Mars&Jupiter

おおくぼっちの屋根裏部屋へようこそ!

吉松隆の「プレイアデス舞曲集」を聴きながら、横浜から星川まで歩く

2008-09-15 06:20:00 | 古典~現代音楽日本編
小学生だった頃に反射式の天体望遠鏡を買った私は、
毎日夜空に輝く星たちを眺め、天体観測をしていた。
その中でも星雲・星団は天体望遠鏡で見ると、
どのように見えるのかに興味があり、毎日楽しみであった。
アンドロメダ大星雲、オリオン大星雲などを探してみたが、
よく写真で見るようなようには見えないのが普通だった。
その中でも比較的見ごたえがあったのは、プレアデス星団である。
プレアデス星団とはおうし座のところにある星団の名称だ。
私は、この星団を天体望遠鏡でみるたびに、
その星たちが放つ青白い光に魅了されたものである。

この星団の名称がついた日本人作曲家による器楽曲が存在する。
「プレイアデス舞曲集」というタイトルを以前見たとき、
どんな曲なのだろうという興味は持っていたが、買わないでいた。
昨日のウォーキングは横浜から星川駅まで歩いたが、
途中聴いたのは1953年東京生まれの吉松隆の作品である。
今回「プレイアデス舞曲集」が入っているCDを買ってみた。
ただ、もちろんこの曲を聴けば分かることだが、
この曲はプレアデス星団を描写した音楽ではない。
吉松隆は中学3年生の頃にクラシック音楽に目覚め、
松村禎三に師事した他は、独学で作曲を学んだということである。
ロックやジャズのグループにも一時期参加していたようだ。

「プレイアデス舞曲集」は1986年に作曲されたピアノ曲集。
CDでは、このうちの5曲がおさめられている。
「フローラル・ダンス」はエクソシストの曲を想起する。
ジャズ風な部分も感じられる印象的な曲である。
「アップル・シード・ダンス」は、ジャズ風の軽快な曲で、
キースジャレットを想起させるような曲である。
「水によせる間奏曲」は、自由で即興的な曲で、
みずみずしさが表現されている感じがする。
「ほぼ2声のインヴェンション」は、
「フローラル・ダンス」と同じような軽快な短い曲。
「二重人格者へのオード」は、旋法と不協和音が交錯した曲で、
ストラヴィンスキーへのオマージュであると、
本人が語っているようにロシア民謡風の旋律は、
確かにストラヴィンスキー風である。

「プレイアデス舞曲集 Ⅱa」作品28aは1990年に作曲され、
「プレイアデス舞曲集」の続編として出された曲集で、
ピアノとヴァイオリンのための作品となっている。
「消極的な前奏曲」は、とぼとぼと道を歩くような
ピアノの伴奏の上に、ヴァイオリンが奏す旋律が印象的だ。
「図式的なインヴェンション」は、軽快なピアノの旋律を、
ヴァイオリンも模倣しながら、展開する短い曲。
「線形のロマンス」は、ヴァイオリンが線の細い音楽を奏し、
ユニゾンで奏すピアノがロマン的な雰囲気を加える。
「鳥のいる間奏曲」は、鳥たちのさえずりと、
その対話を模倣しているかのような曲である。
「断片的な舞曲」もヴァイオリンとピアノがユニゾンで、
奏する旋律はジャズ風な曲で、軽快な感じである。
「小さな乾いたフーガ」は、ジャズ風な曲で、
フーガ的な部分もみせる短い曲である。
「積極的なロンド」は朗々と奏される旋律が印象的である。
最後の冒頭の旋律による終わり方がいい。
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松村禎三の弦楽四重奏とピアノのための音楽と「アプサラスの庭」を聴きながら、二俣川から緑園都市まで歩く

2008-09-14 06:03:55 | 古典~現代音楽日本編
昨日は二俣川から緑園都市駅まで歩きました。
途中聴いたのは1929年京都生まれの松村禎三の作品。
松村禎三は1949年から東京に移り、池内友次郎や伊福部昭に師事し、
1955年に「序奏と協奏的アレグロ」が毎日音楽コンクール作曲部門で、
第1位を受賞してから世に知られるようになり、
その後次々と意欲的な作品を世に送り出した作曲家である。

