裏表紙は手がひらいています。

 手を開いたら笑顔が満開です。「げん げん げんこつ ひらいたら やさしい えがおも まんかいだ」 そのとおりと いいたくなりました。


5ひきのすてきなねずみ ”おんがくかいのよる” ”ひっこしだいさくせん”

2020年01月14日 | 絵本(日本)
5ひきのすてきなねずみ おんがくかいのよる  

   5ひきのすてきなねずみ おんがくかいのよる/たしろ ちさと・さく/ほるぷ出版/2007年初版

 題名が素敵な絵本。

 満月の夜、どこからか聞こえてきた音楽にひかれて、5匹のネズミは音のするほうへあるきはじめます。
 公園まで来ると音はだんだん大きくなり、そこには「かえるのおんがくかい かえるでないものおことわり」の看板が。でも5匹がそーっとのぞいてみると、月明かりのしたで、たくさんのカエルたちが歌っています。うつくしいメロデイーを夢中で聞き入っていると、ここはカエルだけのきまりですと追い出されてしまいます。

 すばらしい音楽会のことが忘れられないネズミたちは、ちゅうちゅうというばかりでカエルのように歌えないので、楽器をつくってネズミの音楽会をすることにします。

 あちらこちらから集めた材料で楽器をつくったネズミたち。準備ができると音楽会のお知らせをあちこちの壁に張り出します。ネズミの集会所で開かれた音楽会は満員の盛況。そこにはカエルたちもきています。カエルの音楽会から追い出されたネズミたちでしたが、こころよくカエルを歓迎し、カエルたちが歌っていた歌をうたいはじめると、カエルもネズミも一緒になって歌いだします。

 すばらしい音楽会。ネズミとカエルは、また音楽会をする約束をします。次の満月の夜は、みんなの音楽会になります。
 
 ネズミの集会所が舞台になっていて、そこにはぎっしりのネズミが描かれています。マッチ箱でつくったバイオリン、短い鉛筆で作った木琴、空き缶を利用したドラムなどが楽しい。
 ネズミたちが音楽の聞こえるほうに歩いていく場面は、石畳の道で、両側にはレンガ造りの家?があるので、場所はどこか外国のよう。

 5ひきのネズミにぐれ、くろ、しろこ、ちゃたろう、ちびすけと楽しい名前がつけられ、名前の通りネズミが描き分けられていますが、それがあまり活かされていないのが残念。

 

   5ひきのすてきなねずみ ひっこしだいさくせん/たしろ ちさと・さく/ほるぷ出版/2010年初版

 ”おんがくかい”は、2007年、”ひっこしだいさくせん”は三年後の2010年には発行されています。 

 お隣さんがおおきなネコを二匹も飼いはじめたことから、落ち着いて住める場所を探しに出た5匹のネズミたち。大通りのすみは、雨が降るとびしょびしょ。下水道の巣穴は満員。

 あちこちさがして、とうとうやってきたのはおおきな山の前のゴミ置き場。いらなくなったものを利用して、自分たちの家をつくることにします。

 板を切ってまずは床。赤い椅子は屋根。植木鉢に雨水をため、パイプをつなげるとお風呂の出来上がり。古時計は食品貯蔵庫に。自転車のタイヤは風の力でまわる観覧車。

 5匹がみちたりた気持ちでねどこにもぐりこむと、突然ニャアオオオオ!と ネコの声。

 せっかくできた家からも引っ越しか?と思わせておいて・・・・。

 手作り感いっぱいのおうち。

 ベッドはくつ テーブルは本 おまけに鉄道の線路まであり、夢がひろがっていきます。      


アナベルとふしぎなけいと

2020年01月13日 | 絵本(外国)

   アナベルとふしぎなけいと/マック・バーネット・文 ジョン・グラッセン・絵 中川千尋・訳/あすなろ書房/2012年

 

 どこをむいても白い雪。小さな町の冷たい午後、アナベルがひろった箱には、色とりどりのきれいな毛糸がはいっていました。

 自分のセーターを編んでも、まだ毛糸が残っていたので、犬のマースのセーターも編みました。それでも毛糸は、まだ残っていました。

 近所の男の子と、その子のイヌにセーターを編んでも、まだ毛糸はのこっていました。

 学校のクラスメートにも、おとうさんおかあさんにも、おばさんにもセーター編んであげても毛糸はなくなりますせん。

 町中のイヌとネコと動物に編んであげてもなくなりません。

 町中の家にセーターを編んであげると、街の景色がかわっていきました。

 アナベルとふしぎな毛糸の話は世界中に広まって、おしゃれで有名な海のむこうの王子が高いお金を出してほしがります。王子がお金をどんどんつりあげていきますが、アナベルは売るつもりはありませんでした。

