た・たむ!

言の葉探しに野に出かけたら
         空のあお葉を牛が食む食む

雑感

2008年06月13日 | essay
 狭い路地がある。
 自転車一台がようやく通るか通らないかという幅しかない。左手がトタン塀で、右手が背の高い植木である。これは私の家から二車線道路に抜けるときの話で、二車線道路から私の家に戻るときは、左手が植木で、右手がトタンになる。ふらふらと漕ぐと植木にぶつかる。景色なぞ何も見えない。緩やかなカーブを描いているから、前もさほど見えない。ただ不思議と日当たりがいい。斜めに差し込む日差しの暖かさを妙に実感する場所である。私は自分のことを閉所恐怖症の気があると認識しているが、なぜだかその道を通るのは心地いいのである。
 今日、自転車でその路地を漕いできたら、向こうから現れた作業着姿のおっちゃんが、「おっとおっと」とつぶやきながらわざわざ引き返してくれた。

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 人生はどちらかというと、私の場合、だだっ広い荒野というより、どこに出るかわからない狭い路地を行くのに近い感覚がある。この道を自分で選んだか、選ばされたかは定かでない。引き返すには、ずいぶん進みすぎた嫌いがある。脇へ逸れるわけにもいかない。抜け出たところで何が待ち構えているか、大して期待もできない。ただ、今のところ、日当たりはまずまずである。それを良しとしようか。


 
    
コメント
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