弦楽四重奏とピアノのための音楽は、
1961年から62年にかけて作曲された。
冒頭ヴァイオリンによって奏される音型は、
他の弦楽器にも引き継がれ、合奏となり
音型はまるで生物のように変化を遂げていき、
増殖していくかのように音量を増して頂点を迎える。
その後ピアノが入り、幻想的で氷のような冷たさを持ち、
徐々に音楽は再び生命を取り戻したかのように動き出し、
最初の音型をもとに展開され、激しさを増していく。
その後音楽は再び静まり、幻想的な音楽が繰り返される。
宇宙空間を彷徨うような、浮遊感を思わせる音楽が続き、
ピアノが一定の音型を繰り返していくのに対し、
弦楽器はそこに表情をつけながら激しさを加えていく。
最後は冒頭のような弦楽器による音型を繰り返す音楽となり、
その動きはやがて減速していき、ヴァイオリンのみの演奏となり、
やがては静寂となり、消えるように終わる。

「アプサラスの庭」は1971年に作曲を完成した作品で、
ヴァイオリンとフルート、ピアノにより演奏される。
ピアノとフルートにより始まる音楽は、
ストラヴィンスキーを想起させる原始的な雰囲気をも漂わせる。
フルートの音はヴァーレーズの密度21.5をも感じさせるが、
その一方で日本的な部分も感じさせるところもある。
アブサラスとはインド神話に語られる一群の天女たちをさすようだ。
音楽はやがてピアノが同じような音型を繰り返し、
それにヴァイオリンとフルートがユニゾンで旋律を奏でる。
それが頂点に達すると、音楽は静かになり、
フルートを中心に再びこの作品の中で出てきた主題が再現され、
ヴァイオリンもそれに加わり、最後は静かに消えるように終わる。
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三善晃のヴァイオリン・ソナタを聴きながら、横浜から和田町まで歩く

2008-09-13 10:36:40 | 古典~現代音楽日本編
昨日は横浜から和田町駅まで歩きました。
途中聴いたのは1933年生まれの三善晃の作品。
今回から器楽曲・室内楽曲のコーナーは日本編に入る。
三善晃は幼い時期からヴァイオリンと作曲を平井康三郎に師事し、
1951年には東京大学仏文科に入り1955年にフランスに渡り、
レイモン・ガロワ=モンブランなどに師事し、
1958年までの間、パリ音楽院(パリ国立高等音楽院)で学んだ。
帰国後は東京藝術大学の講師を務めるなどし、
1974年からは桐朋学園大学の学長を務めながら作曲活動を続けた。

ヴァイオリン・ソナタは1954年に作曲された。
フランス留学前に作曲にとりかかった初期の作品である。
第一楽章モデラートは、最初ピアノのソロがしばらく続き、
ヴァイオリンが入って始まるが、その詩的で幻想的な世界は
いかにもフランス的であり、個性的である。
第二楽章アンダンテは、ゆったりとしたテンポの中、
深遠であり、叙情的な世界が広がっていく。
第三楽章モデラータメンテ・ヴィーヴォは、
幻想的でありながら、軽快なテンポで展開されていく。

オマージュは1975年に作曲された作品で、
ヴァイオリンとフルート、ピアノにより演奏される。
ヴァイオリン・ソナタの時期とはうってかわって現代的だ。
フルートの音は尺八を模倣しているような音の出し方をする。
ここで創造される音楽の世界は、深遠な部分を見せながらも、
虚構の異次元的な世界であるように思え、
しかし1970年代が向かおうとしていた何かを
反映しようとしているのだなあという気もするのである。

なお、前回とりあげた器楽曲・室内楽曲の
その他の地域編に関するCD等の情報は、
以下のアドレスに載せてあります。
http://www1.ocn.ne.jp/~bocchi07/chamber-music-cd-other.html
を参考にしていただければ幸いです。
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杜鳴心と呉祖強の共作によるバレエ組曲「人魚」を聴きながら、二俣川から鶴ヶ峰まで歩く

