庭のシデコブシが花をつけた。
大きな花弁が掌で優しく揉みしだかれたようによじれ、白地にうっすらと紅の入った色合いを見せる。可憐ではかない美しさがある。例年はたいていの蕾を鳥に食べられていたが、今年はどうしたことか鳥の害を免れたらしい。義母が喜んで切り花にして、家の中をシデコブシだらけにした。ただでさえはかない存在をわざわざ手で切り取るのもどうかと内心思うところだが、まだ木には相当数生き残って咲いているので、何も言わずにおいた。
シデコブシの足下では、犬が日を浴びてうたた寝をしている。花など一向に興味がない風である。
咳が立て続けに出た。
私も庭を見るのを止めた。