 王子はどろぼう雇って箱を盗み、お気に入りの音楽をかけて蓋をあけてなかをみますが、箱のなかはからっぽ。

 王子が「むすめよ、おまえは このさき いっしょう しあわせに なることは ないであろう」と、呪いをかけてポイと箱を海の中へ。

 しかし、箱は氷の上にのって、またアナベルのもとへ。

 アナベルは、呪いに負けることなくずっと しあわせでした、

 

 お金でなんでも買えると思っている傲慢な人間には、不思議な毛糸は見えないのです。

 ジョン・クラッセンの絵は、これで三冊目ですが、おなじみのキャラクターがでてきて親近感がありました。毛糸の色彩がカラフルですが、鮮やかというよりおさえた色調。

 寒い冬に、毛糸という組み合わせもぴったり。

 冬が過ぎたら?と余分な心配をしましたが、セーターですから、脱げばいいだけです。


おれ、よびだしになる

2020年01月12日 | 絵本(日本)

    おれ、よびだしになる/中川ひろたか・文 石川えりこ・絵/アリス館/2019年

 

 昨年の12月に発行されたものにしては珍しいのですが、絵は ほとんどがモノクロで、きわめて地味な感じがします。

 子どもたちが将来なりたいものに、”よびだし”は、はいってくるでしょうか。

 いつもテレビ観戦でみた”よびだし”にあこがれて中学校を卒業してから、相撲の世界にとびこんだ少年の目を通して、よびだしの生活がえがかれています。

 よびだしの仕事も、土俵を作る、力水をつける力士にひひゃくと紙をわたす、制限時間をつたえる、ほうきで土俵を掃く、懸賞幕をもって土俵をまわるなどなどさまざま。

 大相撲をささえる裏方にスポットがあてられています。スポーツにかぎらず、表面の華やかさを支える裏方の存在を忘れてはいけないように思いました。

 大相撲にかかせない裏方の仕事を表現するのは、モノクロがふさわしいようです。


そばがらじさまとまめじさま

2020年01月11日 | 絵本(昔話・日本)

         そばがらじさまとまめじさま/小林輝子・再話 赤羽末吉・画/福音館書店/2008年

 

 題名からは結びつきませんでしたが、イヌ、臼、灰と花咲爺さんのパターンで、灰をまいて、雁をとります。

 作者は岩手在住の方で、土地言葉がうまくいかされていますが、その分、とっつきにくいかもしれません。

 いぬっこが、おおきくなるところは

  いっぱい くわせれば いっぱいだけ

  にはい くわせれば にはいだけ

  さんばい くわせれば さんばいだけ

 まめじさまが 山にかりにいくところで、いぬが ほえるところでは

  あっちの がけから ぼっかぼか こっちの がけから ぼっかぼっか あおじし ではれ

 すぐに昔話の世界に入っていけます。いつもながら赤羽さんの絵もぴったり。

 そばがら、まめ、ししじる、しろいおこめ、がんじると、食べ物にちなんだものがでてきますが、十分な食料を手に入れることが困難だった背景を象徴しているようです。


りゅうじんさまは歯がいたい

2020年01月10日 | 絵本(日本)

    りゅうじんさまは歯がいたい/関屋敏隆:作・絵/ポプラ社

 

かっぱの故郷おこん川に、伝助が立派な医者になって帰ってきました。

やっと川で泳げると思ったら日照りつづきで川には水溜ばかり。

雨をふらせてくれるりゅうじんさまは どうしているのかな?

伝助が、川上のひょうたん池にりゅうじんさまに会いにいくと、りゅうじんさまには虫歯が六本もあって、おおよわり。

伝助はすぐに なかまをよびよせ、ぬればぬるほど病気もケガもなおるというかっぱの秘薬”ごんごーる”をぬって、虫歯をぬいてあげます。

すると元気になったりゅうじんさまは、伝助をのせて雲の上に上ると、雨を降らせます。

恵みの雨が降って、かめもこいも、かえるも、おおなまずも おおうなぎも大喜び。

みんーな、川に飛び込んで 水遊び。

一日飴玉三個たべたら「歯磨き くちゅくちゅ ぱっぱー」は、歯磨きのすすめかな。

大型の絵本にダイナミックな構図、歌も絵本から、とびだすほどのいきおいです。

あそんだあとの、キュウリをたべているかっぱの数の多さにも圧倒されます。


宿なしルンペンくんのお話

2020年01月09日 | 創作(外国)

     長い長いお医者さんの話/カレル・チャベック・作 中野好夫・訳/岩波少年文庫/1952年初版
 

 チェコのカレル・チャペックの律儀なルンペンのお話。

 