2008-09-12 07:41:12 | 古典~現代音楽その他の地域編
昨日は二俣川から鶴ヶ峰駅まで歩きました。
途中聴いたのは杜鳴心と呉粗強が共作したバレエ組曲「人魚」。
杜鳴心(Du Mingxin)は、1928年8月19日湖北省生まれの作曲家で、
重慶で若い頃学び、上海に移り住みピアニストとしてデビューした。
その後モスクワ音楽院で1954年から1958年の間学び、
北京の中央音楽学院の教授陣として活躍した人物である。
呉祖強(Wu Zuqiang)は1927年北京に生まれ、1952年に中央音楽学院を卒業し、
1958年にはモスクワにあるチャイコフスキー音楽院に入学した。
その後は中央音楽学院の教授として教育活動に従事している。
CDには人名を呉粗強と書いてあるのだが、
琵琶協奏曲「草原の小姉妹」を作曲した人物でもあるので、
呉祖強が正しいのかもしれないので、ここでは呉祖強と表記しておく。

バレエ組曲「人魚」は、1959年に作曲されたピアノ曲。
第一曲「朝鮮にんじん」は、軽快な感じの曲で、
中国的な旋律が使われているが、印象主義派風の音楽に仕上がっている。
第二曲「コラール」もゆったりとした部分が、
ドビュッシーを思わせるような印象主義派風の音楽。
第三曲「水草」は、きらめくようなピアノの音が、
湖水や海辺を思わせるような感じでいい。
第四曲「結婚の情景」は、終曲にふさわしい軽快で華やかな曲。
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アルフレッド・ヒルの弦楽四重奏曲第1番変ロ長調「マオリ」を聴きながら、星川から横浜まで歩く

2008-09-11 05:54:20 | 古典~現代音楽その他の地域編
昨日は星川駅から横浜まで歩きました。
途中聴いたのは1869年オーストラリア生まれのヒルの作品。
1869年12月16日にメルボルンのリッチモンドで生まれた彼は、
17歳の頃にニュージーランドのウェリントンに移り住んだ。
その後、ライプチヒ音楽院で学び、その時ブラームスや
ドヴォルザーク、チャイコフスキーなどとめぐりあったようだ。
ヴァイオリン、ピアノ、作曲を学んでから帰国し、
ウェリントンに住んだあと、1910年以降シドニーに移り住んだようだ。

弦楽四重奏曲第1番変ロ長調「マオリ」は1896年作曲され、
1911年にシドニーで初演された作品である。
表題の「マオリ」は刺激的ではあるが、
曲はヨーロッパの伝統的な音楽を感じさせる。
第一楽章モデラート-アレグロは、優しさあふれる曲だ。
いかにもロマン派的な作風であり、のびのびとした部分は素朴で、
ドヴォルザークを思わせるところは随処にみることができる。
第二楽章「ワイアタ」は、おだやかな3部形式による短い曲である。
ドヴォルザーク風のスケルツォ的な楽章である。
中間部のおだやかな音楽は、牧歌的なところがある。
第三楽章「タンギ(悲歌)」は、淡々とした中で悲しみを表現する。
これもドヴォルザーク風な感じを受ける曲である。
第四楽章終曲は、明るく軽快な音楽で、ドヴォルザーク風である。
郷愁あふれた部分や弾んだ音楽が心地よく響く。

弦楽四重奏曲第2番ト短調「4つの情景によるマオリ伝説」は、
1907年から1911年の間に作曲された。
第一楽章森の流れるようなメロディは、ドヴォルザーク風である。
第二楽章夢は、ゆったりとした音楽で、おだやかであるが、
過去を悲しみ、嘆くような情感あふれる曲でもある。
第三楽章スケルツォは、ドヴォルザーク風の音楽だ。
軽快な音楽で、伝統的なスタイルでつくられている。
第四楽章終曲は、軽快かついきいきとした音楽で、
弾むような明るい音楽は聴いていて心地よく、
やはりどことなくドヴォルザーク風である。
それにしても、この曲のどこがマオリ伝説と関係するのだろう。
とはいえ、そのタイトルはいかにもニュージーランドの作曲家らしい。
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