 フランティシェク・クラールというルンペンの宿は警察の留置場。浮浪罪でおまわりさんにつかまってはそんな暮らしを続けています。

 ひもじさで おなかがグウグウなりだすと、この人は腹の虫をなかしていらあ、とみんながいっていました。

 ある日、クラールが、どこかでコッペパンかチーズをもらおうと首をひねっているとき「あ!、きみ、ちょっとこれをたのむ!と紳士が、革のカバンをクラールに投げわたして、風にふきとばされた帽子をおいかけていきました。

 ところが三十分待っても、一時間待っても紳士はもどってきません。空にちいさな星がまたたくころになってももどってきません。

 ここまでまつクラールは立派というしかありません。なにしろネコババするという考えがまったくありませんから。

 不審に思われたクラールは泥棒と間違われ留置場へ。

 カバンのなかには、1367815コルナのお金と歯ブラシが一本はいっていました。

 「あずかりものです」というクラールの言い分はとおらず、殺人をおかし、死体をどこかにかくしたにちがいないと死刑にされそうになります。

 そのとき、ひとりの見知らぬ紳士が、からだじゅうホコリみまれになってフウフウ息をきらしながら姿をあらわします。

 そして、カバンの中身が、クラールのいうことと一致するのが証明されます。

 紳士は「ルンペンも大勢いるが、あなたのような人はまったく、めずらしい。いってみれば、鳥の中の白いカラスですよ」と称賛します。

 紳士は、家と家におくテーブル、テーブルにのせるお皿、皿に入れるあたたかいソーセージを買うだけのお金を、正直のほうびとしてクラールにやったのです。

 これだけでおわらないのがチャペックのお話です。クラールのポケットに穴があいていたので、もらったお金が みんなおっこちて、もとのモクアミになったのです。

 それだけでなく、白いカラスにあって、白いカラスの王さまに選挙でえらばれますが、クラールはどこかへいって行方がわからなくなっていました。

 クラールは王さまの意味。最初の名前の意味が、おわりになってようやく結びつきます。

 チャペックのお話、あちこちとびながらすすんでいくのですが、白いカラスとのやりとりもかなりながくなっていきます。

 紳士が風でふきとばされた帽子をおいかけるところも、おとぎ話の世界です。

 帽子が国境をこえ、ホテルに勘定をはらわずに逃げて、外交官にばけ、モスクワまで。さらに新聞記者になって政治に頭をつっこみます。ロシアの政府をのっとろうとして、銃殺されそうになりますが、風がふいてきて、またまた逃げ出し、ダッタン人の首領になったりと大冒険をするのです。この帽子だけでもひとつのお話です。


イワシ大王のゆめ・・韓国

2020年01月08日 | 絵本(昔話・外国)

    イワシ大王のゆめ/チョン・ミジン・再話 イ・ジョンギュン・絵 おおたけ きよみ・訳/光村教育図書/2019年

 

 イワシ、ヒラメ、ハゼ、エビなどがでてくるのですが、とにかく意表をつく絵です。

 こんな描き方もあるのかとビックリ。魚の衣装?をみているだけで十分満足できます。


 むかしむかし、三千年いきているイワシ大王が、ある日 とても不思議な夢を見ました。

 「体が ぴょーんと 天高く とびあがり、すぐに ぽとんと おちました。それから雪が ふってきたと おもったら つぎに おひさまが てりつけ、あつくなったり さむくなったりする」という夢でした。

 ただならぬ夢にちがいないと、イワシ大王は、ヒラメに よくあたることで 有名な 西の海のハゼを つれてくるように いいつけました。

 ハゼのいる西の海は、とおくけわしいものでしたが、なんとか ヒラメはハゼをつれてきます。

 ところが大王は、苦労してハゼをつれてきたヒラメに、ねぎらいの言葉ひとつもかけません。

 ハゼは、大王の夢は 龍になるゆめと いいます。

 「体が ぴょーんと 天高く とびあがり、すぐに ぽとんと おちた というのは 龍になって 天空を とびまわるということ。雪が ふったり おひさまが てりつけて、あつくなったり さむくなったりするというのは、季節と天気を おさめる 龍の力を あらわしてるのです」というのです。

 おおよろこびのイワシ大王に、いかりを おさえきれないヒラメが 「龍だなんて ばからしい! これは イワシ大王が やきイワシに なるって ゆめだわい!」と とんでもないことをいいだします。

 こんどは大王がおこってヒラメのほっぺたを ありったけの力でひっぱたたきました。そのためヒラメの 目はかたほうによってしまいます。

 ひらめがぺったり うずくまると それが よりによってナマズの頭の上。おかげでナマズの頭はぺしゃりと つぶれてしまいます。

 それをみていた マナガツオが 笑いをこらえようと、口をぎゅっと 長い間すぼめたので、マナガツオの 口は そのまま すぼんで しまいます。

 エビは おなかをかかえて わらったので そのまま こしが まがってしまいます。

 魚のちょっと楽しい由来話です。


目で見てかんじて

2020年01月07日 | 絵本(外国)

   目で見てかんじて/ロマナ・ロマニーシン アンドリー・レシヴ 広松由希子・訳/河出書房新社/2019年

 

 色鮮やかなイラストで、”目とかんじること”を幅広くカバーしています。一度に全部読む必要はありませんが、とはいってもどんなことが何が書かれているか通読は必要でしょうか。

・目の構造、視力

・色の見え方

・サインやシンボルマーク

・カメラ、潜望鏡、双眼鏡のほか監視カメラやドローンも

・見えないもの・・空気、重力、暗黒物質、ブラックホール

・ときどき目は、わたしをだます・・だまし絵、カモフラージュ、ミミクリー(擬態)

・ハエやフクロウなど動物のみえかた

・点字のこと

・視覚だけでなく、五感のこと

 幅広い反面、ひとつひとつを深く知りたいと思うと物足りなくなるかもしれません。絵本なので目次はありませんが、目的のページを探すのは少し苦労しそうです。

 現代のサインやシンボルマークを、古代バビロニア人のサイン、古代エジプト人のサインと並べてみると、驚くほど類似しています。

 いろいろな表情の顔、形がちがう眼鏡をかけたおおぜいの人の顔のイラストも楽しい。


魚のむすめ‥トルコ

2020年01月06日 | 昔話(中近東)

        ものいう馬/こだまともこ・訳/ほるぷ出版/1979年

 

 両親がなくなって、ひとりぼっちになった若者が、屋根裏部屋で発見したのは網でした。

 父親が漁師をしていたことも知らなかった若者は、魚をとりはじめます。

 ある日、とても美しい魚をとりますが、あまりにきれいなので、売るのも食べるのもおしくなって庭に井戸を掘り、中にいれておきました。

 いつものように海にでかけ、帰ってみると家の中はきれいにかたずいていました。

 次の日も、夕方家に帰ってみると、また家の中がきれいに掃除されていました。

 コーヒー店にでかけ、客からふしぎな出来事を確かめてみてはどうかといわれ、ものかげにかくれてようすをうかがっていると、井戸の中の魚がぴょんと飛び出し、美しいむすめになりました。

 若者はすばやくとびだし、むすめのぬいだ魚の皮を、火に投げ込んでしまいます。

 むすめは若者をとがめますが、すんでしまったことは、しかたがないと物分かりがはやく、おまけに若者のよめさんになってもいいといいます。

 さっそく結婚準備をはじめた若者でしたが、この美しいむすめの評判をききつけた王さまが、「四十日の間に、金とダイヤモンドでつくった宮殿を海の中にたててみよ、もしできなかったら、むすめはわしのものじゃ」と、無理難題をいいだします。

 むすめのいうとおりにすると宮殿はすぐにできあがります。

 次に王さまは「浜辺から宮殿まで水晶の橋をかけよ」と命令します。

 さらに「国中の者が、みんなはらいっぱいたべても、まだあまるだけのごちそうを用意せよ」「たまごから、ロバが生まれるのを見たい」との命令。

 海の大男からたまごをもらって、若者がいすの上にたって、たまごを放り上げると、殻がわれてロバが飛び出し、王さまの上になっさかさまにおちてきました。

 王さまをたすける必要はないのですが、若者が王さまを助けてあげると 「生まれて一日しかたっていないのに、歩くことができて、おしゃべりもできる赤ん坊をつれてくるように」と命令します。

 王さまの難題の解決は、すべてむすめの指示です。

 「生まれて一日しかたっていないのに、歩くことができて、おしゃべりもできる赤ん坊」が、王さまのところにいくと、赤ちゃんは、いきなり王さまの顔をぴしゃりとたたき いいます。

 「どうして、たったの四十日で、金とダイヤモンドの宮殿ができるんだい? どうして、たった四十日で、水晶の橋をかけられるんだい? どうして、ひとりの男が、国中の人が食べられるだけの ごちそうをつくれるんだい? どうして、たまごから、ロバがかえるんだい?」

 ひとこというたびに、赤ちゃんは王さまの顔をぴしゃぴしゃたたきました。

 昔話ですから無理難題でも実現するのが当たり前とおもっていると、ラストのオチが痛烈です。